第七十話 覚悟が足りない結果
これから数話かけて三人の関係を進めます。
永禄二年/西暦1559年 はじめ頃 夕方
さて、年明けてすぐのこと。縁談が来た。それも、未だ独り身を貫く政虎や関白の妹である絶さんにではない。
何と···俺にだ。何ということだろう! どうやら今までの俺の一部の行動が武勇伝として噂されるようにまでなっていたのは知っていたが、それがあらぬ方向に作用してしまったらしいのだ。
俺のいた時代であれば、あと十年は大丈夫な年齢なのだが···この時代は成人になる年齢も初婚の年齢も早い。
お相手は上野のとある豪族の娘さんである。年齢は約十歳。政虎に対して、少しばかりの発言力を持つ俺と娘さんを結婚させ、上杉との繋がりをより深く持とうという腹積もりなのかもしれない。
しかも家臣の一部は上野に確実な味方が出来ると賛成の声もそれなりにあるようだ。しかも、その中には定満さんや実乃さん、景家さんなどの重臣もいた。
一方、この縁談に猛反対する人も当然いらっしゃるわけで···
「よいですか、景亮。あれほど言ったのに進展しないおかげでこうなっているのですよ?」
「は、はぁ···」
絶賛説教中であります。女児が無事生まれ、顔を見せに来た綾さんは、俺の縁談の話が出るや俺を呼びつけ、この状況に至る訳だ。
最早綾さんと会うたびに行われているような気がする説教だが、今回は事態も事態。最早綾さんを止められるものはいない。
あれから政虎も絶さんも、元気がないというか心ここにあらずというか···ともかく集中力に欠いているような感じになってしまっている。
「これはもう···はっきりとさせた方がよろしいですね」
「へっ?」
「少しここでお待ちなさい」
そう表面上は穏やかな笑みで言った綾さんは部屋を出ていった。数分後、後ろに政虎と絶さんを連れて戻ってきた。
「け、景亮···」
「景亮様···」
二人を俺の横に座らせ、自らも前に座ると話を切り出した。
「此度の縁談は、そも景亮が早く身を固めないからこそ起こったこと。散々お膳立てしましたのに、無為にしてしまうとは···」
「す、すみません」
俺はとりあえず頭を下げる。綾さんは次の標的に目を向ける。
「政虎も政虎です。貴女ももう少し積極的に行動なさいな」
「あ、姉上様? 私は別に···」
政虎は反論しようとするが、綾さんの独壇場は続く。
「お黙りなさい! 貴女は越後の国主、上杉の大将であると同時に上杉の系譜を継いだ者でしょう。血を残すことも重要な責務。分からぬとは言わせません」
「うっ···」
流石の政虎も綾さんの気迫に圧され口をつぐむ。
「まったく···皆素直で無いのですから···私達も、少々言い方が遠回し過ぎたのでしょう」
綾さんは溜め息を一回つくと、一転して笑顔になり、胸の前で手を合わせる。
「そこで、私も遠回しになどせず貴方達に言わせていただきます···三人で婚姻なさい」
今日一番。満面の笑みでの直球ストレート。
「「······はぁ!?」」
俺と政虎だけがその言葉に反応した。




