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第六十八話 この世界に来てから三年ほど立ちました

まだまだ日常回です。いつもの面子じゃない人達との関わりも日常的にあるんだよってのが書きたかっただけです。

 

 坂戸城から戻ってきた次の日。


 今日は一日特にやることもないし、絶さんや政虎も用事があるので久しぶりに一人、城下の町を彷徨くことにした。


 屋敷の庭では段蔵が弟子二人と武器や術を使った組み手をしていた。

 俺に気付いた段蔵が手を止めると、弟子二人も手を止め、こっちを向いて頭を下げた。


「おや主、お出掛けですかな?」


「まぁ、ちょっとそこらにね」


「でしたら月夜に護衛を···」


 その言葉に月夜さんが近寄ってくるが、俺は手を振って拒否した。


「いいよ。危ないことをする訳じゃないから」


「そうですか。ではいってらっしゃいませ···では二人共、続けるぞ!」


「「はい! よろしくお願いします!」」


 再び組み手を始めた段蔵達を横目に俺は町へと繰り出した。



 俺は何の意味もなくぶらぶら歩く。ここに来て早三年になり知り合いも増えた。


 そんな中、道の向こうからやって来たのは七手組大将の三人。柿崎景家さん、中条藤資さん、北条高広さんだった。


「お、景亮じゃねぇか」


「どうも! 皆さんは見廻りですか?」


 俺の質問には高広さんが答えた。


「うむ。景亮殿は何をしているのだ?」


「いや、今日はのんびり散歩でもと」


「そうか···そういえば貞興達若い衆が鍛練をしていたが、景亮は向かわないのか?」


 へぇ···相変わらずだな。近衛である清胤は流石に居ないと思うけど。


「今知りましたよ。後で顔を出しに行きます」


「あぁ。それもいいだろう···では我々はこれで」


「景亮! 先の古河攻め、見事だったぞ! ああいうことがまたあれば、次には俺にも報せろや!」


 そう言って三人は去っていった。


 俺はそのままぶらぶらと歩いていると、今度は定満さん、景綱さんと出会った。


「おぉ、定満さんに景綱さん」


「景亮か。綾様の容態はどうであった?」


「大丈夫そうでしたよ。四人目のお子ができたようで」


「何と!? そうであったか···長尾の御家は安泰であろうな」


「それに比べ我が家は···」


 景綱さんが溜め息をつく。


「何か思うところが?」


「景綱の子には男児が居らんからな。後継が悩みの種なのだ」


「はぁ···情けないことでありますが。伊勢松は若くして死に、菊松は正国尼が連れ去ってしまいましたからな···養子か婿を迎えるかしなければ」


 家臣の中でも大きな力を持つ景綱さんでも悩みはあるんだな···。


「そういえば景亮。そなたの考案した例のあれのおかげで財政も潤い、情報も得やすくなったと好評であるぞ」


「そうですか! それは良かったです!」


 定満さんの言った例のあれとは、以前俺が考えた商人から情報を買うというものだ。これは畿内や関東、甲斐の情報をより早く集めるために行ったものだが、他にも恩恵があった。


 元より金山や海上交易などにより潤沢な資金を得ていた越後だが、情報という新たな商品の売買を開始。それを美味しく思った商人が別の商人にも話すことで、越後に足を伸ばす商人が増えたのだ。

 これによってこちらは色んな情報が手に入る上、人も多く集まりお金がこの越後におちてくる。


 まぁそれには中継地点も含め、商人に情報の売買をする権利を発行しなければならない訳だが。これには勘合貿易のように勘合符(文字を書いた木の札を半分にしてお互いが持ち照合することで相手が商売相手かそうでないかを判別するというもの)を作り、他の大名に勘合符を見せないことなどの契約をさせた。


 その代わりにその商人の商品を優先的に買うという方針を示したので、商人の反対もなければ、契約を破られることも今のところない。


 ついでに政虎はその勘合符に、これを考えた俺の武器から連想し、鹿角と盾、俺の名から一文字、松を書いたので名称を鹿角盾松札かかくじゅんしょうふだと名付けられた。


 読みにくい上に恥ずかしいことこの上ないが、俺の名前はそれほど知られていないのでまぁいいだろうと思い何も言わなかった。


 定満さんは笑みを浮かべながら話を続ける。


「商人らも満足しておるようだ。鹿角盾松札も上手く機能しておるようであるしな」


「あぁ。景亮の行動には常々驚かされる。越中古河だけでなく、伏嗅の養成も景亮が考えたのだろう?」


「いや、周りに頭が良かったり身体能力の高い人達がいたおかげですよ」


「それも含め、お主の功績であろう。誇るがいい」


「···ありがとうございます!」


「定満殿、そろそろ行かなければ···」


「おぉ、そうであったな。ではな景亮」


 そう言って二人は去っていった。


 背中が見えなくなるまで見送った俺は、先ほど景家さん達が言っていた貞興兄達を探すのだった。



クロスオーバー作品である野央棺様の"分枝世界の戦国記譚"もよろしくお願いいたします!

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