第十七話 第二次川中島合戦終結
投稿が遅れて申し訳ございません! なかなか忙しく書くことが出来ませんでした。この休日中にできるだけ書き溜めします
天文ニ十四年/西暦1555年 十月
川中島の犀川で起こった第二川中島合戦は百日も経つと泥沼の体をなし、策とも呼べないほど単純な小競り合いの繰り返しとなっていた。
始まって三ヶ月ほどで敵の大将、武田晴信と馬場信房が陣入りし、攻めていた越後勢を押し返したのだ。それからはお互いが攻めては守りの繰り返し。
資材は補給出来るとはいえ、お互いの本拠地からはそれなりに離れており、大規模な戦は出来ない。
越後軍の兵の中にも余りの戦の長さにより動揺が走り、景虎は将全員に対し誓紙を出すことで、忠誠心を確かめるなどをしなければ支えられない戦線となっていた。
かなりのじり貧状態である。
今も現在進行形で睨み合いが続いている。兵たちの顔は疲労の色が濃い。
俺は景虎、定満さん、清胤と共に本陣にいた。
「結局こうなってしまったか···」
「やはり武田の大将の采配は敵ながらにさすがとしか言いようがありませぬな」
「弓兵、鉄砲隊が一番の厄介事。景亮と鳶加藤、伏嗅による荷駄への奇襲により、向こうの兵糧も苦しいはずですが···」
「向こうも偽の部隊を作って揺さぶってきたし···甲斐からの距離の方が遠いのが幸いって感じかな」
そんな感じで次の策について考えていると···
兵が一人、陣に飛び込んできた。
「景虎様! 上杉憲政様より使いの者が来ております。急ぎの知らせのようです!」
「通せ」
景虎がそう言うと兵は一度陣を出て、使者を連れてきた。
「それで、憲政様はなんと?」
「はっ! 春日山に、加賀を攻めていた朝倉衆から、知らせがあったためお伝えします! 朝倉宗滴殿、病により死去、加賀を攻めていた兵は越前へと退くとのこと!」
「ーなっ!」
「何だと! ···その後の状況は!?」
声を荒げ、狼狽える景虎。ここにいる誰もがその知らせに目を皿にする。
「加賀の一揆衆は盛り返した模様、今のところ他に動きは無いとの事です」
「不味いことになりましたな···」
定満さんが苦い顔をする。
「加賀が甲斐勢に呼応して越後に攻めてくる···などという可能性が出てきましたな」
「···立場を逆転された形になってしまいましたね」
「これが武田方に知られればまずいな」
これはかなりヤバイ状況ってことか···
誰もが考え込んでいたその時
「景虎様! 別のところからも使者が来ております!」
また別の兵が陣に入ってきた。
「今度はどこからだ!」
景虎が強い口調で問う。
「それが···今川の書状を持っていると···」
「今川? 駿河の治部大輔が今、何の用だ?」
「はっ!」
暫くすると、書状を持った男が陣に入ってきた。
「越後国主、長尾弾正少弼景虎殿。我が主君の今川治部大輔義元より書状を預かっております。こちらを」
そう言って地面に書状をおくと、清胤がその書を拾い景虎に渡した。
景虎は書状を見ると
「あいわかった。こちらはこの通りで構わない。今川の大将にそう告げよ」
「はっ! 確かに」
そう言うと、他の兵たちに連れられて陣を出ていった。
「何が書かれてあったの?」
俺が聞くと、景虎は書状をこちらに渡してくる。
その書状を広げると、のたくったミミズの様な字で何かが書かれてあった。
清胤と定満さんも覗きこむ。
「これは軍を退けという神のお告げであろうな」
「だから何て書いてあったの?」
その質問に、清胤が答える。
「甲斐、越後両軍は戦をやめるよう。その代わりに旭山城は破却、武田が奪っていた所領は元の領主に返す···」
「つまりはいい条件を付けるため和睦せよ···と」
「大方、武田のが今川に仲介を頼んだのであろう。こちらとしても丁度よい時であったからな···定満、全軍に通達! 戦闘をやめ、引き上げるぞ!」
「はっ!」
天文二十四年、今川義元の元、第二川中島合戦は和睦という形で幕を閉じた。
両軍はすぐに本拠地へと軍を引き上げ、景虎は加賀、川中島両方に改めて兵を出し、戦後処理を行った。