第三十九話 畠山調略
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これ無理じゃね?とか間違ってるとかは優しく教えてください
段蔵と清胤が戻ってきたので、他の将と共にその詳細を聞くことにした。
全員で円を組むように座る。
「まずはお疲れ様。それで、成功したのは聞いたけど向こうの反応はどうだった?」
俺の問いかけに、清胤が答える。
「義綱殿はどうやら相当参っていたようで、俺達の同盟の誘いにすぐ乗ってきたよ」
段蔵も髭を撫でながらしゃべる。
「向こうからすれば関東菅領であり、幕府の信頼も厚い上杉の名を使えるのです。対立する者共もそう簡単には動けますまい。もし義綱殿を追いやったら怪我をするのは彼方ですからな」
これで畠山の内情もちょっとは安定してくれるといいんだけど。
「これで神保方に対してはどうにかなりそうですね···」
「あとは椎名と一向一揆の奴らか···」
「これであれば、先に神保に書状を送った方がいいやもしれんな」
確かに。畠山を介しつつこっちからも書状を送れば椎名を攻撃することは簡単になるかもしれない。
でもなー···神保も椎名も史実だとよく裏切ってたしなー。もっとしっかり言うこと聞かせられる方法ってないもんかな?
「問題があるとすれば、これで神保と椎名が同盟を結ぶことですな。畠山もそれに乗ればこちらが撤退をするしかなくなってしまう」
家成さんの言葉に気付かされる。
うっわそういやそれもあったわ!見落としてた···
「じゃあ神保への攻撃はやめて、椎名の方にだけ攻撃しよう。陣も椎名の方に対してだけ構える。それに加えて椎名の領地には神保が俺達と手を組んで攻めようとしてるって噂を流しておこう。段蔵、義守さんでお願い」
「はっ!」
すぐに返事をする真面目な義守さんとは対照的に意地悪そうな笑みを浮かべ、ウンウンと頷く段蔵。
「いやぁ、我が主もやっとこさ将らしくなってまいりましたな」
「うっせ。はよ行け」
「かっかっか! 人使いの荒い主ですなぁ···では!」
そう言うと二人は部屋を出ていった。
「こうすれば、椎名も神保に仲良くしようなんて言えなくなるはず。向こうがこの作戦を看破しない限りはね。神保には椎名を一緒に倒して、この越中を任せるけど、裏切ったら全軍をもって神保を根切りにするぞとかって書状に書いて送ろうか」
完全に脅迫である。まぁ、普通に考えれば越後と敵対するか、椎名を倒して越中を手に入れるかなら後者を取ると思う。ってか思いたい。
「貞興兄、一旦兵を頼久に任せて、清胤と一緒に神保の所に向かってくれる? 武勇名高い鬼小島の名前を使わせてもらいたいんだけど」
「おうよ、いいぜ。神保の大将のところへ言って啖呵切ってくりゃいいんだろ?」
「清胤も外交はこの中じゃ一番上手だし、お願い」
「分かった。力を尽くそう···この城の守り、兵の統率は家成殿、清綱殿、長実殿。どうか宜しくお願いします」
その言葉に三人は頷き、代表して清綱さんが答える。
「委細承知しておる。若い者は思ったように行動するが良い。尻拭いは儂らに任せよ」
「ありがとうございます。では貞興兄、書状を書き次第行こう。清綱殿、我らの代わりに書状を書いて頂けませんか?」
「あい分かった。それくらいの事であればいくらでも」
「あいよ! じゃちょっくら出掛けてくるぜ」
そう言って三人も部屋を出ていった。
さて、この作戦でどう動くもんかな···。最もいい流れは、椎名が神保に攻撃して、神保がこっちと畠山に助けを求めるって流れだけど。
あとは神頼みかな?
その二週間後に全員が戻り、それからまた二週間後、椎名と神保で戦が始まった。