第百七話 顔合わせ
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屋敷に着いた俺達はすぐに松尾衆(義守さん以外)を呼び集めた。
「我が名は前田慶次郎利益。これより松尾景亮殿の配下となり申す。何卒よろしくお願い申し上げまする」
「松尾衆筆頭···のような物を勤めております加藤段蔵にございます。これよりは共に主を支えていきましょうぞ」
「加藤段蔵の弟子、弥彦にございます」
「同じく、月夜にございます」
というわけで松尾衆と利益の顔合わせは何事もなく終えた。
段蔵と弥彦と利益は息があったのか、俺を抜きにしても話が続いていた。
「そういえば月夜、利益の部屋についてなんだけど···」
「それに関しては問題なく。既に部屋一つを空けるよう女中に申し付けてあります。無論生活に必要な物も一通り揃えるように伝えております」
「そっか、ありがとう」
感謝を述べると月夜は照れながらも嬉しそうに口の端を吊り上げた。
その頃利益と段蔵の話は一段落し、次の話へと移っていた。
「ところで利益殿。お願いしたきことがあるのですが、宜しいですかな?」
「おゥさ、俺にできることであればいくらでも引き受けよう」
「拙者、松尾衆で最も年をとっているゆえ衆の筆頭のようなことをしておりますが、あくまでも忍び。今まで主には忍び、それもたった四人の配下しかおりませんでした。主の手足となって働くことはできますが、評定や戦場などについては主の側に付くことはできませぬ。主は上杉輝政様の夫として護衛してくれる者も必要。故に利益殿には評定や軍議、戦場にて主の側に付く役目をお願いしたく」
確かに、今まで段蔵達は忍びだからって軍議や戦の途中は俺の側ではなく諜報やら伝達やらに行ってもらってたな。俺の役目が凜の側付きだから配下がいらなかったってのもあったけど。
「確かにその通りだな···利益、頼めるか?」
「あァ、いいぜ。総大将もそのつもりで俺を旦那の配下に加えただろうからな···しっかし旦那、本当に将どころか足軽や小姓さえも仕えてないんだな」
「さっきも言ったように俺はそんな家の出じゃないからな···今までそんなに必要なかったし」
「しっかしこれからはそんなことも言ってられないかもしれねェぜ? なんたってあんたは総大将の夫。総大将の代わりに大将として戦場に赴く可能性だってあらァ。そうさな···最低でももう数人は欲しいところだ」
もう数人ね···そんな好き者いるといいけど。
暫く松尾衆の皆と話をしていると、部屋の外から足音が聞こえた。
「景亮様、輝政様がお呼びでございます。城までお越しくだされ」
声の正体は義守さんだった。
「あぁ、いいけど···」
何の用だろう? 呼ぶくらいだから急用だと思うけど···。
「利益殿も連れて入城せよとの命です。皆様お待ちでございます」
皆様ぁ? 待っているのは凜だけじゃないってことか。
「了解。すぐ行くよ···利益、悪いけど話はここまで。行くよ」
「おゥさ! さてさて、一体何だろうなァ? 早速戦仕事かねェ?」
俺はわくわくする利益を引き連れて春日山城へと向かった。
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