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第二十一話 成功

 

 景虎を追いかけ、一部の家臣を除いた家臣団は馬を走らせる。


 義守が先行し、景虎の居場所を探ってくれる。


 その道中、政景さんが話しかけてきた。


「景亮。綾が言った事を覚えていてくれたこと、嬉しく思うぞ」


「当然の事をしたまでですよ」


「その調子でこれからも景虎を支えてくれ。綾も儂も期待している」


「はい···前から気になってたんですか、その期待って何に対してですか?」


「ん? ···いや、なに。精神的な支柱になること···だな」


 なんでどもるんですかね?


「今はそんなことよりも景虎を追うぞ」


 話を切られた。綾さんといい、政景さんといい、加藤といいなんか怪しいが、気にしていられない。景虎との約束を守るため、走り続ける。


 景虎を追って辿り着いたのは大和国の葛城山山麓にある吐田郷村というところだった。


 景虎はそこの小屋を借り、休んでいた。


 景虎を見つけると、全員で平伏し、代表して定満さんが話す。


「景虎様! ようやっと追い付きました。どうか越後に戻ってきてくだされ!」


「···追ってきたのか。なれど武士に二言なし」


 そう言って荷物をまとめ始める。おいおい···演技だよな?


「どうか! 我らを、越後を取りまとめられるのは殿しかおりませぬ!」


 来ていた家臣団の全員が床に頭をつけたまま決して動かない。


「景虎。俺達の、家臣の皆の誓いだ。これを見てほしい」


 俺は懐から血判上を取り出して見せる。


「これは···皆の血判か」


「あぁ。皆の思いを信じてほしい。頼む!」


「···この血判に誓えるか?」


「「「「「「はっ!」」」」」」


「······」


 景虎は黙り、数十秒いや数分間、沈黙が続く。


「···次はない。よいな?」


「「「「「「はっ!」」」」」」


「分かった···戻ろう。皆、これよりは一丸となり、私を支えてくれ」


 その言葉に全員が顔を上げ、もう一度平伏する。


「「「「「「はっ! 必ずや!」」」」」」


「皆越後への帰路の支度をせよ!」


「「「「「「おう!」」」」」」


 全員が世話しなく動き始める。その間に景虎が近寄ってきた。


「景亮、大義だった···追ってきてくれて、ありがとう」


「間に合って良かったよ。な? 信じてよかったろ?」


「フフッ、ああ。そなたのおかげだ。義守から聞いたぞ? なかなかによい啖呵だったと。そなたもやはり男子なのだな」


 義守ーーー!! ちょっと来るの遅いなと思ったらなにやってんだよ!?


 俺何言ったっけ?何か恥ずかしくなってきた!


「フフッ···ここまで思われているとは、悪くないものだな」


「···降参だよ。だから意地悪しないでくれ」


「駄目だ。当分は弄らせて貰うぞ」


「勘弁してくれ···」


 全く···にしても景虎が戻ってくるってのは分かっていたこととはいえ一安心だ。


「そういえば景虎。内通者はやっぱり大熊だったよ」


 その言葉に景虎は頷く。


「やはりか···さて、どう動くかな?」


「一応光育さんには言ってある···それに加藤も動いてるから、あっちが動けば分かると思うけど」


「そうか···朝秀だけ動くなんてことはあるまい。他の内通者か、それとも他の勢力か。今のところ見る限り内通はこれ以上ないだろうな。他の勢力で動きそうなのは···武田、蘆名、北条くらいか。今春日山はほぼ空の状態、動くなら今だろうな。というかそうさせたのだが···」


「春日山に残っている誰かが使いを出してくれるだろう。相手動くのを待ち、中と外とで敵軍を挟みこむ。」


「ここからなら普通に帰っても数日はかかりそうだし、途中の休みなしで向かう?」


「あぁ。高梨の所領まで行き、そこから春日山に向かう。蘆名勢に対しては安田、黒川で対処できるだろう。こちらは春日山に詰めた諸将と我らで対処する」



 準備をした俺達は大和国を後にし、越後に向かう道中、大熊朝秀の謀反と蘆名の越後侵略の知らせが加藤によってもたらされた。





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