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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の2 中学3年生編 (援助交際疑惑)
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G.W.鷺の沢(その2)

川辺に温泉を掘る!

そして、はいる!



  【お昼の準備】


 私たちは2時間ほど釣りをして、キャンプの場所へ戻ってきた。

みんなのバケツを覗いてみると、全部で20匹。

イワナが一匹に、後は全部ヤマメだそうだ。


驚いたことに、全員一匹は釣れていたようで、唯一のイワナは美沙ちゃんが釣り上げたらしい。


 お父さんはヤマメを一匹づつ取り出すと、簡易テーブルの上で頭に包丁を入れている。『ビクッ』と一瞬痙攣して動きを止めると、内臓を抜いて、氷の入ったバケツに放り込んでいく。


「なんで頭に包丁刺すの?」


「あぁ、〆る為なんだよ。

 生きたまま胸を開いてワタを取り出すと、まずくなるからね。

 即死させるのが平和的でもあるし、美味しいんだ。」


『〆る』・・・なるほど・・・スーパーで売っている魚もみんなそうして下ろされてるのかな~。


ところで、お父さんが使ってる包丁は普段あまり使わないやつだ。

2,3回お刺身を切る時に使った程度で。


「その包丁、お刺身用だよね?

 頭とか突いても平気?」


「あぁ、本当は串とかで刺す方がいいんだろうけどな、そこまで詳しくないから、こいつで刺してるんだ。

 川魚程度で刃こぼれはしないだろう。

 俺のお気に入りで、高いんだぞ~。」


「いろんなとこに凝るよね、お父さん(笑)」


・・・


 お父さんが魚をさばいている間、私たちはご飯と、カレー作りに取り掛かることにした。


 キャンプと言ったらカレー!

定番だけど、みんなで作れて嫌いな人もいない。

それに何と言っても、これだけ香りが立って雰囲気を盛り上げられる料理もそうないのではないだろうか?


野菜はあらかじめカットして持ってきているし、家で作る時と違ってどっさり入れて煮込むだけなので、とっても簡単だ。

ただ、ご飯は飯盒はんごうを使って炊いてみようと言う事になって、下調べはしてきたのだけど、本当にこれでご飯が炊けるのか、ちょっと心配。


 かまどの横に積んである薪は一束100円と書いてあり、横にはお金を入れる箱が置いてあった。なんというか、人の善性を100%信じている感じがすごくいい。


・・・


・・・


 それから、1時間ほどでご飯とカレーが出来上がり、テーブルに並べる。飯盒で炊いたご飯は、下が結構焦げていたけど(ちゃんと裏返したのに!)、それでもちゃんと炊けていて試食の時には『大歓声』が沸いた。


 釣った魚はカレーとは合わないので、晩御飯にすることに。


 「 「 いただきまーす 」 」


「おいしい!」

「うまい!」


・・・山でみんなと食べるご飯は最高においしかった。


 私の通っていた小学校では、5年6年と夏休みにキャンプがあり、中学校に入っても毎年キャンプをしている。(私は去年いけなかったけど。)


もちろん休み期間中なので参加は自由なのだけど、ほとんどの生徒がちゃんと参加している。

だけど、結構至れり尽くせりなキャンプ場しか行ったことが無くて、飯盒でご飯を炊く、なんてことは一回もなかったし、寝るときももちろんバンガローとかコテージとかだった。


冷暖房ももちろん完備!(笑)

快適だったけど、今日みたいな盛り上がりはなかったなって思った。



  【温泉を掘ろう】


「さて、一休みしたし、みんなで温泉堀りに行くぞー。」


「 「 おー 」 」


 そう、釣りを始めた時にまず温泉を掘る場所を見に行ったんだけど、雨の影響か、最近人が来なかったのか、すっかり埋まっていてほとんど自分たちで掘らなきゃいけないね、って話していた。


 川沿いを少し下ると、わりとどこでも温泉が出るらしく、あちこちにその跡らしきものは見受けられる。


ここは期待の男性陣に頑張ってもらいましょう!


 さすがに、一緒に入るわけにはいかないので(笑)、2つの露天風呂を掘ろうと言う事になって、3人で頑張ってくれているのだけど・・・


「・・・結構硬い、っていうか石があってスコップが刺さらない。」


「上手に石と石の間を、こう・・・」


「こういうのは習うより慣れろだ、がんばれ。」


安藤君はなかなか上手に掘れない様子で、

直樹さんは、がんばって掘り進めている。


その少し離れたところをお父さんが掘っているのだけど、二人分のさらに倍くらい早い。

さすがは私のお父さん! 最強!

なんて悦に浸っていると・・・


「ほらー、直樹ー、応援してあげるから、がんばれー。」

「道兼、疲れたら交代するぞ。」


と、それぞれの檄が飛ぶ。


もう、私帰っていいですか?(笑)


私たち女性陣は、声援を送りながら大きめの石を並べて囲いを作っていく・・・


川の水はほとんど来ない場所なので、男性陣が掘り進めてくれると、すぐに足元が暖かくなってくる。


運動神経抜群の美沙ちゃんは、安藤君と交代しながら、

直樹さんは汗だくになりながら黙々と・・・

お父さんはただ淡々と掘りすすめ・・・


休みながら2時間かけてようやく2つの露天風呂が完成したのだった。


「本間さん、タフですね! 大した汗もかいてない。」


「・・・スコップが、なかなか、刺さらないですよね・・・。」


「土方は体で覚えるもんだからな。

 コツや要領はやりながら覚えるしかない。

 小石や砂利にスコップを入れるのは、最初はだれでも難しいもんさ。」


そういうお父さんを、目を細めて眺めていると、


「直樹、この人は熊相手でも素手で勝つ人だから、比べるだけ野暮。」


そういう紗奏。


「こらこら、熊はそんな狂暴じゃないぞ。

 本来は慎重な生き物なんだから。」


「何かやってたんですか?」


「いやいや、本当に何もやってないってずっと言ってるんだけどね。」


「本人はずっとそう言ってるけど、去年、海に行ったときに熊みたいな人を小枝でも放るように投げてたからね。後から聞いたら、大学柔道の優勝経験者だってさ。」


「なぜそういう状況になったのかがわからないけど、

 警察は呼ばなくてよかったのか?」


「ううん、平和なもんだったよ。(笑)」



「さてっと、一休みしたし、早風呂にしようか?」


「 「 おーー !! 」 」



  【川辺のお風呂】


 男性陣は気を遣ってくれ、早々と着替えて温泉へと向かう。

私たちはテントに潜って手早く着替える。

さすがに海で着る水着は違うだろう、という事になり、学校の水着で合わせたのだった。


 みんなでワイワイいながら、男性陣が頑張って掘ってくれた露天風呂に入る。


・・・ほんと、頑張ってくれたんだ、ゆるく寝そべれば肩までつかれる。


「あ、あちっ!

 お湯が出るとこ、結構熱い!

 火傷はしないと思うけど、みんな注意で。」


安藤君の座ってる位置でちょうど温泉が湧いているようだ。


「あっつ、こっちもだ!」


美沙ちゃんのとこも湧き出している・・・の?


・・・それは温泉ではなくて、別のお熱なのでは・・・?


ちょっと遠目で見ていたけど、もうこっちが恥ずかしくなるようなイチャイチャぶりでしたもんね!


「美沙と、安藤君はほんとアツそうだよ。

 うん、とってもアツそう。」


私と同じことを考えていたらしい紗奏がすかさずちゃかしに入る。


「はいはい、どうせラブラブだよ、うらやましーだろ。」


ぷっ、開き直った。(笑)


「あっちぃ!!!」


「ぷっ、ほら見ろ、だから言わんこっちゃない。(笑)」


「梨桜ー、あっついー、火傷したかもー。」

「もうっ、大丈夫~?」


「・・・お前ら絶対ガチだろ。男除けなんて絶対嘘だろ!」


「なにー、美沙ー。

 うらやましいのー?

 梨桜、やーらかいよー♪」


「ああん、もう~~(笑)」


「うりゃーーー!アタシも混ぜろーーー!」


・・・

   ・・・。


「あれ、いいんですか?(笑)」


「うんうん。微笑ましい絵だねー。」


「あの三人って本当に仲良しですね。

 いろいろな学校回ってきましたけど、あんなに仲がいいのは見たことないです。」


・・・

   ・・・


「でも、ホントいいお湯だね。

 男性陣、ありがとう。」


「うんうん。ほんとほんと。

 肩でももんであげようか、直樹。」


「(うぉっほん!)保護者代表として、却下。」


「 「 アハハッ、怒られたー」 」


「今日は誘ってもらってありがとうございました。

 こんなことは初めてです。」


「引っ越すか残るかって考えてるか?」


そう言った美沙に、私はびっくりする。

引っ越してきたばかりなのに、安藤君引っ越し?

そんな・・・。


「うーん、そもそもまだそうと決まったわけじゃないしね。」


「あぁ、安藤君のお父さんは警察官なんだってね。」


「ええ。そうなんです。今回は異動が早そうだなって、美沙さんに話していたので、高校もありますし、親と離れようかどうしようか、そもそもそれを許してもらえるかどうか、とか考えてます。」


「どうして異動が早そうだと思うんだい?」


「えーっと、それは、警察のもろもろの事情というか・・・」


「なるほど。やはり君も警察官の息子だね。

 長く一緒に住んでいると、雰囲気で分かるものなのか。」


「えっと、本間さんのお父さんは土井さんの友達だって聞きましたが、何か知ってるんですか?」


「いや、警察官であって、そういうことをペラペラしゃべるやつじゃ、キャリアは務まらないよね。君も知ってる通り。

だから、実のところは本当に何も知らないんだけど、・・・

俺も多分君と同じことを感じてる、とは思うよ。


あ。それから俺のことは、本間でいいから。」


「そうですか・・・。」


「可能性のことはともかくとして、

 君はどうしたいんだい?」


「僕は、せっかくこうして仲良くなれたんだし、ここに居たいと思い始めています。」


「なら、ちゃんと相談するしかないね。

 でもまぁ、正直なところ、中学生の子供を一人置いておけるかどうかって言うのは、難しい判断をするだろうな。」


「下宿とかでもダメですかね?」


美沙ちゃんがフォローを入れる。


・・・まさか自分のお家に下宿させるとか・・・

・・・まさかね。(笑)


「うん。それならハードルはぐっと下がりそうな気がするね。

 あの辺りは高校も近いし、下宿をさせてくれるところも多そうだ。」


・・・


「さて、俺はそろそろ上がろうかな。

 みんなも長湯しすぎて湯あたりしないように。」


「あ。俺もそろそろのぼせそうで上がろうかな。」


「うん。僕も上がります。」


「じゃぁ、あとちょっとしたら私たちも上がろっか?」

「 「 そうしよっか 」 」


「うん。出来るだけ個人行動はしないでね。

 ここに来て回ってみたところ、熊がいるらしい痕跡はみつけてないけど、もし会っても努めて冷静にね。」


「あ、最近多いですもんね、注意します。」


もう少しキャンプ編が続きます。


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