第十一話 策
景虎が思っていたよりヒロインぽくなっていて、自分で嬉しくなってます
「私に···私に力を、知恵を貸してほしい」
へっ? 俺に力を貸してほしいって···何のためにだろう? でも···
「···景虎。俺に何が出来るかわからないけど、手伝うし、知恵ならいくらでも貸すよ」
俺がこの人に出来る恩返しなんてこの位だろうから。
史実の長尾景虎は、戦上手で生涯で敗戦は片手で数えられるほどだとネットか何かで見たことがある。
そんな景虎に俺が何を言えるか、何を手伝えるかは分からない。
あぁ、そうか···綾さんの言ってたことはこれか···だったら···
「あんただったら間違えたりしない。思うままにやるといいよ。もし分からなかったりしたら俺が一緒に悩むからさ」
「フフッ···未来を知るそなたがそう言ってくれるか」
「俺に出来ることはやるよ。戦はできないけど」
「それは元々期待していない」
「あっそう」
「鍛えていないのは見て分かる」
まあ確かに鍛えてないけどさ···
「ってかとりあえず俺は何を手伝えばいいの?」
「犀川近くの善光寺あたりを統べる栗田が武田に降った。このままでは武田はより北へと進んでいくだろう。必ず止めなければならん。武田の援軍は既に近くの旭山城まで来て、栗田と合流したようだ。後詰めには晴信自身が出るとの話もある。私の考えでは恐らく百日は越える戦となるだろう。出来うる限り早く、戦を終わらせたいのだ。そのためにその知識を貸してほしい」
世に言う第二川中島合戦ってやつか。川を挟んで200日間にらみ合いが続いた。
景虎は強襲、信玄は銃と矢で応戦。たしか最後は和睦で終わったはずだけど···
「こっちはどうするつもり?」
「我らは旭山城を動けなくさせるため、その近くに新たな城を築くことに決めた。既に築城部隊は動き始めている。出来次第に我らも出陣し、旭山城を攻撃。その後、後詰めを直接叩く。後詰め部隊とは川を挟んでの戦になるだろうな。憂いなく晴信と戦うなら旭山城を後詰めが来る前に落とさなければならん」
成る程···取り敢えずは史実通りなのかな? この戦を引き分けから勝ちに持っていく方法は···
「川を使った水攻めなんて出来ないのかな? 土嚢積んで、水の流れる量を減らす。最初はその状態でこっちから攻めて、相手の陣地を一回奥に追いやる。その後わざと退却して川を挟んで挑発。相手が川を渡り始めたら土嚢を崩してわざと氾濫させる···みたいな」
「うーん···川に橋はなく、歩いて渡るしかない。されど犀川は支流も多く、急流ではあるが水攻めには向かないだろう。間違いなくこちらにも被害が出るだろうな」
「そっか···こっちの装備は?」
「槍と刀、騎馬部隊が中心だな。後は弓、鉄砲が数隊といったところだ」
「遠くから射たれてしまえばこっちが劣勢になるってこと?」
「今までの戦であれば機動力でなんとかできたが、これからは鉄砲の戦が主体となっていくだろう。越後は手に入れる方法も限られるし、私自身あまり好かん武具のため多くは用いていない」
「最悪睨み合ったら、後ろに回って挟み撃ちってのもあると思うけど···」
「身を隠せるよう、大雨が降ってくれさえすれば···だな。だが、川中島はよく水害が起こるようだ。氾濫してしまえば渡ることは出来まい」
うーん、中々難しい。景虎はどんどん策の抜け道を指摘してくる。
「兵糧攻めは?」
「確かに越後より甲斐の方が遠い。だが、それも僅かな差。晴信も分かっていよう。それに旭山城の兵糧を攻めたところで、後詰めか来てしまえば効果がなくなってしまう」
「そっちじゃなくて、忍びを使って···倉を壊すとか、盗むとか」
「伏嗅か···中西に聞かなければ分からないができるかもしれん。そういえば長野殿の推挙で加藤というものがいたな···あまりに怪しすぎてどうしようか迷っていたが···」
それって加藤段蔵!? 有能すぎて上杉、武田から追われた人じゃん! その人、欲しい!
「そ、その人なんだけど、俺の下につけてくれない!?」
景虎は俺の勢いに驚く。その後暫く考えると
「···分かった。景亮に預けよう」
「い、いいのか?」
「あぁ、あれもそなたと同じく、他国に渡らせてはいけない男だ」
「···俺ってそんなに危険人物?」
「それはそうだろう。もしそなたが別の者に仕え、その者がそなたのことを信じたとすれば、その者は全ての事を有利に進められる」
「俺にそこまでの知識はないけどね」
「何を言う。先の策、あそこまで出るのならば軍師となっても問題はないと思うぞ?」
あれは戦略シミュレーションゲームのおかげなんだけど···
「よし、決めた。伏嗅衆を景亮に貸そう。次の戦、前線は私が采配するゆえ、そなたは伏嗅衆を使って好きに動くといい。信じてるぞ、景亮」
「おう!」
んじゃ、まずはその加藤に会わなきゃな! あとは乗馬と剣の訓練、いっちょ頑張ってみますか!




