第二話 出会い
おっちゃん2人が逃げてから暫くたったが、俺は未だに蔵の中に閉じ込められていた。
外の喧騒も止んでいるので、北条さんとやらの勢力と越後のお殿様との戦いは無事終わったようだ。
が、しかし。俺はずっとこのままである。
「んーーーー!! んーーーーーー!!」
叫び続けてからどれぐらい経っただろうか……そろそろ疲れてきたが、止めるわけにもいかない。
どうか誰かが聞いてくれますように! ホントお願い!!
「んーーーーー!! んんーーーーーー!!」
いい加減叫び疲れ、止めようかと思ったその時、
…………ガラッ!!
扉が開いた。
そこにいたのは刀を腰に携えた鎧を着た女性だった。多分年上だろう。身長は俺より高い気がする。その女性に、俺は助けを求めた。
「はんあ、はれはわひはんわ、はうへえふへ!」
彼女は少し間をおいてから口の布を取ってくれた。
「……っぷはぁっ! 助かったー! ありがとう! さぁ、次は手と足の縄を取ってくれ!」
そう言って背中を見せるが回り込まれ、見つめられた。
その瞬間、俺は時が止まったように感じた。
綺麗で真っ直ぐな目だった。
顔立ちも凛々しいという言葉が似合った。
「お前は、何者だ?なぜ縛られていた?」
見とれていた俺はその言葉によって現実に戻された。
や、やばい! とりあえず答えなければ!
「な、名前は松尾景亮。……縛られてた理由は分からん。俺が知りたいくらいだよまったく……だいたいここはどこだよ? なんでこんなとこにいるんだ? ってか助けてくれてありがたいけどあんたは誰?」
思ったことを全て口にしてしまった。しかも早口で。
口の中が乾き、心臓がバクバク言っている。俺自身どうしてなのか分からない。腰の刀にびびったのか……それともあまりに綺麗だったからか。
そんな俺に女性は、
「まずは落ち着け。取り敢えず縄をほどいてやろう」
そう言って縄をほどいてくれた。
「あ、あぁ……ありがとう」
立ち上がろうとすると力が入らなかった。すると目の前に手が差し出された。見上げると、女性が手を差し伸べてくれている。
俺は恥ずかしがりながらもその手を取る。ところがその時。
「あっ……」
手を引っ張られた反動で倒れ、女性の体にもたれかかってしまった。
ほっぺが女性の胸のところに触れてしまった。
あっ、いい匂いがする……。
謝ろうと思って女性を見上げると、目の前には握られた拳が迫っていた。
ゴスッ
「ぎゃあ!!」
俺が最後に見たのは、無表情で俺を見下ろす女性の姿であった……。