第八十八話 決着
丸岡城に籠城する織田軍は、いつまで経っても出てこない。弓を射かけたりしたが効果は見えない。
すでに五日経ち、上杉の兵はまだ大丈夫だが、神保畠山の兵には疲れが見え始めている。そろそろ織田からの援軍が来てもおかしくないが、大半の兵を能登と中国の毛利に使っているはず。
「これはそろそろ撤退も視野にいれるべきか···」
輝政も撤退の指示をだそうとした時、外から兵が入ってきた。
「輝政様、畿内方面より織田方に援軍あり! 軍旗は九曜紋、細川兵部大輔藤孝かと!」
「そうか···全軍を丸岡城より撤退させよ!」
輝政の指示は早かった。すぐに丸岡城を攻めている将達に撤退指示の伝馬をだす。
「しかし、想定していたものより旗が多い···大軍を持ってきたのかそれとも···」
考えを巡らせる輝政の腕を掴む。
「輝政、先ずは織田援軍と撤退する味方の動きを!」
「あぁ···そうだな。清胤と長親、撤退する味方を助けよ!」
「「はっ! お任せあれ!」」
清胤達が本陣を出ていく。それと入れ替わるように定満さんと景綱さんが入ってくる。
「輝政様、上杉中継ぎの撤退完了いたしましたぞ」
「丸岡城に籠っていた敵本隊も打って出る動きがあります。これよりいかがしますか?」
「ここが引き際だな···戻ってきた景持に殿を。我らで神保畠山の軍の撤退を援助せよ」
「「はっ!!」」
神保と畠山の軍を先に退かせ、上杉軍は丸岡城から出てきた織田軍を牽制する。その時、
ドドドドドドドドドドー!!
「これは火縄の音!?」
先に退いた神保畠山軍の方から悲鳴が聞こえる。
まさか、背後から銃撃!? いつの間に後ろに!?
輝政の方を見ると悔しそうに顔を歪ませていた。
「そうか···細川殿のあの旗はこちらの目を集めるため···」
「俺らが注視してる間に退く道に先回りされたってことか!?」
このままでは被害が増える一方だ。
「伏嗅衆、松尾衆(景亮配下の忍び四人のこと)!」
俺が呼ぶと全員が目の前に並ぶ。
「銃撃の聞こえた所に行って鉄砲隊を追い払ってきてくれ!」
「「「「はっ!!」」」」
足の速い忍びに鉄砲隊への対応を任せる一方、輝政は朝信さん長敦さんに神保畠山軍を助けに行くよう命じた。
しかし、段蔵達が音のした場所に着いたときには既に移動した後で、人っ子一人いなかった。
鉄砲隊がいなくなったことで立て直した連合軍は、これ以上は被害を出すだけとそそくさと撤退し、七尾城へ帰還した。
また、織田軍も攻めてくることはなかった。
手痛い反撃を喰らったものの、親織田派を一掃し織田軍を越前へと退かせた。




