第百十三話 対蘆名その三
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前田利益視点
俺の目の前で陣が爆破された。ということは段蔵が敵の奇襲を確認したということだ。
(ここまでは旦那の思った通りか···さてさて、次も旦那の思った通りこっちにゃ来るだろうか)
蘆名本陣には新発田、北条などの軍。蘆名奇襲部隊には俺と加地の大将の軍が爆破を合図に攻勢に出る。
すると、燃え上がる陣から数騎飛び出して来た。旗は蘆名の旗だ。
「ようやくお出座しかィ···あの爆破で一人として生き残っていないんじゃないかと思ったが、まァ出番があるようでよかったよかった」
「貴様! 織田の前田利益!? 何故我等と親交のある織田の将が上杉に味方する!?」
「俺は織田を出奔して、今は上杉配下よ···知らなくとも無理はないがな。先日あんたらの副大将を討ったはこの俺よ」
慶徳範重を討ち取ったことを伝えると、全員が武器を構える。先頭にいたおそらく奇襲部隊を率いていた将であろう男が激昂する。
「貴様が範重殿を···! 貴様を討ち取り、範重殿と散っていった兵にその首を捧げてやろうぞ!! 蘆名家臣長沼盛秀、いざ勝負!!」
「おォさ、来いや! 前田慶次郎利益、推して参る! 全員まとめて掛かってこい!」
その決着は直ぐについた。
「···おのれぇ。この様な策で、上杉の策、卑劣なり···」
長沼盛秀は肩で息をし、膝をつく。既に蘆名の奇襲部隊は長沼盛秀を残して兵は地に倒れ、周囲は上杉軍に囲まれている。
憎々しそうに、長沼盛秀の口から漏れる憎悪の言葉を俺は鼻で笑う。
「はっ···これが卑劣? 冗談言うな。戦に卑怯も卑劣もあるものか」
「何ぃ···」
「お前達も兵糧を攻めてきただろうに···全く。単純な」
「貴様! 我等を愚弄するか!? おのれぇぇぇぇえ!!」
「利益殿、上手くいきましたな」
加地の大将が俺の横に並ぶ。
「長沼盛秀、既に勝敗は決した。降伏なされるがよろしいでしょう」
「我等蘆名、例え地に伏せ戦場に散ろうとも、貴様等上杉に降伏することなどあり得ぬ!」
唾を撒き散らし叫ぶ長沼盛秀。その心は見事である、が···
「そうか···では切腹なされよ。この加地春綱、介錯つかまつる」
「切腹など···するものか。一人でも多く道連れにしてくれるわ!!」
落ちていた刀を握りしめ二本の刀を振りかざして立ち向かってくる。
「加地殿、如何しますかな?」
「···私が出よう。利益殿は敵本陣を攻めんとする長敦や高広殿の元へ向かわれよ」
「では、遠慮なく」
俺は松風に跨がり、踵を返し蘆名本陣へ向かう。背後では勝鬨が聞こえていた。
「敵将長沼盛秀、上杉家臣加地春綱が討ち取ったり!」
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