もしかして天才?
話は、夕食を終えた後にすぐ始まった。
魔法というのは神のもたらした大いなる祝福だ。
自然という脅威は神が最初に世界を作った時よりも遥かに強大で、生物にとって住み心地が良いとはとても言えなかった。
だからこそ、神は人々に魔法を与えた。
魔法はあらゆる生き物が自立し、生きていけるようにするための力なのだ。
ゆえに魔法は必ず、自然現象を無視する。
可燃物がない場所で火を生み出すことや、水一滴存在しない砂漠の一角に泉を作ることは魔法が自然と反目するからこそ得られる力だ。
神はすべての生き物に等しく手を差し伸べ、あらゆる生物に魔法を行使する可能性を与えた。
魔法とは、そういう在り方のものだ。
「でも魔法が使えるない人いる?」
メイナードは父の言葉を咀嚼しつつも、母へと目線を向けた。
「それは確かにそうだね。しかしだからといって神がママを見捨てたわけじゃないんだよ」
父は言い聞かせるように、話を続けた。
魔法は自然へ対抗するべく発生した力だ。
ゆえに、自然現象とは違い、法則性がほとんど存在しない。
それは自然という過酷で厳密な規則に抗うための力だからこその性質だった。
自然と立ち向かう術だからこそ、自然と違って万人にその力を使うことができるわけではない。
水が上から下に流れるような自明さが魔法にも備わっていたとしたら、魔法もまた自然と同じく生物に牙を向くことになるからだ。
どんな奇跡も起こすことができるからこそ、魔法はその力を厳密に定義することができない。
そして、その性質によって縛られているために、魔法は誰もが使える力ではない。
自然の影響が生き物すべてに降り注いでいるのとは反対に、魔法は気まぐれに行使する者を選ぶ。
もちろんその選択もまた、魔法そのものの性質と同じく、一切の法則性を持たない。
「だからママは魔法を使えないんだよ。別にそれは珍しいことじゃないんだ」
「ママ以外にも魔法を使えない人はいっぱいいるのよ。メイだってそうじゃない」
「たしかに」
「それにこの街にいる他の人も魔法が使えない人ばかりだよ。使えない人のほうが多いんだ」
だからパパはいつも教会で働いているんだ、と続けた。
「魔法はそうしてみんなで生きるために神が与えてくださった力なんだ。だからパパは教会で毎日ああしてるんだよ」
父の魔法は治癒魔法というらしかった。
メイナードはかなりがっかりした。
自分も魔法を使ってみたいと思っていたからだ。
地球ではない世界にやってきて、魔法というものを知り、わくわくしないはずだない。
しかしこの世界では誰もが魔法を使えるわけではないのだ。
メイナードは一度も魔法を使ったことがない。
今になるまで魔法の説明を受ける機会がなかったから仕方のないことかもしれなかったが、もし魔法が使えるのならこの歳になる前から使えていたとしてもおかしくないのだ。
しかし、その気配は微塵もなかった。
メイナードは魔法の才能がないのかもしれない。
「メイももしかしたらパパと同じで魔法が使えるかもしれないよ」
だからこそ、父の言葉は胸に響いた。
「ほんと?」
「ああ。パパが魔法を使えるようになったのは十五を過ぎてからだったな。死ぬ間際になってようやく使えるようになる人もいるし、メイだって明日から使えるようになってもおかしくないさ」
メイナードは歓喜に胸を躍らせた。
父の言葉はもしかするとただの慰めかもしれない。
法則性がない以上、メイナードが魔法を使えるようになると断言できる存在もいない。
それでも、メイナードにはまだ希望があるのだ。
それからもっと詳しく、父は魔法のことを話しくれた。
メイナードがしつこくねだったからだ。
「魔法には色んな系統があるんだ。もちろん、自然と違って体系立った知識として皆が使えるわけじゃない。だけど、魔法を使える人がさらに色んな魔法を使おうとした時、過去に使われた魔法の種類を記録していくことに意味はある。魔法をすでに使える人なら、過去に使用された魔法もまた使えるかもしれないからね」
木の種類や空気の成分構成比のように綺麗に定まって、誰もが理解することができる知識が存在するわけではない。
しかし、魔法は使う人を気まぐれに選ぶが、使える人間を縛る規則はない。
過去に使用された魔法を知ることで、その人もまた過去の魔法を使うことができる可能性が十分に存在するのだ。
もちろん使えないことのほうが多いが、それでも試してみたくなるのが当然だった。
「パパの治癒魔法も過去に誰かが使ったのを真似してるんだ。魔法は奇跡を引き出すためのものだから、魔法を引き出す側の事情は考慮しないのかもしれないね。パパじゃなくても良いからこそ、パパが使うのもまた、神はお許しになるんだ」
つまり、魔法には過去使用された体系的な情報が存在する。
メイナードもぜひ、それを知りたかった。
「魔法もっと知る!」
――魔法についてもっと知りたい!
「どうがいい!?」
――どうすればいい!?
メイナードは興奮気味に、父へ詰め寄った。
父が苦笑いしながら、視線をメイナードの背後へと動かす。
それに合わせて振り返ると、ようやく気づいた。
母が何か大きな荷物を持っているのだ。
「はい、今年のお誕生日の贈り物よ。開けてみて」
そうだった。
メイナードは今日、六歳になるのだった。
前世からの年齢と足し合わせると、二十二歳になる。
赤ん坊時代の地獄のような日々を考慮するとあまり大人になった実感が湧かないが、もし生きていればもう大学を卒業する年齢だった。
「開けるいい?」
メイナードが母に尋ねると、彼女は優しく微笑んで頷いた。
包みは大量消費を想定された紙包ではなく、木箱だった。
大きさは子供が両手で抱えられるほどで、そこまで重くもない。
木のささくれに気をつけながら蓋を開けると、そこには一冊の本が入っていた。
十ページほどの、紙質の荒い絵本だ。
この世界では十分貴重品である。
「これは?」
「魔法について少し書かれているんだよ。文字も覚えられるし、ちょうど良いと思って作ってみたんだ。どうだ?」
父の自作らしい。売り物の本には手が出せないのだろうと思うと、それでも絵本を渡したかった両親の思いの強さが汲み取れるようだった。
壊さないように優しくて手に持って、開いてみる。
そこには大きな文字と絵が半々ほどのページが広がっていた。
十ページ分をゆっくりとめくりながら、絵を眺めていく。
川や焚き火、雲のような何かや山。
そして最後のページには父の仕事をそのまま活写したかのような絵が描かれていた。
これがさっき言っていた過去の魔法に関するものなんだろう。
メイナードがこれを読み進めて魔法について知れば、もしかすると魔法が使えるかもしれないのだ。
「魔法を聞く前から準備した?」
――魔法について尋ねる前から誕生日にこの絵本を渡すよう準備していたの?
両親はメイナードの問いに頷き、頭を撫でた。
「できれば、メイにも魔法を使ってほしいからな」
「ママは使えないけど、パパみたいにメイも人に役立つ仕事をしてほしいのよ。もちろん魔法が使えなくても人のために働くことはできるけど、魔法が使えて損はないでしょ。だから、これはママたちのわがままだと思ってたの」
「でもメイが魔法について興味があるみたいで、本当に良かったよ。もし使えたら、教会の仕事も手伝えるぞ」
そういって二人はメイナードに文字を教えはじめた。
絵本を読むには、文字も知らなくてはならないからだ。
魔法に関する記述もまた、絵本の中には書き込まれていた。
単なる創作絵本ではなく、しっかりとした実用書でもあるのだ。
その日からメイナードは魔法についての勉強を始めた。
魔法について学ぶには文字の習得が不可欠だったから、そちらも並行して進められた。
文字を覚えることは文法の規則を学ぶことにも繋がる。
メイナードにも変な言葉を喋っている自覚はあったが、直す予定はなかったから、文字学習は幸運だった。
**
メイナードの勉強はもっぱらカルラが見ていた。
父はいつも教会での仕事で忙しく、母は趣味の編み物や外での用事があり、常にメイナードを見ているわけにはいかなかったのだ。
カルラはメイナードへ勉強を教える時、いつも腕まくりしていた。
小麦色の二の腕は日焼けなどではないだろう、とメイナードは思っていた。
彼女が言っていた「魔」というものの特性かもしれない。
メイナードはカルラが横に座って絵本の文字を指で追いながら話してくれるのに耳を傾け、時には音読して文字習得と魔法についての知識を深めた。
魔法には色んなものがあり、起きた現象ごとに分類が為されていた。
火を扱うのは火魔法と一括りにされ、水、木、風、地の五種類が自然魔法として大別されていた。
自然魔法は自然で起きることを原始的に再現するが故に名付けられた種別だ。
属性ごとに分類がされた後には、発生する規模によって初級、中級、上級、超級と四つに分かれている。
初級ならば蝋燭の火ほどで、中級になると大人の頭ほど、上級は人くらいの大きさで、超級はそれ以上を敢えて分類するように作られた特例の等級だ。
火の場合はこれくらいの区分けであり、他の自然魔法もこれらのサイズで分けられている。
さらに魔法の維持時間を1から9の数字で大別することで魔法使い自身の強さを示す細かい区分けも存在した。
例を挙げるなら「火上級4類」と名乗る魔法使いがいるとすれば、火属性の魔法を人の大きさほどで生成し、最大で半日は保たせられるという意味である。
これらは魔法を使う人だけでなく、魔法使いと関わる上でも覚えていたほうが便利な話だ。
メイナードは神妙な顔つきで各種の魔法を放つローブ姿の男が描かれた絵本を見て、頷いた。
自分ももしかしたら使えるかもしれないと思うとワクワクする話である。
「カルラは魔法を使えないの?」
「わたしは自然魔法は使えませんね。こうした魔法を扱えるなら、ここにはいなかったかもしれません」
ちょっと流暢になったメイナードを見て優しく微笑むカルラ。
憂いのある横顔は窓から差す日が当たって小麦色の肌が輝いているようだった。
真横に座った彼女特有の甘い香水の匂いがメイナードを包んで、少し気恥ずかしくなった。
「どうしました?」
メイナードは慌てて両手を振って、なんでもないと笑った。
咄嗟に出てくるのが日本語だから、抑えるためにジェスチャーばかりが上手くなったのだ。
いつもの大げさな身振りにカルラは微笑で答えて、絵本の続きを読み始める。
「次は対抗魔法です。この中の一つがご主人様の回復であり、わたしが使える魔法でもあります」
そうしてカルラは次のページの文字を指で追い始めた。
対抗魔法が自然魔法と違うのは、そもそも自然に存在しない秩序をもたらすという点だ。
火や水は自然の中に存在するが対抗魔法で起こす奇跡は自然とは全く違う形式で現出する。
たとえば回復魔法。
メイナードの父、ティモシーが使う回復の魔法は怪我をした人間の治癒を行うものである。
自然ではありえないほどの速度で回復するという点だけ見ると、自然ではありえないほどの大規模な火を起こせる火魔法と変わらないように見えるが、それ以外にも差異が存在する。
回復魔法は怪我人にしようすることで怪我をなかったことにしてしまうのだ。
怪我は魔法を使わずともある程度は自然に回復する。
毎日食事を摂ってしっかりと眠っていればかなりの怪我が治ってしまう。
しかし魔法で起こす奇跡はそんな自然の現象とは全く違うのだ。
回復魔法は怪我がない状態の身体にまで治してしまう。
そこには自然では絶対に起こり得ない秩序の乱れが存在する。
対抗魔法の「対抗」というのは自然に対抗するような魔法という意味なのだ。
回復以外にも多くの対抗魔法が存在しており、そこに自然魔法ほどの秩序は存在しない。
分類も新しい魔法が生まれるたびに見直されたり、特例ができあがるような状態であまり意味をなさない。
メイナードが想像していた、詠唱すれば誰でも使えるような魔法とは違ってそこに秩序は存在しないのだ。
人々が勝手に分類を作ってどうにかまとめようとしているだけに過ぎない。
「カルラはどんな対抗魔法が使えるの?」
メイナードの問いに、カルラが絵本から顔を上げた。
彼女は微笑みを浮かべて立ち上がると、廊下に出る扉の方まで下がって、メイナードから距離を置いた。
「少しびっくりなさるかもしれませんが、見せましょう」
「パパには言ったらダメなやつ?」
カルラが面白そうに眉を上げた。
「そうですね、わたしたち二人の秘密にしましょうか」
そう言ってカルラは手を前へ差し出した。
袖をまくって二の腕が剥き出しになった腕には、何も触れていない。
メイナードとカルラの間には何もなく、窓から差し込む光が板張りの床を照らしていた。
カルラは何もないところへ伸ばした手で何かを掴むような仕草をした。
肘を軽く曲げて、指を折り曲げる。
そうしてしっかりと何かを掴み取った。
少なくともメイナードにはそう見えた。
その瞬間、窓からの光が複雑に反射して、床の影が踊った。
部屋全体に、まるで川べりに身を屈めたときのように瑞々しい冷気が差し込まれた。
メイナードが首をすくめて、カルラの手を注視する。
カルラは何かをしっかり握ったまま、肘を伸ばした。
肩や胴もひねって、手を大きく持ち上げる。
今度は冷気だけではなく、実際に水が飛び出した。
握った何かを水の中から振り上げて見せたカルラは、髪の毛と角を水で濡らしながらも笑みを浮かべていた。
「どうです? これがわたしの魔法です」
メイナードには何も言えなかった。
カルラは水を固めたような刀身を持った剣を手にしていた。
一メートルはあるような長さの剣は水のように向こう側を透かしていた。
柄の部分には赤や黄色といった色とりどりの宝石が埋め込まれており、ごつごつとした硬い印象の中にも気品が漂っている。
「すごい……」
カルラは剣先を天井に向けて、少し持て余しながら話をした。
「わたしの魔法は持ち物の召喚です。今わたしの所有物であるものならば、何であれこうして手の中に取り寄せることができるのです」
そして、
「元の場所に返すこともできます」
カルラは剣先を自分の方へ向けながら下ろして、手を離した。
床に刺さる勢いで落ちた剣は水しぶきを立てて、部屋から消える。
「これが対抗魔法……」
メイナードは驚きつつも、それ以上に興奮した。
もしかすると、自分も使えるかもしれないのだ。
恐れるべきことではなく楽しむべきものだ、とメイナードには思えたのだ。
カルラはメイナードがそういう反応をすると分かっていたかのように微笑むと、椅子に座り直した。
「対抗魔法は種類が多すぎて、この絵本にはあまり詳しく書かれていないみたいですね」
「もっと知りたい!」
カルラは目を眇めた。
「それより、したいことがあるのでは?」
「?」
「魔法、ですよ。種類を教わるばかりじゃ退屈でしょう? もしかしたら使えるかもしれませんし、練習してみてはどうでしょうか」
カルラの提案はもっともだった。
メイナードは別に色んな種類の魔法が知りたいわけじゃない。
知りたくないわけじゃないが、知るよりも大切なことがあるというわけだ。
しかし良いんだろうか、ともメイナードは思う。
両親はカルラへ絵本に関する教育を言いつけていたようだったが、魔法の練習の許可まであるんだろうか。
メイナードが今聞いた魔法の話を考えるに、日本で言うところの未就学児である年齢の子どもが気軽に使っていいものではなさそうだ。
それに才能があれば使えるというのだから、分別のありなしなんて関係なく使えてしまうかもしれない。
初級の火魔法でさえも使い方を間違えれば、人や物に危害を加えかねない。
そんな力を子どもが振るうのはまずいのではないか、とメイナードは思った。
しかしカルラにそんな迷いがあるようには見えなかった。
魔法を教えるつもり満々で、再び立ち上がっている。
「魔法を使うには、強力な意思や激しい努力なんてものは必要ありません。必要なのはただ一つ」
カルラは目顔でメイナードにも立つよう促した。
「じゃあ何が必要なの?」
「才能ですよ。使えない人は逆立ちしても使えません」
そういってカルラはメイナードの後ろに回り、腰を落として手をとった。
背中に柔らかい感触、首筋に温かい吐息がかかる。
甘い香水の匂いが、後ろから立ち上っていた。
「まずは手を伸ばして」
言うとおりに手を伸ばす。
絵本に描いてある魔法使いも同じように、手をあげていた。
「火を想像するんです。台所で鍋を使う時や暖炉で見るでしょう?」
逆に言えば、この世界ではそれ以外であまり見ない。
テレビもパソコンもないし、ライターなどもないからだ。
それに何より、まだ幼いメイナードは外に連れ出される経験がほとんどなかった。
ここ数年の大半を、家の中で過ごしてきたのだ。
例外は教会とその行き帰りくらいだった。
それでもメイナードには火が明瞭にイメージできた。
前世で火を見たことは当然あるし、それを覚えてもいるからだ。
「こうかな」
「いきなり大きなものを想像するのは危険ですよ。小さな、指の上に乗るくらいの赤い火を想像してください」
後ろから抱えるような体勢のカルラが耳元でささやきながら、メイナードの指に自分の指を這わせた。
他人の体温を明瞭に感じながら、メイナードは指へと集中していく。
そこには詠唱や祈りなど一切なく、火とメイナード自身だけがあった。
「!」
メイナードの小さな指に暖かい感触が走った。
指の少し上に火が浮かんでいた。
爪ほどの大きさだがメイナードの想像通りである。
カルラが後ろからメイナードの頭をギュッと抱きしめた。
「のわっ」
メイナードの身体は子どもだが、前世で過ごした歳を合算すると二十歳くらいだ。
そんな男が健康的な女に抱きつかれて、興奮しないわけがなかった。
思わず前につんのめって、メイナードは抱擁から逃れる。
「あ、申し訳ありません。つい嬉しくて」
「い、いやこっちこそ、ごめん」
何に謝っているのか、メイナードにも分からなかった。
カルラの身体の感触がまだ背中に残っている。
柔らかかった。
「それにしても、物凄いですよ。すでに2類じゃないですか」
まだ気を取り直せていないメイナードをスルーしたカルラが指先を見ている。
メイナードもつられて指を見る。
「まだ出てる」
「才能、ありましたね。さすがご主人様の血を引いてるだけはあります」
「血とか関係あるの?」
「うーん、よく言われてはいますが、実際に関係あるかどうかは分かりませんね」
そう言っている間もメイナードの指先には火が出ていた。
丸くて赤い火は、指を動かすとそれに追従するように揺らめきながら形を保とうとしている。
何もかもが想像通りすぎて、メイナードは怖くなった。
もしかすると消せないかもしれない、と思ったのだ。
メイナードは火が消える想像をした。
「あ、消えましたね」
「よかったー……」
消えるときも現れたときと同じく唐突だった。
カルラはメイナードと目線を合わせるようにかがむと、髪を撫でた。
風呂やシャワーがないこの家で髪を撫でるというのは、脂が手につく少し過剰なスキンシップだ。
それでもカルラがそうしたくなるくらいには、喜ぶべきことなのだろうとメイナードは思った。
「ご主人様たちに報告するのが楽しみですね」
「うん、僕から言っていい?」
「もちろんですとも。ご食事の時にでも実演してみるのは如何でしょうか」
「それいい!」
まだ小さな力だが、結構凄いことなのではなかろうかとメイナードはほくそ笑んだ。
しかしこれはまだまだ序の口だった。
メイナードにはとんでもない力があったのだ。