第三十五話 気付かない気持ちと覚悟
急いで書いたので、あたふやになってしまったかもしれません···申し訳ないです!
という訳でどうやら綾さんは政虎と絶さんに"愛"を語っていたようだ。
成る程···やっぱりこの人が越後の"愛"だ"義"だの発信源なのね。
「景亮、貴方も座りなさい。貴方にも"愛"が足りないのです」
「は、はいっ!」
おとなしく座ることにする。いつも微笑みを絶やさない綾さんだが、完全に怒ってた。まじ睨まれた。
「まったく···貴方には期待していたのに、思ったよりもお互いにいじらしいのですから」
「「は、はぁ···」」
「それに比べて絶は聡明で、二人に爪の垢を煎じて飲ませたいものです」
「まぁ、綾様! 二方とも素晴らしい方ですし、そういう時こそ私たちの腕の見せ所でございましょう?」
「えぇえぇ、まったくもってその通り! フフッ、もう一人妹が出来たようで誠に嬉しき事です」
「私も新しい御姉様ができて嬉しいです!」
···やばい。なんか共鳴してる。綾さんの語りが二倍増しくらいになってる上に絶さんがのってるおかげか更に倍に増してる気がする。
政虎も頭を抱えてるし。こんな政虎始めてみた···ってか綾さんも絶さんにも言えることだけど。
ところでいつの間にか綾さんは絶さんのことを呼び捨てしてるし···
状況が変わりすぎて俺もうワカンネ。
「は~っ···姉上様、私も当主の身です。いつまでもここにいるわけには···」
立ち上がり、部屋を出ようとした政虎を綾さんは睨み付けて止まらせる。
「政虎、貴女は絶を景亮と結ばせると言いましたね?」
「は、はい···」
「そうですか···それもいいでしょう。政虎、貴女にはまだ足りない物があります」
政虎に足りないもの? そんなのあんの?
「それを知るには良い機会でしょう。絶、貴女も手伝いなさい」
「はいっ! お任せでくださいませ!」
これは···一体何が始まるんだろ?
「景亮、貴方もですよ」
俺も!? 何か分からんけど余りの怖さに頷いてしまう。
そのあとの綾さんと絶さんの満面の笑みに俺は
(あ、俺今何かに嵌められたか···)
そう確信したのだった。
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景亮屋敷 絶視点
私は綾様と二人、政虎様と景亮様のお互いの気持ちを引き出すための算段をしておりました。
ところが中々名案が浮かびません。どうしましょう?
お二方共素敵な方ですが、ことこの手の話には疎い様子。お二方共通じあっていることは皆分かっていることでしょう。
どうにか通じあう方法はないものでしょうか···
考え込んでいますと、
「そういえば絶、貴女も景亮と契りなさい」
綾様の言葉は一瞬私の心を揺さぶりました。
「···それは···よいのでしょうか···」
「近衛家のため、元よりそのつもりで貴女はこの越後に来たのです。それに、貴女も嫌ではないでしょう?」
それは確かに···政虎様も景亮様も違った魅力のある方、本当を言えば私はお二方に惹かれていると思います。
「政虎は越後上杉の当主、血と家を残すのは宿命。しかし、同時に戦場に出る役目も負っています、そしてそれは景亮も同じ。共に戦場に出て運命を共にすが妻もいるのならば、家で待ち、尽くす妻もいていいでしょう。それに政虎と景亮の婚姻は表だって行えないでしょう···上杉政虎の不在はこの越後、いえ日ノ本にとって良くないこと。それに政虎の夫になるのであれば一部の反対もあるでしょうし···国主の夫の立場とは茨の道、景亮を支える者は多い方がいい」
政虎様と景亮様を支える役目···その様な大役、務まるでしょうか?
「絶、貴女も覚悟のための時が必要なようですね。今日はここまでと致しましょう。政虎と景亮のこと、よろしく頼みましたよ」
「は、はい!」
では、と言って部屋を出ていく綾様。
私は一人、考えることにしました。
しかし、結局考えをまとめるにはまだ時間が掛かるようです···




