知らぬ間に……
「さて、始めようかしら」
お城にある秘密の部屋で、魔女は泉の水が入った壺を火にかけました。
「まずはトカゲの尻尾を刻んで……」
トカゲの尻尾自体は、おとぎの国では美味しい食料です。干物にして市場で売られています。側から見たら、魔女は料理をしているだけに見えるでしょう。
魔女は刻んだトカゲの尻尾を壺の中に入れて煮込みました。トカゲの尻尾が水を吸って戻ってきたところで、砂糖を入れます。そして今度は、ルビーをそっと入れていきます。
すると、なんとルビーが溶け始めました!
実は、おとぎの国でもあまり知られていませんが、おとぎの国に住むトカゲの尻尾の干物には、宝石を溶かす力があるとされています。魔女はそれを利用したのです。
そして不意に、魔女は針を取り出しました。
そして、その針で自らの人差し指の先をちくりと刺し、自分の血を3滴、鍋に入れました。
すると、今まで赤く透明で綺麗だった液体は、急に赤黒く見るからに恐ろしい色に変わってしまいました。
魔女は一旦そこで火を止め、白い粉を入れました。そして、よくかき混ぜていきます。
魔女は再び火を付けました。そして、何度かヘラを持ち上げたりしています。
「うーん……片栗粉を入れたからそろそろとろみがついてもいい頃なのに……まあ、最終的にはとろみは無くなるからいいけれど」
どうやら白い粉の正体は、片栗粉だったようです。
そして、なにやら呪文を唱え始めました。
すると、液体の赤黒かった色は、また再び透明で綺麗な赤に戻りました。
最後に魔女は、そこにミントを添えて、にやりと笑いました。
「……できたわ。りんごに吹き付けるための毒が」
一方、その頃。
「……まあ!なんて汚いの、この小屋は!ここに住んでいる小人は子供なのかしら……?」
白雪姫は小人の住む小屋の掃除を始めていました。
何しろ床や棚には埃が溜まっていて、皿は洗われていないものが多く、窓は霞んでいるのですから。
スカラーが森の動物たちを呼んでくれたので、仕事は早く済みました。
掃除が終わった後、動物たちは帰ってしまいましたが、白雪姫は小人に無断で家に入って、勝手に掃除をしてしまったことを少し申し訳なく思い、小屋にある食べ物で美味しい料理を作り、小屋に住んでいる7人の小人が帰ってくるのを待つことにしました。




