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幕間 姦ましい

新たに出てきた名前は全員オリジナルです。史実の名前、性格などではないことを前提にお読みください

 春日山城下松尾屋敷 輝政視点


 戦に向かう景亮を見送ってから二日後。絶と虎千代の様子を見に松尾屋敷に戻ると、絶の休んでいる部屋から複数人の声が聞こえた。絶は珍しい者達と雑談に花を咲かせていた。


「輝政様!」


「あら輝政、良いところに来ました。貴女も座りなさいな」


 姉上様の言葉に従い絶の横に座る。


「姉上様···いらしていたのですね」


「えぇ。虎千代と絶の様子を見に」


「それにしてもこうして集まるのも珍しいことですね」


 絶の言葉通り、ここに居るのは絶、姉上様、華、貞興の妻"蘭"、清胤の妻"千和"、頼久の妻"智代"の六人。私の家族以外は景亮が最も行動を共にする事が多い者の妻が集まっている。


 何故私の家族ではない三人が居るかと言うと、この三人は虎千代の乳母、世話役を自ら進んで務めてくれているのだ。景亮はなるべくなら自分達で育てたい(おそらくそれが景亮のいた時代の常識なのだろう)と言っていたが、私は当然のこと、絶も近衛の娘として、松尾の屋敷を預かる者としてやるべきことがある。それに絶はまだ子を生んだばかりで無理はさせられない。ゆえにこうして三人が見てくれることは有難い。


 なお、小島家には男女、千坂家には男二人、小国家には男一人の子供がいる。


「ところで輝政、貴女は一体いつ景亮との子を作るのです?」


「うっ···」


「御前様の仰る通りですよ輝政様、上杉の家にははっきりとした世継ぎがいないのですから」


 耳にタコができるほど聞いた言葉だ。確かに上杉当主として世継ぎを産むことも重要な責務であることは私自身も分かっている···分かってはいるが、そう簡単に授かれるようなものではない。それも当然男児をもうけることを望まれる。


 女で妻で国主であるというのも中々に大変なものだ···。


「貞興や清胤、頼久は家ではどうなのだ?」


 よく思えば、家臣らの家での生活など聞いたことがあまりなかった。

 私の質問に最初に答えたのは貞興の妻である蘭だった。


「貞興様は今は子に刀を教えるなどしておりますが、赤子の頃などはそれはもう触れる度に困ったような顔をされてました」


 そう笑いながら、嬉しそうに話す。


「私の家は長男太郎左衛門は病弱で、次郎丸は少し悪戯がすぎる子ですから···」


「頼久様は貞興様と同じ様なものです。あの方は外面は細いですが、武に生きる方ですし、恐らく父親というのはそういうものなのでしょうね」


 そう言って三人顔を合わせて笑う。


「それに比べれば景亮様は虎千代様を大変可愛がられておりますよ」


「そうですね···少々慌てた所や構いたがりな所はありますが」


 絶が苦笑いする。


 私ももし子が生まれたら景亮のようになるのだろうか? 子に暑苦しいと思われるようなことだけはしないようにしよう···


「フフッ、殿方はお家のために力を尽くしてくださっているのです。それを支えるのは妻の、女の役目。子を育てるのもまた。蘭、千和、智代···貴女達の子は上杉を支える枝木。しっかり育て、教えなさい。もし何か困ったことがあればこの綾に遠慮なく言いなさい。力になりましょう。もしあまりに悪戯な子ならば···」


 姉上様の目が怪しく光る。


「私自ら、その子に"義"とはなんたるかを教えましょう」


 その後も色々な話に興じる姉上様達を見ながら、


(こういうのもたまには悪くない···か)


 そう思うのだった。



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