第五十四話その二 心配する人 政虎視点
私が古河御所の掃討完了を知ったのは朝、起きてすぐの事だった。
景亮を主導に鳶加藤、義守、貞興、頼久、清胤が夜中の内に侵入。蔵を二つ破壊した上で外に待機していた柿崎隊を御所内に引き入れ、足利義氏らを放逐を成し遂げた。
役目を果たしたのは良いことであるが、軍を勝手に動かしたことなどは誉められるべき点ではない。
この事は定満も同意件であったようで、帰ってきた景亮達を呼び集めて説教を始めた。
いや、正確には景亮達に事の顛末について聞こうと思っていたのだが、定満が集まってすぐ説教を開始したのだ。
やれやれ···まぁ、定満の言うことは正しいし、一度説教をしておかないとそう何度もやられてはこちらも困る。
それから暫く経ち、定満も気が治まったようでようやく説教を止めた。
その後、顛末を景家と清胤が説明するが、景亮が主導して行ったことは言わなかった。私としては事の考案者であろう景亮に説明して欲しかったものの、定満は景亮主導と思っていないことと景家と清胤の立場の手前その事には触れなかった。
全てを聞き終えた私は
「そうか···分かった。叱りは定満がしてくれたからな···今回のことはこれにて終いとする。景家は兵を休ませろ。清胤と頼久、定満で御所の修復などの後処理を指揮せよ。解散!」
そう指示を出す。
「「「「「はっ!」」」」」
皆は返事をすると、席を立ち、自らの持ち場に向かう。どさくさに紛れ、景亮も席を立つが私はそれを止めた。
「景亮は残れ」
「あっ、はい」
私は景亮が座るのを確認すると、話を切り出す。
「さて、景亮。改めてそなたの口から、此度のことを話してもらうぞ」
私は景亮から侵入方法や蔵の爆発方法を聞く。私はついつい溜め息をついてしまった。
「はぁ···無茶をして」
景亮は慌てて言い訳をする。
「ごめん···いやちょっとでも早く終わらせようと思ったらこれしかないと思って」
越中でも同じ様なことをしたのだろう。
「実際、そなたらのお蔭で早く済んだ。だがな···」
私は景亮の頭を抱き抱える。
「ーっ!?」
つい、というか体が勝手に動いたという感じだった。
「全く···心配を掛けさせおって。危ないことはするなとは言わん。が、次からこのような事をする際は私に許可をとってからやるように。いいな?」
胸の中の景亮は動かないが、景亮の胸の鼓動の早さが伝わってくる感じがした。
それのお蔭か、私は何故か落ち着いていた。
「は、はい」
少し間をおいて腕を離す。景亮が落ち着いたのを確認し、暫くの間雑談をした。
そして話が落ち着くと景亮に休むよう命じる。
景亮が部屋を出た途端、さっきの事が何だか急に甦ってきた。
というか、さっきは私は景亮に何をした!? だ、だ、抱き寄せるなんて···はしたない! それに恥ずかしい!
顔が朱くなるのが分かる。
私はそれから長い時間をかけて赤ら顔が落ち着くのを待った。
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景亮と政虎の逢瀬? を盗み見る男がいた。
「ふぅむ···これは御前様(綾のこと)と絶様に御伝えせねばなりますまい」
ニヤニヤした顔を隠すこともなく、このお節介爺は主と大殿が二人で綾と絶に話すよう迫られる様子を思い描くのだった。




