巡回連絡
巡回連絡簿を作っている警察官が回ってきました。
住民の皆様、協力してあげましょう。
【巡回連絡】
(リリーン、リリーン)
土曜日、いつものように梨桜とカレーを仕込んでいると、呼び鈴が鳴った。
来客の予定はないのだが・・・
「はい、本間です。」
「こんにちは、お休みのところを失礼します。
私、駅前交番の沢木と言いまして、
今、巡回連絡に回らせていただいておるのですが、
少しだけお話を聞かせていただいてよろしいでしょうか?」
地域課のお巡りさんが巡回連絡簿の記入をして回っているようだ。最近はこれもなかなかすんなりとはいかないようで大変だと言う。うちにも来たのはこれが初めてだ。
私は入り口のロックを解除して、お巡りさんを玄関へ迎え入れる。
「どうも、どうも、
いや、今日もいいお天気ですな。」
そう言って、一般的に見て人好きする笑顔で話すのは、40代半ばくらいに見える警察官だった。
「ええ、お疲れ様です。」
「おっと、失礼しました。
私、先ほど申しました通り、沢木と言いまして、
駅前の交番に勤務しております。・・・」
・・・
「どうもどうも、ご協力ありがとうございました。」
連絡簿の記入を終えると、そう言って沢木巡査長は帰って行った。
まだアパートに住んでいたころに一度だけ警察官が来たことがあるが、それに比べてずいぶん親切丁寧な巡回連絡だった。
特に、娘の通う学校についても、ここからでは学区が違うため理由を尋ねられたので、母親のことも併せて伝えておいた。
全部の家庭でこんなに丁寧にやっていては、いくら時間があっても足りないだろうに。
警察官が来て急に思い出したわけではないのだが、なんとなく思い立って土井に電話してみる事にする。土曜日とはいえ家にいるとも限らないのだが。
「おー、焼き肉ぶりだなー、元気かー?」
電話は3コールで繋がった。どうやら仕事ではないのだろう。
「あぁ、今ちょうど警察官が巡回連絡に来たもんだからな、思い立った。
お前、今年も南署だってな?」
「あぁ、居心地いーぞ、ここは(笑)」
「そうか。そりゃ結構なことだ。
ところで、お前が2年も続けて同じ署にいるんだ、
なんか力を入れてる事か、やりたい事があるんじゃないか?」
「ん?
・・・
あー、そうだな、どこでもそうなんだが、
うちで今一番気を付けてるのは、やっぱり子供が巻き込まれるような事件だな。特に女子高生だ。」
「うちも中学3年になったからな、気を付けにゃならんな。」
・・・
キャリアの警視正が2年続けて同じ署の警察署長をする、まぁゼロではないんだろうが、何かあると思っていいだろう。
そいつが、力を入れているのが女子高生がらみの犯罪、という事だろう。
・・・私はそのことを一つ頭にとどめておくことにした。
お立ち寄りくださる皆さま。
ありがとうございます。m(__)m