Medrawt
「えっと、亡命の理由は?」
誰かが入ってきた、小さな個室に机を挟んで反対にその人がそう言いながら座る。
「・・・命を、狙われていて」
スーツをピシッと着こなした彼、まだ若そうだけど眼力は鋭く、手に持つバインダーに挟まれた書類を睨みながらペラペラと捲る。
「アスプロ・カミーノ、21歳・・・、両親は死亡、兄弟親戚もいない、犯罪歴はなし、か・・・」
僕の経歴を口に出しながら確認する彼。
チラッと僕の顔を見て、また一言。
「一体何をしたんだね?」
書類をパタッと机に置いて両肘を机に付き、片手で顎を触りながら前かがみになって僕の様子を伺ってくる。
「・・・・・・」
僕は何も言えずに俯く。
「ふむ、まあ、理由は重要じゃない。本国の方針は来るもの拒まずだ」
よかった、亡命できそうだ。
「しかし、条件として3年間の兵役を全うしてもらう、いいね?」
「はい」
ここまでは予定通り。
そして、僕は空軍へ配属されることとなった。
〇 〇 〇
「本日付で配属されることになりました、アスプロ・カミーノです」
僕は空軍パイロットの新人として他の基地からここに配置換えされた、という設定だった。あのスーツの人が色々と考えてくれて僕の人生は書き換えられた、その方が生活しやすいからと。
「よろしくぅ!」
「よろしくな」
ここの人も意外といい人たちばかりで、疑うことなく僕のことをすぐに受け入れてくれた。
「君の機体まで案内するねぇ」
金髪ショートヘアで片側を刈り上げているチャラそうな女性パイロットに基地を案内してもらう。
格納庫につくと目を疑った。
「F-22だよぉ」
「え?」
なんでこんな所にこんな機体があるんだ・・・。しかも、僕は新人の設定、ひよっこがこんなの乗れないだろ。
実機を見るのは初めてで、声が出てこない。
「これで大丈夫だって言ってたよ。コールサインは?ちなみに私の隊はスペクター隊だよぉ」
誰がだ・・・。
呆気に取られていると、ニコニコしながら彼女は言ってくる。
こんなものを見せられて考えていた言葉が出てこない。
「えっと・・・」
しばらく考えていると思い出した。
「メドラウト、かな」
「ふぅーん、変わってるね」
そうかな?結構イケてると思うけど。
因みに由来は、昔読んだ本の登場人物だ。
「じゃ、改めてよろしくね。アスプロくん」
笑顔が眩しいなぁ、まるであの人みたいだ。
ちょっと懐かしい。
「う、うん」
よし、ここまで来たらもう安全だ、街の情報も旧友から聞いている。
ほとぼりが冷めるまでここで頑張るとしよう。
僕の第3の人生が始まった。