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第五十話 今川の介入

 

 羽生城を落とした上杉軍は次の目標を古河御所に定め、進軍を開始した。


 それだけでなく、他の北条方の城を次々と包囲していく。河越城、玉縄城、滝山城などはそれに対応するように籠城を決め込んだようで、一切外に出てこなくなった。それと同時に松山城にいた氏康も、小田原へと退却。同じく籠城し、打ち出てくることはなくなった。


 俺達は羽生城に集まり、再度会議を行う。


「政虎、これよりどうするつもりだ?」


 憲政さんの質問に対して、政虎はすぐに返事をする。


「向こうが出てこないというなら、こちらから詰めていくだけのことです···では軍議を始める。何か言いたいことのある者は?」


 その言葉に朝信さんが名乗り出る。


「兵站などに関して各地で紛争が起こっているようですが如何致しますか?」


「そうだな···伝馬、輸送に関する制札を出そう。景持に伝えよ」


「はっ!」


「それから越後に残っている景綱を呼ぶ」


「では制札については景綱殿に任せましょう。使いは伏嗅から一人、足の速い者を選抜して送ります」


「いいだろう。その采配は定満に任せる」


「はっ!」


 人の往来が激しくなり、会議に熱がこもってくる。俺は少し離れた所で一切考えることを捨てて聞くことに集中している脳筋、貞興兄の横に居座りおとなしくしていた。


 次々と策を講じ指示を出す政虎と、てきぱきとこなしていく将たち。


「やっぱすっげーな···」


 そんな俺の独り言に貞興兄が反応する。


「何がよ?」


「何て言うか···政虎の采配も凄いし、それにすぐ対応できる皆が羨ましくてさ···俺には知恵も自分の役職らしい役職もないし」


「なんだ···そんな事か」


 貞興兄はやれやれと肩をすくめる。


「そんな事かって···」


「はぁ~···景亮。お前そんなに自信ねぇのか?」


「そりゃ···あるわけないよ」


 流石に戦の雰囲気には慣れたが、未だに斬り合いの実践経験はない。

 その上、政に関しては未だに分かっていない。俺の出来ることいえば政虎の側にいること、未来の出来事を教えるだけだ。


「いいか景亮。お前が今何を思ってたかってのは分からんが、お前が考えるのは無意味だ。お前が使えるか使えないかはお前が決めるもんじゃねぇ···周りが決めるもんだ。そしてお前は今、ここにいる。それが全てだ」


 貞興兄···


「それにこの間の越中の時、お前の策は見事だった。誰もが皆、あんな風な終わり方を考えちゃいなかった。ありゃお前の手柄だ···違うか?」


 俺が考えていると、肩を一回強く叩かれた。そして笑いながら俺に言う。


「安心しろよ。御大将はお前のことを一番理解して、考えてくれてるってのはお前も分かってんだろ? それに御大将だけじゃねぇ···ここにいる全員が既にお前を認めてる」


「うん···」


 俺が感動していると、


「景亮! 何をしている、お前もこちらにこい!」


 会議をしていた政虎に呼ばれた。


「ごめん今行く! 貞興兄、ありがと!」


「おう! 頑張れよ~!」


 俺は会議をしている場に向かい、政虎の隣に座る。


「まったく···そなたは私の側付き兼相談役なのだから、近くにいろ」


「ごめんごめん···で? 軍議はどうなったの?」


「変わらんさ···まずは古河御所を制圧する。その後、順を追って城を攻めていく」


 まぁ···向こうに動きがなきゃこっちも動きを変える必要はないか。


「主」


 突然段蔵が後ろに現れる。


「うわっ! 段蔵か···どうした?」


 他の将も突然現れた段蔵にビックリしている。


 それを気にする事もなく、話始める。


「どうやら河越の方で動きがあったようですぞ」


「河越?」


 それの話について聞こうとしたら、外から兵が走ってきた。


「伝令! 河越城を含めた一部の地域に今川の軍勢が現れました! そこを攻めていた大名方は城攻めを止め、一度退却した模様!」


「来たか!」


 とうとう今川の介入が始まった。これにより一時、城攻めが遅れることとなる。



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