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第三十話 約束と帰郷


あれこれ話している内に約三時間、ずっと絶さんとのんびりお茶をしていた。

なんとも生産性のない過ごし方ではあるが、可愛い女の子が淹れてくれたお茶を飲むのだ。ここは天国か···

そんなことを考えていると、後ろの戸から声が聞こえた。


「ここにいたのか、景亮」


「んあ?」


俺がそっちを向くと、おめかし(男装)をした政虎が立っていた。


「お帰りなさいませ、政虎様。お茶はいかがですか?」


「絶殿のお茶か。ありがたくいただこう」


その言葉に「はい」と返事をして絶さんが茶を淹れるために立ち上がる。一方政虎は息を一回吐くと俺の近くに座った。


「お疲れ様政虎。無事終わった?」


「あぁ。公方様とも話ができた」


「そっか···」


話が一旦切れると、お茶を淹れ終えた絶さんが政虎の側まで動く。


「政虎様、どうぞ」


「ありがとう」


絶さんは政虎にお茶を渡すと、自分の元いた場所に座る。

政虎は一口お茶を飲むと、改めて口を開く。


「それで景亮、そなたはずっとここにいたのか?」


その質問に答えようとすると、かわりに絶さんが微笑みながら答える。


「はい、それはもう六刻ほど」


「そんなにか···景亮の相手をしてもらってすまなかったな絶殿」


「いえ、景亮様には色々な話を聞かせていただきました。感謝をするのは私でございます」


「いや~、ここはのんびりしてて居心地いいし、絶さんとの話は楽しいしでいいとこだよ。まぁ越後には敵わないけど」


「フフッ···そうか」


···うーん。こうしてキレイな女性二人が並んで話してるのを見ると、やっぱ良いもんだな! なんというか華がある。青春を男友達と過ごしていた俺からすればこれほど幸になる光景はない。

あー、拾ってくれたのが政虎で良かった!マジ幸せだね!


「どうかしたか?」


「いんや、ちょっと考え事してただけ」


そんなこんなでそこからまたー時間ほどおしゃべりは続いた。


そろそろ終えようかと全員が思い始めた頃、政虎が口を開いた。


「そうだ、景亮に伝えるのを忘れていた。二日後、越後に戻ることにした」


「おぉう···了解」


もう一週間くらい滞在してるし、いつまでもここに居るわけにもいかないしね。


「そうですか···少し寂しいです。ここには同じ歳の方が中々お見えになりませんので」


そりゃそうだ。基本的にここに来る人なんて大概、前久さんと会うのが目的だろうし。


「いつになるかは分からないが、上洛はこれからも行うつもりだ。その際は必ず二人で立ち寄ろう」


「そしたらまたこんな風にお茶でも飲みながらお話しましょう」


そう言うと、少し陰っていた絶さんの顔が晴れやかになる。


「はいっ! 必ず!」


これは次も楽しみだ。なにより絶さんの顔が笑顔になってよかった。



そんなこんなでこのお茶会はお開きとなった。


それから二日間は、また政虎と共にあっちこっちに挨拶回りやらだ。

行った先には公家の屋敷だけではなく、大徳寺というお寺にも行った。

政虎の行動範囲やら知り合いの数には恐れがいった。


全てを終えた二日後、前久さん、絶さんのお見送りのもと越後への帰路についた。




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