第一話 かくして少年は乱世に来たれり
天文ニ十四年/西暦1555年 越後 とある村 夜
俺、松尾景亮が目を覚ますと、古臭い藁葺きの天井が見えた。寝起きの頭で考えること数秒。口周りや体を布やら紐やらで縛られていることに気づく。
「あんあーほへ!」
どうなってんだこれ!? 体は自由効かないし! 知らない場所だし! ヤバイ、ヤバイってこれ! ボーッとしてただけなのにいつの間にかこれだよ! どうすんの?どうすんのよこれ!
「ん"~~~!ん"~~~!」バタバタッ ジタバタドタバタ
もがいていると、横に開く扉から鎧を着た男がドカドカと入ってきた。男は俺を睨み付け、
「うるせぇぞ!静かにしやがれ!」
「ふいはへふ!」
謝ってすぐに静かにすると、男は再度睨み付けてから、部屋を出ていった。
ビックリした~ 鎧着て刀持ってたよ!? 何あれコスプレ? んじゃここもそういうテーマパークってこと? しっかしリアルだったなーもしかしてなりきるタイプ? いや、と、取り敢えず落ち着こう···ふぅー。よし、落ち着いた。ってか驚きすぎると冷静になるってのは本当だったんだな~。さて、取り敢えず周囲を確認しよう。
周囲をぐるりと見渡してみると、古びた服を着たおっさんが2人、上半身を縛られた状態で部屋の隅っこで震えながら身を寄せあっていた。
そのうちの一人が声を掛けてくる。
「あ、あーんまあいつら怒らせんな? 殺されっかもしれんぞぉ」
「は、 はひあおーほはいはふ」
なんて人畜無害そうな人達だろう。さっきの鎧の人より優しそうだし、殺されるかもしれんぞなんて言ってたし、服装もぽいから捕らえられた村人役なのかな? ……いやいや現実を見ようよ!どう考えても役じゃなくて全部本物だろ!と、とりあえず色々話を聞いてみよう。
「はっひのひほは?」
「あ、ありゃこないだ謀反を起こした北条のもんだろうさ」
「あぁ、謀反を起こしてすぐ、殿様に城まで追い詰められて降参したとか」
「一部のもんは逃げたとか言っておったが、まさかこの村に来るなんて」
「わしらだけ逃げ遅れてしもうた」
そう言って溜め息をついた。
ってことはあいつらは逃げ延びた兵ってことか···謀反やら殿様やら話を聞いてると江戸時代とか戦国時代みたいだなー。
「へは、ほほあほほあんへふは?」
「なにいってるだ あんちゃん分からんのか? ここは越後国さ」
「へひお?」
越後? 越後ってことはさっきの殿様ってのは越後の国の殿様ってことかな? 年代聞かないと分かんないな。ってか一番重要なのはそこじゃないよな。取り敢えず聞いてみるか……
「ほえはあほえはひほうはんへふふぁへ?」
おっちゃんの一人が話そうとしたとき、遠くの方で大きな音が聞こえた。
金属がぶつかる音や悲鳴が聞こえる。
「あんあ?」
おっちゃん2人は腰を上げて扉の隙間から外を覗き、なにやらこそこそとやり取りをする。1分くらい密談したあと、こっちを済まなさそうに見つめ、縛られたままこそこそと扉を開け、忍び足で出るとゆっくりと扉を閉めた。
ただボーッと見てた俺はふと気が付く。
お、おい。あれ? 逃げた? あのおっちゃん達……下半身は自由だからって、スタコラと逃げたの?
「あんえおっはーーーーーーーー!!」
景亮の叫びは、誰の耳にも届かぬまま、真っ暗な空に消えていった。
主人公である松尾景亮はオタクですが、広く浅い知識しか持っていないため、間違った知識や勘違いが多くある····という設定です。なので間違っていても主人公に関しては生暖かい目で見守ってください。