第七十四話 景亮と政虎
まだ恋愛回です。もう数話続くと思います。早くしろと思ってる方は申し訳ございません。
政虎が戻ってきた。普通にしていても艶やかな髪が、風呂の後のせいかより艶やかに見える。
「すまない。長湯しすぎてしまった」
「お帰りなさいませ政虎様。それでは私も湯浴みをさせて頂きますね」
そう言って絶は浴室へと向かっていった。
「政虎、風呂長かったね」
政虎は長い髪を床に着けないように気をつけて座る。
「これでも一応は女子だぞ? 好きな男と婚姻の話をするのだ。体を綺麗にする時間くらい大目に見て欲しいものだな」
「ーっ!?」
あの政虎がまさかそんなことを言うとは!
「···自棄にでもなった? それとも長風呂でのぼせた?」
「フフッ、もう姉上様や絶殿に迷惑や心配をさせるつもりはないからな」
成る程ね、ってか恐らく迷惑や心配をかけさせたくない以外にもこれ以上弄られたくないってのもあるんだろうなー。
「それにしても、まさかあの時拾ったそなたと、婚姻をすることになろうとは···運命とは分からぬものだ」
「綾さんは俺と会ってからずっと画策してたみたいだけどね···」
「全く、姉上様は···」
呆れつつも嬉しそうに政虎は笑みを浮かべる。
「政虎に拾われ越後に来て、色んな人と出会って。初めて馬に乗って、武器を持って戦場に出て。この時代に来てから初めてのことばっかで、でも何とか今もこうしてやっていけてる。それに···こうして大事な人達にも巡り会えた」
俺はきっと幸運なのだろう。ってかもしこの世界に、俺と同じ様に別の時代から来た人がいたとして、俺の方が断然幸福な自信がある。例えば織田に拾われたらこんな生活送れてないだろう。
大体奥さんが二人とか普通ありえない。役得すぎるってもんだ。
「フフッ、景亮を拾って、そなたの秘密を知り。色々助けてもらう内にいつに間にかここまで来た。今さらやめたは通らんぞ?」
「そんなこと言わないさ···どんなことがあっても政虎の隣にいて支えるよ」
「嬉しいことを言ってくれる···当然だ。私もありとあらゆる害悪からそなたを守り、共に歩んでいこう」
「約束、だね」
「あぁ。約束だ」
俺は小指を政虎に突きだす。
「政虎、小指だけ出してくれる?」
「ん? いいぞ」
俺は自分の小指を政虎の小指に絡める。所謂"指切りげんまん"だ。
「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーらのーますっ。ゆーびきーったっ!」
手を上下に揺らし、歌う。
「今のは?」
「俺の時代での約束するときに使う風習」
「ほぉ···では指切りげんまん、だな」
そう言って政虎は笑った。
暫くして、絶さんが戻ってきた。それから三人でご飯を食べ、晩酌をする。
三人の、ただ穏やかな時間がゆっくりと過ぎていった。




