第三十七話 刺叉と盾とお立ち飯
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貞興兄と段蔵の仕合いが始まった。
パワータイプの貞興兄と、テクニックタイプの段蔵。
攻撃を畳み掛ける貞興兄の槍を捌きながら、刺叉を使って臨機応変に対応し、タイミングをずらしていく。
「やるじゃねぇか鳶加藤よ!楽しくなってきたぜ!」
「かっかっか! ある程度仕合えませぬと、忍は務まりませんからなぁ」
二人共、笑顔で戦いを続ける。いやだ、何あれ怖い。
俺がそんなことを考えている間にも二人の模擬戦はヒートアップしていく。
打ち合う音が響くなか、段々と段蔵が押され始めた。
「むぅ!」
「おらぁっ!」
貞興兄の一突きで、段蔵がバランスを崩した!
「これで終いだ!」
貞興兄が頭目掛けて槍を振り下ろす。
その時、段蔵がニヤリと笑った。
段蔵は一瞬で持ち直すと、槍を後ろに捌き、貞興兄の首に刺叉を突きだす。
「うおっ!?ーーがっ!」
驚いた貞興兄は避けることはできず、後ろに倒れていく。
段蔵はすかさず貞興兄が手離した槍を蹴り飛ばし、倒れた貞興兄の首を地面と刺叉で挟むように突き刺す。
「そこまでっ!」
政虎が終了の合図を出す。
段蔵は刺叉を抜くと、貞興兄も直ぐに立ち上がる。
「いや~、参った参った! 負けちまったぜ」
頭を掻きながら、貞興兄が戻ってくる。
「かっかっか! 貞興殿は搦め手には弱い様子。弱みを見せ、誘い、搦める。これもまた、戦いでありますぞ」
「精進します」
「貞興、実際に戦ってみてどうであった?」
「武器、特に身を守ることに関してはそっちの盾を含めて十二分でしょう。景亮の戦での配置を考えれば、問題ないと思いますぜ。それなりに耐久力もあるみたいですしね」
「だ、そうだぞ?」
「あぁ、思ったよりいい感じで良かったよ」
「それは何よりでございました」
鍛冶職人が貞興兄から刺叉を受け取り、掃除を行う。
やっぱこれ造って良かったー! 使うかどうかは戦場によるけども、刀よりは俺の精神上よっぽど安心できる。
「んじゃ、このまま俺らは鍛練にはいるか!」
俺、貞興兄、頼久、清胤で木刀を取る。
「それには及ばん」
政虎の言葉に俺たちの手が止まる。
「戦の前なのだ。女中たちに指示をし、お立ち飯を用意してある。今日は鋭気を養うがいい」
政虎が手を叩くと、集まっていた俺たち用のご飯が運ばれてくる。
どんちゃん騒ぎの飯タイムである。
貞興兄や段蔵はガバガバと酒を煽る。
俺はと言うと、酒飲みどもから逃げるため、政虎の横に避難していた。
のんびりと話をしながら飯を食べ、笑い声があちらこちらから聞こえてくる。
泰平の世。この光景がこの日本全てに訪れるように···そう思った。
その二ヶ月後、雪が解けた越後を出発し、俺達は越中、政虎たちは信濃へと進軍を開始した。




