第二十八話 上杉政虎と俺達
さて、俺らが部屋に入れられてから一時間ほど。
景虎が絶さんに案内されて戻ってきた。
二人はかなり仲良さそうにしている。
「二人は前から仲良かったの?」
景虎と絶さんが笑いながらそれに答える。
「いや、今日初めて会ったのだがな、絶殿とは気が合うようだ」
「はい、政虎様とこんなにも話せたこと、嬉しく思います。 次にこちらに来た際はぜひお立ち寄りくださいませ」
「あぁ。是非」
「景亮様も」
「はい。その時は寄らせてもらいます」
「では、私はこれで」
そう言って絶さんは去っていった。
戸が閉まると、景虎と憲政さんが改まって全員を並ばせる。
全員が並んで座るのを確認すると、憲政さんが話始める。
「皆聞いてほしい。此度の上洛、その目的の一つは私の家の後継について決めることだったのだ」
景家さんが反応する。
「後継···ですか?」
「うむ。越後へと逃れた時、後継であった龍若丸は死に、憲重も若い。私に関東菅領の役目をこなす才も力もなく、その器に合った者が継がなければならん。そこで私は、この長尾景虎を養子とし、山内上杉家の家督と関東菅領の役目を継がせることに決めた。既に公方様からも許しを得ている」
「これより、私長尾景虎は名を改め、上杉政虎と名乗る事となった」
そう景虎改め政虎が言うと、俺と憲政さん以外が平伏する。
その中から代表して景家さんが口を開く。
「これは誠にめでたき事! 我ら家臣一同、これからも上杉政虎様と共にありましょうぞ!」
「あぁ、宜しく頼む。数日の内に関東菅領の儀を行うことになったのだが、その太刀持ちを景家と朝信に任せるつもりだが、よいな?」
呼ばれた二人は一度顔を上げ、驚きの顔を見せるが、すぐに平伏し直した。
「「ははっ!」」
「一度兵の元に戻ろう···七日ほどは滞在するのだ。改めて諸々の手配をしなくてはな」
憲政さんの言葉に政虎は頷く。
「はい、義父上。では皆、宜しく頼む」
「「「「「はっ!」」」」」
それから二日後、室町幕府将軍である足利義輝との謁見の時間になるまで、俺は政虎の側付きとして色々なところに付いていった。まぁ大体外で待たされていたが···
寝る場所は近衛前久さんの屋敷を借りることになったため、絶さんともゆっくり話す機会を持つことも出来た。
その一方で、政虎や憲政さんは忙しそうにしていた。恐らく、家や関東菅領の相続の手続きやら公家との付き合いだかなのだろうが。
そしてとうとう、公方足利義輝との謁見の時間となった。
政虎は憲政さん、景家さん、朝信さんを連れて出掛けていった。
俺、清胤、頼久、貞興兄は留守番である。清胤や頼久は兵の調練、貞興兄は町の様子を見に出掛けた。
というわけでポツンと近衛屋敷に残されたわけだが、絶さんが気を使ってくれたおかげで二人で庭を見ながらお茶タイムである。
「政虎様は今、足利義輝様とお会いになっておられるのですか?」
「えぇ···どうなってる事やら···」
政虎を心配しつつ、絶さんの淹れてくれた旨いお茶を飲む俺であった。




