第百十五話 来客
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俺の発言に全員が此方を向いた。以前はその視線に緊張していたが、流石に慣れてきた。
「景亮、その方法とは?」
凜が皆の総意を代表して俺に聞いてくる。俺はそれに胸を張って答えた。
「簡単な話さ。武田の書状の通りにすればいい。武田と織田の指示通り、信濃まで兵を進めて海津の人達を保護し、信濃の城に兵を入れればいい。そうすれば織田の"武田を攻めよ"と、武田の"海津城にいる人々の保護"という二つを同時にできる。もし織田軍が海津目当てに攻めてきたら、"越後に攻めてくる別の豪族や国の軍と見間違えて攻撃してしまった"と言い訳すれば向こうも非難してこないでしょ。約束は守ってるわけだし」
全員が絶句していた。そんな中凜だけがニヤリと笑う。
「フフッ、確かに。それならば信濃は血を流さず越後の領地になり、織田からも文句は言われまい。この案に反対の者はいるか?」
反論は誰からも無かった。
「では、双方に書状を書かなくてはな···景亮、注意すべき点はあるか?」
「織田への返事には"上杉の領土に侵攻してきた場合は容赦なく攻撃すること"を書いておいた方がいいね。もしも織田が難癖つけてきた時のために文として残しておかないと。武田にはそのまま了解の返事をしていいよ」
「分かった。では景綱、景亮の言った通りに直ぐ様書状をまとめよ」
「はっ!」
凛と俺が書くことを考えて景綱さんがそれをまとめ仕立て、書状が出来上がると、使者を一人ずつ呼び出して手渡した。
武田の使者が書状を震えて持つのがやけに印象に残った。
さて、使者を見送ってから凜は直ぐに軍を纏めることを指示。凜率いる本隊は、海津目掛けて進軍することとなった。当然松尾衆も本隊に付いていく。向かう先は対武田の前線であった善光寺だ。
年を開けてから暫くして、とうとう出発の日を迎えた。
織田と武田がとうとうぶつかるという情報を得たため、前もって準備していた上杉軍は素早く出陣の支度ができた。
松尾屋敷の玄関で、俺と凜は身支度を済ませた。凜は既に武者鎧に身を包み、俺も絶から荷物を受け取って漸く準備完了。利益や段蔵ら松尾衆は既に屋敷の外で全ての支度を終え、待機している。
絶の抱く虎千代の頭を撫でる。少しの間見ることが出来ない二人の顔を目に焼き付ける。
「それでは絶、虎千代。行ってくる」
「凜様、旦那様、いってらっしゃいませ。武運長久をここより祈っております」
「あぁ。今回もまた無事に帰ってくるよ。虎千代の事、屋敷の事、宜しく頼んだ」
「はい。海津にいらっしゃる武田の方々と共に、無事御戻りください」
「勿論。じゃあ行ってきます!」
一度頭を下げて見送る絶を尻目に、俺と凜は屋敷を出発した。
善光寺は、何度も行われた川中島の戦いで上杉の前線基地として使われている。一時期は武田に付いたりもしたが、周囲の上杉の城と共に対武田、北条への壁となっている。
凜を中心とした将が軍議を行っている間、連れてきた松尾衆と伏嗅を総動員し、海津城ほか諜報の任務を与える。
「···武田と織田がぶつかり合うか」
「そこの方」
突然現れたのはこの場に不似合いな巫女のような装束を着た輝政よりも年上ぐらいの女性が現れた。
「越後国主、上杉輝政様のお側付き。松尾景亮様とお見受け致します」
「···そういう貴女は何処の誰だ?」
「武田家臣、望月千代と申します」
それは武田の諜報部隊"歩き巫女"の筆頭。望月千代女その人だった。




