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出会い

魔女が毒を作るときに片栗粉と小麦粉を間違えていたことに気づいたその頃、現実世界では……。


白雪姫は、その場から動けずにいました。

白雪姫はなんとかして先ほど目の前にいる人たちの会話に出てきた「カレン」という人を探しに行きたかったのですが、その場から動こうとすると、異世界の人たちは何か言葉を発しながら白雪姫のことを必死になって止めたのです。

その言葉が何を意味するかは、白雪姫にはわかりませんでした。しかし、おそらく「行かないで」と言っているであろうことは白雪姫にも簡単に想像できましたし、白雪姫は強引に自分の意見を押し通そうとする人ではありませんでした。

そこで仕方なく、そこでじっとしていることにしたのです。


白雪姫は異世界の人たちを見ました。

(……現実世界に住む人たちは、私たちよりも肌の色が濃いのね。瞳の色も茶色とか黒っぽいわ。鼻も少し低めに見えるかもしれない……。それから……)

そんな白雪姫の想像は、ばたばたという足音で砕かれました。

〔……!カレン……!〕

〔……!〕

現実世界の人たちが大きく明るい声で話しているのを聞いていると、その会話の中に先ほど聞いた名前が混ざっていることに気付きました。

そして、白雪姫ははっとしました。

(もしかしたら、さっきの独り言で私が『おとぎの国』の人だと分かったのかもしれない……!)


そう。白雪姫はさっき、独り言を呟いていました。

「『おと、ぎの国』から、私、『げんじ、つ、せかい』に来てしまったのかしら?」と。

『おとぎの国』と『現実世界』は現実世界の言葉です。それは、現実世界の人からしたら、白雪姫の意味の分からない独り言に混ざった、数少ない現実世界の言葉でした。

意味の分からない言葉、現実世界という言葉、そして、おとぎの国という言葉。

白雪姫の独り言で、現実世界の人たちは白雪姫がおとぎの国の人だと気付いたのです。


(それで、きっと同じおとぎの国の出身のカレンさんを呼びに行ったのかもしれない)

(だから現実世界の人たちは、私が動くのを止めたんだわ。私が動いてしまったら、意味がないから)

白雪姫がそんな風に考え、納得していると、不意に白雪姫に何となく似た女の人が現れました。

白雪姫は、一目見て確信しました。

(……この人が、カレンさんだわ)


「……貴方が『おとぎの国』の人ね?彼女たちから聞いているわ」

その人は、おとぎの国の言葉で白雪姫に語りかけました。彼女たち、と言うところで、ちらりと現実世界の人たちを見ていたような気がします。

「私はカレン。貴方の名前はなんというの?」

(……ああ、やっぱり。この人がカレンさんだった)

白雪姫はほっとしながら、答えました。

「私の名前は、白雪姫です」

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