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白雪姫と鏡

今日も魔女は問いかけます。

「鏡よ鏡、この世で1番美しいのは誰?」

「それは魔女様、貴方です」

「ああ、良かった。まだあの子に越されてはいないのね。いいえ、越されることなど無いわ。だって私は、世界一美しい者であり続けるのだから!」

魔女はいつもの問いかけを済ませると、公務へと戻りました。


誰もいない部屋。

「はぁ、もう鏡に閉じ込められているのも、嫌だなぁ」

おや、鏡が喋りましたね。

実は、この魔法の鏡には、心優しい、善い魔女が閉じ込められているのです。今喋ったのは、この善い魔女——ステラでした。


昔、ステラが魔女と戦ったとき、騙されて鏡に閉じ込められて以来、ステラは鏡から出ることが出来なくなってしまったのです。しかも、ステラ自身は鏡に、そして彼女の魔力は額縁に、という風にバラバラに封印されてしまったがために、ステラは魔法が使えなくなってしまったのです。


「全くだ。閉じ込めておく方のこっちの身にもなってくれよ。本当に大変なんだ。それに、ステラはとっても善い魔女なんだ。彼女を閉じ込めるなんて訳の分からないことをするね、あの魔女も。ステラを逃したくても、私は逃す方法すら分からない」

今度はまた違う声がしました。ステラよりも少し低めの女の人の声です。

この声の持ち主は、鏡自身でした。


鏡は持ち主の魔女のことを好いていませんでした。むしろ嫌いです。しかし、鏡は魔女のいいなりになるしかないのでした。だって、鏡自身には魔法の知識などありませんでしたし、魔女の前ではいつでも真実を述べなければならない、そんな呪いがかかっているのですから。


白雪姫が分厚い本を持ち、お姫様とは言い難いボロの服を着て鏡の元へとやってきました。白雪姫は何かしていないと気が済まない性格で、掃除や洗濯といった家事を率先して行なっていました。そもそもこのお城は、小さな国ということで、召使いも少なかったのです。白雪姫は今日も朝はやくから起きて、公務を行うための広間を掃除して来ているからでしょうか、ところどころ顔が汚れています。それでも白雪姫の美しさは消えてはいませんでした。


「鏡さん、お母様がどこにいるか、知りませんか?」

「今は公務中ですよ」

「そうなんですか?なら3人でお話ししましょう!ちょうどお話ししたいことがあったんです」

白雪姫は、ステラが自分の継母によって鏡に閉じ込められているのを知っていました。

3人とも魔女のことを好いていない点では共通しており、だからか3人はとても気が合い、仲がとても良かったのです。

「ねぇ、ステラ、これが見える?とうとう見つけたのよ!鏡さんから出る方法を!」

「本当に⁉︎小声でいいから、その本を読み上げてもらえるかしら?」

「勿論よ!えっとね……『まず、魔力を取り戻す呪文を唱えよ。』ですって!」

「それはどんな呪文?」

「えっとね……あ、これだわ。『古き盟約を誓いし者よ、我の元へ戻りたまへ』で始まる呪文みたい」

「……分かったわ。方法の続きを教えて」

「うん。そのあと鏡から出るんだけど、それは『自分の魔力を用いよ』って書いてある。力添えが欲しい時は、『精霊を呼ぶ呪文を使え』だって」

「……分かったわ。ありがとう、白雪姫」

「いいえ」

「何か私が協力できることはあるかい?」

「鏡さんはね……とにかく、ステラを引き止めようと思わないことね。むしろ出て行ってくれぐらいに思っていてもいいかも。本には『鏡の意思も成功するか否かにかかっている』と書かれているわ」

「ありがとう、そうするよ」

3人でステラが鏡を出る方法について一通り話し合った後、ステラが白雪姫に問いかけました。

「その本、どこにあったの?」

白雪姫は声を潜めて答えました。

「お城の図書館に。柱に不思議な呪文が刻まれているところがあったんだけど、その呪文をその柱に手をかざしながら読んでみたら本が現れたの」

「まぁ。じゃあ、隠された魔法書だったのね……。白雪姫、あの魔女がお昼休憩に入る前に早くそれを戻しておいで。もう一度同じ柱に手をかざして同じ呪文を唱えるのよ。そうすればまた本は隠されるわ。わかった?」

「うん!ありがとう!すぐに片付けるわ」

白雪姫は本を片付けに行きました。

「……今すぐ試したいところだけど、タイミングを見計らってやらないと……今はまだだわ」

ステラは呟きました。

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