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第百十四話 対蘆名終戦と書状

 

「主様、奇襲部隊無事壊滅させたとの事です。利益殿は新発田、北条と合流。加地様も戦線を押し上げております」


 月夜が持ってきたのは策成功の報せだった。


「やりましたね景亮様! これであとは敵本陣のみですね」


「あぁ。取り敢えずは一安心だよ」


「では加地殿に合流いたしましょう」


「あぁ」


 俺達が春綱さんと合流した頃には既に勝敗は決し、蘆名は退却。上杉軍も大手を振って安田城へと戻った。軍配は完全に上杉に上がったのだった。


 その夜、勝利の宴を開いた。主役は大将である加地春綱さんと副大将討った利益だ。俺は端っこで段蔵達と飲んでいた。


 途中高広さんと利益が大飲み勝負をして信能くんが諌めたり、段蔵が芸を披露したりして大いに盛り上った。


 そしてその次の日に安田城から春日山へと帰還を果たした。


 到着してすぐ凜に呼ばれ、将全員で評定の間に向かうと、そこには凜以外にも主だった将勢揃いしていた。


「加地、新発田、北条、宇佐美、竹俣、山吉、本庄、岩井、松尾および配下の兵。只今戻りました」


 全員が凜の前に座る。


「皆苦労であった。勝利の報は既に聞いている···本当に良くやってくれた」


「「「「はっ!!」」」」


 凜の前に並ぶ将全員が平伏する。


「利益、春綱もよく敵将を討ち取った。後々褒美を与えよう。また、利益を信じていなかった者についてもこれで認めよう。景亮の元、上杉に力を貸してくれ」


「「はっ!」」


「···それでは先の話に戻る。今戻ってきた将らに分かるよう最初から話す」


 全員が姿勢を正す。


「大体の者には伝えたが、織田と武田から書状が来た。双方とも使者はそれぞれ離れた場所で返事を待ってもらっている。ここからは皆初めて聞くだろうが冷静に聞け」


 なんと!? このタイミングで書状なんて用件は一体なんなんだ?


「織田の用件はこうだ。"東夷武田大将武田信玄既に死せり。これを機と見て武田を滅ぼさん。長年武田と敵対する上杉も、我等と呼応して武田を攻め立てよ。さすれば越後、越中、信濃の地は上杉の領土として安堵せん。織田権大納言"」


「安堵せんなど···ふざけおって!」

「織田は天下でも取ったつもりか!?」


 評定の間がざわつく。そりゃそうだ織田は完全に上から目線で命令されたようなものだもの。


「静まれ! 次に武田の書状だが、"長年偉大なる御館様と争ってきた上杉輝政殿に、その慈悲深き人柄を頼ってお願いしたきことがありまする。海津城の高坂と我が妹菊の身を預かっていただきたい。その変わりとして武田が滅んだ暁には海津城を含めた信濃全てを上杉にお譲りいたす。何卒、宜しくお願い申し上げまする。武田四郎勝頼"」


 武田からの書状が読み上げられても評定の間は静かなままだった。


「···また一人、乱世を駆けた英雄が死んだか。武田信玄···私とは戦への考え方で相容れなかったが、民や将兵の多くに慕われた大器の雄であった」


 そう目を閉じて呟く凜に一部の将が進言する。


「輝政様、今こそ武田を攻める好機です!」

「織田の書状の通り、武田を攻めましょうぞ!」

「ここで動かなければ、織田に我々へ攻撃する理由となりましょう!」


 やはり長年武田と争っていたため、武田を攻めようと進言する将は多い。

 家臣の中には岩井や村上、高梨など武田に領地を追われた家は多いので然もありなん。だが、


「織田に従い攻めるつもりも、最早風前の灯火たる武田に止めを指すつもりも毛頭ない」


 凜は首を頑として縦に振らない。武田を攻める気がない凛と、武田に遺恨がある将とで揉め始めた。このままでは信濃衆が飛び出して行きかねない。そこで、


「ほぼ全てを解決できる方法があるよ」


 そう双方に提示することにした。



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