表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短冊になんて書けない

作者: 零時


『**くんと恋人になれますように』


そんな願いが書かれた短冊を巷で見かけるたびに、こっちまで恥ずかしくなってしまう。

私に言わせれば、そんな直筆の想いを不特定多数の人に往来の中公開するなんて、本人に直接言うより恥ずかしい。

たぶんそんなことを書く人は、軽い気持ちで書いたか、そこまで考えつかないほど馬鹿かのどちらかなんだろう。

そんなことができるなら、直接言えばいいのに。


「……そういうサキは、僕に直接言ってくれたっけ?」


にこにこと笑いながら私を追い詰めるユウの腕を、容赦なく抓って黙らせる。

私の言葉は貴重なの。

気安く売ったりしない。


「僕はサキに好きって言ってもらえて嬉しかったけど」

「……っ!」


顔に血が集まって、熱くなるのが分かる。

この男は、なんてことを平然と言うんだ。


「サキは嬉しくなかった?」


声は悲しそうに、顔はにやにやと笑いながらという器用な真似をしながら、私の腕を捕まえるユウ。

フリとはいえ、さすがに振り払うわけにもいかないし、かといって素直に答えるのは恥ずかしい。

それに癪だ。掌の上で踊らされっぱなしなのは許しがたい。


「……もう一回」

「?」

「もう一回、ちゃんと私のこと好きって言ったら、考えてあげる」


私の言葉に、少しだけ固まるユウ。

すぐにいつものにこやかな表情に戻ったけれど、私の目は誤魔化せない。


「サキ……」

「ユウのそういう恥ずかしがりなところ、好きだよ」


人差し指でユウの照れ隠しを唇の奥に閉じ込めながら。

今できる精一杯の笑顔で告げる。

誤魔化しきれずに赤面してそっぽを向く君に送る。

恥ずかしがりやの私の恥ずかしい言葉。

もう一回なんて、ないんだからね?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ