第三十一話 未来を望んで
今回は段蔵回です。
ある日、政虎、定満を中心に演習をしていた。
それが終わり、春日山に帰ってくると見覚えのない荷駄や兵がいた。
すると政虎の元に一人、使いの者がやってくる。
「政虎様、都より近衛前久様がお会いしたいと···すでに部屋にて待っております」
「分かった、すぐ向かう。定満! あとは頼んだ」
「はっ!」
政虎の背中を横目に、俺は自分の寝部屋へと戻った。
俺は段蔵とお茶をしながら休むことにした。長閑な時間が過ぎていく。
「···何もないって、良いことだな~」
「ほほぅ···武士たるもの、戦場が花では?」
「俺武士になったつもりないし···戦ってか斬った斬られたが好きじゃないの知ってるだろ?」
「格好のつかない主でありますなぁ···」
ズズッとお茶を飲む。
「にしても此度の近衛様の来訪、どうやら主にとって他人事ではないかもしれませんぞ?」
「あ? 近衛さんは関東管領のことで来たんだと思ってたんだけど···」
「疎い。疎いですなぁ···それであれば妹君や女中も来ている理由がないでありましょう」
···まったくその通りで。
「じゃあなんだってんだ?」
「いよいよ京も危なくなって来た。そういうことでございましょうよ」
「まぁ、それは分かるとして···なんで俺に関係するんだよ」
「妹君。あのお方はどこに住まうのでしょうなぁ?」
···はぁ? どっかの館を作るか借りるかじゃないの?
「拙者が見る限り、あれほどの数を入れられる屋敷はここしかありませぬ。妹君とも仲が良いことを考えると、主のところに置くのが一番だと考えていてもおかしいことではありますまい」
「···使いがこないからそれはない」
と言ったところで、義守さんが現れる。
「景亮様。政虎様がお呼びでございます」
あっ···。フラグ建てたか!?
段蔵が横でゲラゲラ腹を抱えて笑っている。
「···分かった。すぐ行くよ」
「では、案内いたします」
立ち上がると段蔵が声をかけてくる。
「頑張りなされい、主」
「はぁ···行ってくるよ」
段蔵に見送られ、俺は義守さんの後について、政虎の元に向かった。
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義守と共に政虎の元に向かった景亮の背中を眩しそうに見つめていた。
見えなくなると、一人庭を見ながらお茶を飲む。戦のない時を噛み締めながら一人呟く。
「我が主の未来、これからまさに開こうというのに···この老体は何時まで持つだろうか。戦を生き延び、愛する者を見つけ、子を作り、教え育て、後事を託すのが戦に生きる者の役目。妻子の無い拙者なれど、若い者に我が全てを託し、死しても主の恩に報いるべき···か。そろそろ拙者も託す者を見つけなければならんなぁ」
その未来を思い描く。
我が全てを託すに足る弟子とともに主のために戦場を駆ける。その内後事を託して死ぬ。
あぁ···それは何と満ち足りた生だろうか。
「せめて主の妻子の顔を拝んでから死にたいものだ」
もし主が現れなければ、おそらく越後を追われ、甲斐に逃げてそこでも追われそしていつかは死んだであろう···戦場に華を咲かせることもなく。
自らを取り立て、技を見せる場を作ってもらった恩義は必ず返す。
人には飄々とした姿しか見せない段蔵だが、その忠義は誰よりも篤く、一途である。
願わくば···我が命、最期まで我が主のために。
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