第二十二話 上野家成と村上義清と大熊朝秀
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クロスオーバー作品である野央棺様の"分枝世界の戦国記譚"の方もぜひご覧ください!
大熊の謀反を聞いた俺達は急ぎ、兵を整えるために高梨領に向かう。
到着した頃にはほぼ支度は済んでおり、他にも山本寺、村上の兵も集結していた。
山本寺定長率いる山本寺勢は上杉の庶流で、越中に近いところで動きを見張る役目を持っているらしい。
一方の村上義清率いる村上勢は北信濃の独立勢力であったが、武田に敗北後越後を頼って家臣となったり、今は根知城の城主を任されている上、息子の一人国清が景虎の猶子となることにより、他から来たにも関わらず信頼厚い人物なのだそうだ。義清自身もこの待遇に満足し、感謝しているらしく忠義深いとのこと。家臣も勇将揃いであり、義清自身も長槍の使い手であるということで、こちらの中心兵力となる。
「景虎殿。我ら村上勢、一丸となり御身のために力尽くす所存。存分にお使いくだされ」
「感謝する義清殿。先陣は貴殿に任せる」
「承知。先陣をきるは武家の誉れ、景虎殿の期待に応えてみせましょうぞ!」
その言葉を聞いた家臣団は中から一人、前に出てきた。
上野家成。下平との領地争いをした、今回の騒動の引き金の一人である。
家成さんは景虎の前に平伏する。
「景虎様! 此度のこと、全て某が起こしたことによるものにございます。故に先陣を賜り、汚名を濯ぎたく思う所存! どうか某に先陣をお任せくだされ!」
「···そうか。では家成、お前に命ず。先陣を切る役目を果たし、大熊に勝利せよ」
家成さんは嬉しそうに顔を上げて答える。
「はっ! 必ずや!」
「では、義清殿と共にすぐ出立せよ。義清殿もよろしく頼む」
「はっ!」
「承知」
そう返事をし、二人は出ていった。
それを見送ると景虎は残っている兵に指示をだす。
「皆の者! 我らも戦支度が済み次第、家成と義清殿の後を追うぞ!」
「「「「「「おう!」」」」」」
家成さんと義清さんが出てから二刻過ぎ、俺達も移動を開始した。
一方その頃、春日山城も大熊謀反の知らせにより兵を集め、備えていた。
城にいるのは城主代理を務める猶子国清と、上杉憲政。そして常駐する家臣団だった。
「憲政殿。殿より帰還の知らせが届きました。このまま父上が率いる村上、高梨、山本寺の兵を率い、大熊討伐に向かうようです」
「おお! そうか···では我々もそれまで大熊の攻撃を耐え、目をこちらに向けておかねばな」
「しかし殿の居ない間に挙兵するとは···」
「大方景虎殿もそれが目的の一つであったのだろうよ···やはり後継は景虎殿でなくては···か。近衛殿に書も出さねばな」
「憲政殿?」
「何もない···ではこちらも駒帰に兵を進めるとしよう。獣を追い立て、網に入れるように···な。相手を城より誘いだそうぞ」
「はっ!」
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春日山の火急の備えにより、大熊朝秀の軍は春日山に前進できず、自らの領地の頸城郡箕冠城に戻らざるを得なかった。
箕冠城では、大将大熊朝秀が悔しそうに膝を叩く。
「何故だ!? 我々の挙兵は気付かれることなく進んでいたはずだ! 内通者か? まさか嵌められたか? くそっ···こうなれば長尾景虎が戻ってくる前に、春日山を攻め落とす···出陣だ! 我らが武勇あれば、難攻不落も軍神も何するものぞ!」
大熊朝秀は城を捨て、春日山を攻め落とす覚悟を決めると自ら先頭にたって城を出た。
策を張らずとも、大熊朝秀が城を出るのを見た憲政はこれ幸いと春日山に向かう道を塞ぐ動きを始める。
「後は景虎殿が戻るのを待つのみ···愚策を採った自らを恨むがよい。長尾、上杉の兵は野戦を得意とするのを忘れた謀反人、大熊朝秀よ。貴様にはすでに、越後の魂も居場所もないと知れ!」
しかし、春日山の勢いに押され、徐々に後退。
越中に押し出されるも、再度進行。駒帰に陣を構えた。




