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第九十二話 宇佐美定満

 

 越後に帰郷した俺達は、輝政の元直ぐ様伊達佐竹に対しての防衛兵力を強化。


 北条武田佐竹蘆名伊達と囲まれるこの越後に、時代の変化が訪れた。


 とある日の午後。定満さんが輝政と俺の元を訪ねた。伊達防衛を新発田、北条らに任せ政に勤しんでいたはずである。


 横には定満さんの二人の子定勝さんと勝行さん。そして同じ七手組大将である景綱さんがいる。


 定満さんは俺らの前にゆっくりと座る。定満さんはどこか話しにくそうにしているので、輝政が声を切り出した。


「どうした、定満。何かあったか?」


「はっ···実は···」


 定満さんは一度目を閉じると、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「この定満。老骨の身なれど、未だ他の若武者に遅れをとることはないと自負しております。が、ここで身を退くことも老骨の務めであります。ゆえに···」


 もしかして、定満さん···


「これにてこの定満、宇佐美当主と七手組大将の役目から退き、隠居させていただきたい」


 輝政は驚いた顔をしたがすぐ元の冷静な顔に戻り


「そうか···」


 そう溢すに留めた。


「これよりは家長の役目を我が子定勝に、今まで請け負っていた政と軍事に関してはこの景綱に引き継がせるつもりでございます」


 その言葉の後に定勝さんと景綱さんが平伏する。


「この宇佐美定勝···宇佐美の名に、父の顔に泥を塗らぬよう誠心誠意輝政様に尽くしていく所存でございます!」


「同じくこの景綱も未だ力足らずとも、今まで以上に尽くして参りまする!」


「···分かった。定満よ、上杉三代に仕え、七手組大将としても家老としても筆頭として私を支えてくれたこと、嬉しく思う···これまで御苦労だったな」


 輝政の言葉に、あの定満さんの目に涙が浮かぶ。


「は、ははぁっ! 輝政様に仕えることができたこと、我が至上の喜びでございました!」


 宇佐美定満。上杉三代に仕え、七手組大将と筆頭家老を兼任し、上杉四天王と呼ばれた男はこうして第一線から退いた。



 さて、定満さんが抜けたことで空いた穴を埋めるため、他の七手組大将を召集し、人選を行った。


 その結果、一人の将が新たな七手組大将としてその名を連ねた。


「この北条高広、この恩義に報いて上杉の矛となることを改めて誓いますぞ!!」


 何故という声も上がるだろう。この人選には理由がある。まず北条の衆は宇佐美の衆に比毛をとらないほどの勇猛さで知られている。その上調略によっていつ裏切るか分からない。ここで七手組大将に取り立てることで手綱を握るためだ。

 金、褒美に左右されやすい所があるものの褒美を与えればしっかり答えてくれる。ある意味分かりやすい男なのだ。



 これで定満さんの穴を完全に埋められたとは思えない。が、それでも後事を託された者達でこなさなければならない。


 その一ヶ月後、俺と輝政、絶は政景さんに近くの池で船を浮かべ酒宴を開くと呼ばれ、坂戸城へと赴いた。



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