第二十六話 絶
もう一人のヒロインが登場です。景虎が共に行動するヒロインならこのヒロインは家で待ってお帰りを言ってくれるヒロインです
弘治二年/西暦1556年
五日かけて俺達は越後から上洛をした。
兵を前もって借りていた宿に置き、待っていた使者に連れられてある屋敷に入る。
その入り口に入ると、もう一人が現れて、
「お待ちしておりました。長尾景虎様、上杉憲政様は私と共に前久様の元へ。配下の方々は部屋を用意してありますので、そちらでおくつろぎください」
というわけで二人と別れて俺を殿に廊下を歩く。
のんびりと周りを見ながら歩いていると、曲がり角のところで体の横に何かがぶつかった。その後ドンという音が鳴る。
「きゃっ!」
女性の声が聞こえ、その方向に目を向けると、着物を来た少女が倒れていた。
俺は急いでその娘に手を差し出す。
「すみません! 大丈夫ですか?」
「は、はい! 大丈夫でございますっ!」
おずおずと俺の手を握り返す少女。俺はゆっくりと立ち上がらせる。その身長は俺の首くらいだった。結構小柄だ。
立ち上がるのを確認し、俺は声を掛ける。
「いやぁ、慣れない場所で前の人を見失わないように歩いてたもので···」
「あの··もしかして、長尾様の配下の方でございますか?」
「え、えぇ。長尾景虎の側付きをしています。よく分かりましたね」
「以前より長尾の方々がいらっしゃることは話に聞いておりましたから···他の方々は?」
その言葉にはっと気がつき周りをみるがいつの間にか前にいたはずの皆の姿が見えなくなっていた。
あっちゃー···見失っちまったよ
「···どうやら先に行ってしまったみたいですね」
「恥ずかしながらそうなってしまいました」
その少女はクスクスと笑う。俺は照れくさくなって頭をかく。
「では私が部屋まで案内いたします。場所も知らされておりますから」
「あ、ありがとうございます! よろしくお願いします」
というわけで少女の後ろについて歩く。
「あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「ええ。俺の名前は松尾景亮といいます」
「松尾、景亮様···では私も。私は名を絶といいます」
「絶さんですね···よろしくお願いします」
それから色々な話をした。どうやら中々この屋敷の外には出してもらえないらしく、外の話を聞くのがとても面白いらしい。まるでお嬢様みたいだな···
暫く歩いていると、絶さんの足が一つの部屋の前で止まる。
どうやら部屋についたようで、絶さんが改めてこっちを向き直す。
中からは確かに貞興兄や定満さんの声が聞こえる。
「では松尾様。こちらが部屋になります」
「おっ、ありがとうございました!」
「では、失礼いたします」
そう言うと去っていった。俺はそれを見送ると、戸を開ける。
「おお景亮! どこ行ってたんだよ?」
貞興兄が気付き、近寄ってくる。
「迷子になってた」
「まったく···景亮は」
俺は頭を掻きながら話の輪に入った。
それから景虎が戻ってくるまで、世間話に花を咲かせた。




