第九十一話 感想
次の日、織田からの使者細川与一郎藤孝と須藤元直の二人は丸岡城へと戻っていった。
俺は二人を見送って今日の仕事は終了。借りている部屋に戻って、行人包みを脱ぐ。
はぁ···ようやく終わった~。ようやくこの行人包みと道服を脱げる。しっかし輝政は同盟を結んでいない他国の奴と会う度この装いになるのか···大変だな···。このゆったりとした服装も輝政のボン·キュッ·ボンな女性らしい体型を隠すためでもあるとかで、仕方ないけど。
さて、輝政や定満さんらは今の話を神保畠山の大将に伝える仕事中。他の人達もなんだかんだ仕事がある中、現在俺は手持ち無沙汰だ。大役を終えた俺は輝政からお休みを貰ったのだ。
「主様。お疲れ様でございます。素晴らしい影武者ぶりにこの月夜、感動しました」
俺が床に座りぼーっとしてると月夜さんが話し掛けてきた。
「いやいや、自分でやってて酷いもんだと思うよ」
「ふふっ、ご謙遜を···」
月夜は俺の後ろまでやって来る。
「仕事は?」
「御師匠様より主様の護衛を仰せつかっておりますから」
「んじゃ悪いけど、護衛ついでに話に付き合ってよ···」
俺は寝そべって天井を見上げる。少し頭を反らすと月夜の顔と、引き締まった健康的な太股が見えた。グッド。
「須藤元直と細川藤孝か···あの二人、かなり変人だったな。月夜も大変だっただろう? 酌をする役を任せちゃって」
織田からの使者をもてなす食事の時、綺麗に着飾った輝政と月夜が二人の酌をした。絶さんを連れてこなくて良かった。
「いえ、これも任務ですので···」
「流石。ところで段蔵と弥彦は今なにしてるの?」
「丸岡城へと帰った織田の使者を尾行しております。もう少ししたら戻るかと···」
「そっか···どうだった? 二人と話してみて」
「···少なくとも影武者などの小細工でかわせる方々ではないと思われます。輝政様が女中として場にいたことは流石に気付いていないと思いますが」
だといいけどね···じゃなきゃ意味がない。ってか史実で聞いたことないんだよなぁ···須藤って名前も、軍監衆ってのも。
「にしてもあの感じだと、利益から話を聞いていなかったみたいだな」
「はい。使者の方々も"上杉輝政"の性別に関して疑問はいだいていないようでした。輝政様が女性であることは情報として畿内美濃まで回っていないと思われます」
「まぁ、あの人見た限りじゃ織田内で上手く行ってなさそうだし、織田方は戦時以外の情報集めはこっちまでしてないんじゃないかな···もしくはするほどでもないと思ってるのか」
「先の会談では我々や伏嗅が周囲を見ておりましたが、忍びの一人として付いてきておりませんでした」
油断なのか···いや、使者としての役目に意識を向けてたって所かな。自分の身は自分で守れるってか。大胆というかなんというか···。舐められてるのかね?
そうだったら逆にありがたいけど···あの二人はそんなことしなさそうだな。
「ただ、絶には嬉しい話を出来るからよかったよ。前久さんの無事がこれではっきりしたからね···手紙も預かってるし、これからはやり取りできる」
「はい。絶様もさぞお喜びになるでしょう」
暫くして段蔵、弥彦が戻ってきて、それからすぐ輝政の方も話し合いが終わった。
ようやく手取川の戦いでの俺たちの役目の全てが終わったのだった。




