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第十九話 出家

 

 俺が景虎と出家騒動で家中を纏めよう作戦を講じてから数日。

 景虎は酔って忘れた···なんて事はなく、出家作戦は始まった。


 俺と景虎は、景虎の師匠の一人であり、守護代長尾氏の菩提所の住職天室光育に会い協力を持ちかけると、快く引き受けてくれた。

 もし誰も追っかけてこなかったらの時のための書物を預けると、出家して高野山に向かうということを書いた書簡を加藤と義守さんに預け、俺が許可したら清胤に渡すよう伝える。


 俺らの説明に加藤と義守は、


「分かり申したが、いやはや面倒なことをなさいますなぁ。ま、頑張りなされ。折角の居心地よい仕官先が無くなっては拙者も困りますからな」


「···ただ殿と松尾殿の指示に従うのみ。戦場ではありませぬが、御武運を」


 と言ってくれた。いい部下を持ったもんだ。


 光育先生に別れを告げて城に戻る道を二人歩く。


「そなたにも将らにも随分迷惑をかけてしまうが、諸将を一つに束ね、紛れ込むか他の勢力と内通するものを炙り出すにはこれしかない。まぁ、そなたと逃避行も悪くはないが」


「それはホントの最後手段だから! あくまで将を纏めることが第一ね」


「フフッ、分かっている···信じているさ。そなたも、将らのことも」


「あぁ。任せといてよ」


「内通者は私が外に出れば動き出すだろう。気を付けておけ、これを知るのは私を含め数人しかいない。動けるのはそなたらだけだ」


「注意しておくよ。俺が何とかして皆を景虎を追うよう動かせばいいんだ」


 景虎は立ち止まる。


「これは賭けだ。ありとあらゆる物事が、かちりと嵌まらなければその隙間より瓦解していく」


 俺らの作戦のすべてがタイミング巧くいけば、一気に今の問題点を解決できる。

 ホント運頼み、神頼みってやつだな。


「あとで神様に頼んでおくよ···うまくいきますようにってね」


「なら私も毘沙門天に祈っておこう」


 それから数日。俺たちの作戦は静かに続いた。


 昼はこれまでと同じように行動する。夜は色んな人と話して、もし景虎が出ていったら追いかけてくれみたいなことを仄めかす。

 但し元から俺に親しくしてくれたり、景虎への忠誠心が高いと思った人にのみ。

 今表だって争ってる四人はもってのほか···内通者である確率が一番高い大熊さんに警戒心を与えないようにしなきゃいけないしな。


 そんなこんなで一週間ほど経つ。いよいよ景虎が家出をする日がきた。

 早朝、誰かにばれないようにこそこそと準備をする。


「じゃあ景虎、いってらっしゃい。数日後にね」


「あぁ、景亮。あとは頼んだぞ」


 その二日後、突如消えた景虎に城内は今まで以上にざわめく。

 そして俺は鳶加藤に許可を出した。その手紙に書かれていたことは直ぐ様諸将に通達されることになった。



 "国主景虎出奔。高野山にて出家す。後は義兄と上杉憲政に託す"



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