第四十四話 第三次川中島合戦
弘治三年/西暦1557年 七月 飯山城 政虎視点
景亮を越中に送り出した。景亮がここに来てから初めての別行動となる。
心配ではあるものの、私は上杉当主。為すべき事を為さねばならない。
高梨の居城である飯山城を囲む武田の兵を撃退させると、直ぐ様兵を整え高井郡の市川の調略を行う。
また、武田勢の居なくなった元旭山城の場所に再度旭山城を築城。信濃の南側まで攻めるに至った。
ところが···
「北条め···武田の同盟だからと、嫌なときに来るものだ」
北条が黄備え、綱成が上田城に入ったとの情報を得た私たちは陣を引き払い、飯山城へと戻らざるを得なくなった。
しかし、こうして私が武田に目を向け続けていられるのも越中組のおかげ···だな。
向こうは今どうなっているのだろうか···怪我したりしていないだろうか···
「政虎、景亮のことばかり懸相しておるなよ」
「ーっ!? あ、義兄上!? 懸相などっー!」
私の反応が思った通りだったのか、義兄上に笑われる。
「はっはっは! 図星か? 綾が聞けばさぞ喜ぼう!」
「···ただ心配になっただけです。景亮はまだ戦場にでるには力も覚悟も足りないので」
義兄上はその言葉に肩をすくめる。
「景亮は武も武士道の心得も足りないが、頭はよく回り、悪知恵も働く。もしかすれば越中平定を成し遂げているかもしれんぞ? 信じよ。清綱らもおるのだ、巧くやっているだろうよ」
···義兄上の言う通りだ。あやつが敵の城に乗り込んだりすることはない。あやつは自分の出来ること出来ないことを客観的に見れる人間だ。
「···そう、ですね」
「今は武田に目を向けよ。最終的に戦はどこで行われると思う?」
「上野原でしょう。敵は小谷の城を攻め落としました。そして一方の我々は飯山にいますからお互いが睨み会う位置はそこになるかと」
「中島!」
私が名前を呼ぶと、中島と伏嗅衆甲斐諜報担当の中西が後ろに現れる。
「武田の動きは?」
その問いに中島、中西が順に答える。
「政虎様の予想通り他の城を無視してこちらへと真っ直ぐ向かっています」
「旭山城、葛山城の兵は指示通りの動きをしております」
「そうか···ではこちらも出陣する。諸将らにも伝えよ」
「はっ!」
二人を見送ると、義兄上が聞いてくる。
「先程言っていた指示とは?」
「あぁ···挑発や攻撃をせず、城に籠れという単純な指示をしただけです。有事の際には武田を後ろから攻撃できるように。保険という事です」
「向こうは余裕があるからな···そなたの得意な野戦に持ち込むなら、今城から出て戦う必要はない、か」
「その通りです。では私たちも動きましょう」
「あぁ」
それから一週間後、上野原に布陣。その数日後、武田方も上野原に到着、布陣した。




