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日常が崩れた日

ある日、魔女はいつものように鏡に問いかけました。

「鏡よ鏡、この世で1番美しいのは誰?」

「……魔女様はとてもお美しい。しかし、この世で1番美しいのは……白雪姫です」

帰って来た答えは、いつもと違いました。

魔女はたちの悪い冗談かと思いました。しかし、この鏡が嘘をつくことはないと知っていました。空耳かとも思いましたけど、それにしては答えがいつまでも返ってこないのです。

「……なんてこと!私は2番目だって言うのかい⁉︎あの小娘が1番なんて、そんなことがあるもんかね⁉︎」

魔女は怒りながら部屋を出て行きました。


しばらくした後、白雪姫が鏡の元を訪れました。

「鏡さん、お母様がどこにいるか知らない?」

「……苛立ちながらも公務中よ」

「あら、なんで怒っているのかしら……?」

「……貴方は、知らなくてもいいことですよ」

「……そう。分かったわ」

白雪姫も薄々感づいていました。

自分はきっと、継母に嫌われているであろうことに。そしてその理由は、自分の見た目であるということに。

「……私、どうしたらいいのかしら?」

白雪姫は、思わず呟いていました。

(おそらく、お母様が私のことを嫌っているのは、この容姿の所為なのだわ。でも、そんなのどうしようもないじゃない。お母様はいつも鏡にこの世の中で最も美しい人を問いかけているのを知ってるわ。きっと、自分が1番じゃなくなってしまったから、怒っていらっしゃるのだわ。どうしたらいいのかしら?)

鏡は、静かに告げました。

「……白雪姫、早くお逃げなさい。ここに居ては、きっとあの魔女に殺されてしまいます。殺されてしまう前に、ここから去るのです。……さあ、早く!」

その鏡は嘘をつかない鏡だと、白雪姫も知っていました。こうなっては、選択肢はたった1つだけでした。

「……分かったわ、ありがとう。鏡さん、ステラ……お元気で!」

白雪姫は、誰にも見つからないように気をつけながら外に出て、森に逃げました。

丁度その日は、白雪姫の17歳の誕生日でした。


「白雪姫!どこに行ったの?広間の掃除がまだじゃない!早く済ませてちょうだい!」

魔女が白雪姫の名を呼びました。

魔女はいつも、白雪姫に『私に無断で外には出るな』と言っていましたから、白雪姫が森にいるとは思いもしません。それに、いつも白雪姫は魔女が呼ぶとすぐに現れますから、呼びさえすればすぐに来ると思ってたのです。

しかし、白雪姫が現れる訳がありません。今、白雪姫は森の中なのですから。

半分焦り、半分苛立ちつつ、魔女は問いかけます。

「……鏡よ鏡、今白雪姫はどこにいる?」

「……白雪姫は、森の中にいます」

「……あら、散歩かしら。早く帰ってくるといいけど……」

そんなことを言いながらも、その口調は明らかに怒った時のもの。魔女は心の中では怒り狂っていました。

(私に無断で外に出るなとあれほど言ったのに!)

しかし、不意に魔女はニヤリと笑いました。

(そうだ、今あの小娘がいないなら……堂々と毒が作れるじゃない!りんごにかけるための、毒が。毒りんごをあの小娘に食べさせるのよ!そうすれば、私は再び……)

魔女は狂ったように笑いました。

それはそれは長いこと、笑い続けました……

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