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第百八話 利益会議

 

 俺達が案内されたのは評定の前だった。上座には凜。周囲には囲うように家臣が並び、利益のことを見ている。


「来たか二人共···皆聞けぃ! この者がこれより我が夫の与力となる前田慶次郎利益だ。利益、名乗れ」


「はっ、では···織田より出奔し、越後に流れて来もうした。前田慶次郎利益にござる。これよりは皆々様と共に越後の主柱を守り、この地に骨を埋める所存。何卒よろしくお願い申し上げまする!」


 利益は一度頭を下げると、部屋の外にも響くような大声で名乗った。


「と、いうわけだ。納得のいかぬ者はいるか?」


 凜の言葉に反応したのは筆頭家老として凜を支える景綱さんだった。


「輝政様、その者は織田家臣であり、先の手取川にて景亮殿に槍を向け、輝政様と一騎討ちをしていた男でありましょう」


 景綱さんが、手取川で凜と利益が一騎討ちしていたことを告げると、将らがざわざわしだした。凜と利益が対峙したことはそこまで広く伝わっていなかったようだ。中には立ち上がって利益に問い質そうとするものもいた。


「皆静まれ!」


 凜が制すると一瞬で静かになり、立ち上がった人達も座った。


「確かに利益は景亮に槍を向け、私と打ち合った。その際に景亮が利益を勧誘し、利益はそれに従ってここに来たのだ」


 俺と凜が勧誘したことを言うと、流石に納得せざるを得なかったのか景綱さんも仕方がないというような顔をする。


「俺と段蔵が見ているし、信用ならないってんなら義守に見張らせる」


「フフッ、景亮が初めてここに来たときも似たようなやり取りがあったな···まさか今回は駄目というような事はあるまいな?」


 そういえば俺が最初にここに来たときは定満さんが同じことを言って、義守さんが見張り役をしたんだよな···途中から見張りの役割無くなってたっぽいけど。


「はぁ···分かりました。前田殿、輝政様と景亮の信頼、もし裏切るような事があれば我らが貴殿を必ずや討伐する。努々忘れずにいただきたい」


「あァ、我が主君より賜りしこの戟に誓って。次の戦、例え織田との戦でも必ずや主君を守護し、将の首を獲って忠義忠節をお見せしよう」


 そう言って俺が与えた蚩尤天戟を顔の前に掲げ持つ。


 その堂々とした姿勢は誰も文句を言えないような雰囲気を纏っていた。


「ではその忠義忠節、早速示してもらおう。此度ここに家臣一同揃っているのは利益と顔を合わせるためだけではないのだ。蘆名が越後に進軍を開始したという情報が入った。景亮、松尾衆を連れ長敦、高広と共に蘆名の侵入を阻め」


 それを聞いた瞬間、利益の目が輝いたような気がした。



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