鍵は何処に
〔早く早く!〕
白雪姫は、現実世界の人たちに手を引かれながら走っていました。もちろん、カレンも一緒です。
「待ってってば!転んじゃうよ!」
そう言いながらも、白雪姫は笑っています。
〔ごめん、ごめん!なんだかわくわくしちゃってさ。こんなことって滅多にないもん!〕
〔たしかにね。さ、行こう!『昇降口』はこっちだよ!〕
白雪姫、現実世界の人たち、そしてカレンは走りました。昇降口に向かって。
〔ここが『昇降口』だよ!〕
「……えっ!」
白雪姫は昇降口を見て、絶句しました。
それは無理もありません。
何故なら、そこには、大量の下駄箱が並んでいたのですから。しかも、その下駄箱は扉付きで、ぱっと見だとどこに鍵があるかが分かりません。さらに、その扉には鍵がかけられる仕組みになっていて、南京錠で鍵をかけている人がいるので全ての下駄箱の中を見ることが出来ないのです。
〔あー……この学校、生徒だけで確か840人だよね……〕
「えっ……つまり……靴箱も840個?」
「……そうなるわね」
その場にいる人たちは気が遠くなりそうでした。
その時、花梨が手を叩きました。
〔こうなったら手分けするしかないよ!今ここにいるのは……私も入れて7人だね。この学校は7クラス3学年だから……〕
花梨はなにやら考えました。そして、唐突に顔を上げて言いました。
〔白雪姫、靴箱に紙が貼ってあるでしょう?その紙に、4桁の数が書かれているんだけど、その内上2桁の数が11の番号のものと、21の番号のものと、31の番号のものを見てもらってもいい?〕
「わかったわ」
白雪姫の返事を聞いて花梨はうなづき、
〔私は全学年2組の下駄箱を見るから……〕
と、現実世界の人たちとカレンに向けて話しだしました。
〔カレンは全学年7組の下駄箱を見てほしいの。いい?〕
〔……分かったわ〕
カレンは何故か、乗り気ではなさそうな声をだしましたが、他の人たちは気付きません。
〔みんな、鍵を探そう!〕
花梨のその一声で、鍵探しが始まりました。
白雪姫は花梨に言われた通り、鍵を探し始めます。
(えっと、上2桁が11、21、31の下駄箱、よね。11から探し始めようかしら)
他の現実世界の人たちも同様に探し始めました。
一方、先程乗り気でなさそうだったカレンは、違う行動を取っていました。1つ目の下駄箱の扉を開けては閉めて、閉めては開けてを繰り返したのです。そしてカレンは、何かを考えているようでした。
不意にカレンはハッとした顔をして、下駄箱の扉を閉めました。そして、昇降口にある掲示板に向かったのです。
さっきは全員が下駄箱のことばかり考えていたばかりに、存在を忘れられていましたが、ここには掲示板があります。そこには色々なお知らせや情報が書かれた紙が貼られているのです。
カレンは掲示板を見渡しました。そして、不意に掲示板のとある一角を見つめ始めたのです。
「きっと……この辺りに……」
そう呟くカレンの声は、小さいのに、確信に満ちていました。
そして、不意にカレンは紙袋を見つけました。
掲示板の木枠に刺さった釘にかかっていたのです。
カレンは紙袋の中を覗きました。




