第百五話 須藤惣兵衛元直について
無事俺の配下になることが確定した利益に織田について色々聞いてみることにした。
「おォ、新たな主君に手土産の一つもなかったからな。これが土産代わりになるんならいくらでも話そう。そうさなァ···旦那は何が知りてぇんだ?」
そう聞いてくる利益。
「まずは織田の支配が回っている地域がどのくらいになるか、教えてくれる?」
「おゥさ、まずは本拠地尾張に道三から譲り受けた美濃に公方を追いやって手に入れた京。他にも大和、阿波、伊予、越前、備前、摂津、伊賀甲賀。他にもあるが···同盟に徳川と長宗我部。今川とは物資のやりとりをしている」
もうそこまで支配地域が広がってるのか···。
「確かに武に優れ、大軍であることが織田を今の強さにしているが、やはり軍監衆の力があってこそだろうなァ」
「やっぱり出てきたか···」
「軍監衆ってェのは織田信長と須藤惣兵衛によって構想された軍の采配をする集団のことだ。長は"軍監"竹中半兵衛、その補佐として"軍監補"黒田官兵衛、調略諜報など裏仕事をこなす"軍監衆"須藤惣兵衛の織田三兵衛を中心とした知恵者で構成されている」
「その須藤惣兵衛ってのは以前七尾城に使者として細川と共に来た男だよな···」
段蔵からある程度の情報は聞いているが、史実元織田にいた利益に聞いた方が確かだ。
「おォよ、織田信長の事を唯一呼び捨てで呼べる男よ。あの御仁は田楽狭間の頃織田軍に入り、二兵衛を推挙し、松永弾正と摂津に裏切った振りをして中から織田を支援。雑賀や伊賀甲賀の忍びの調略を行い、軍監であると共に信長の子や森の子に文武を教えるなど、表には中々出ねェが働きっぷりは織田軍の中でも抜きん出ているかもしれねェ。二兵衛には軍略で劣り、武芸に関しても織田軍の中ではまぁまぁと言ったところだ···が、物事の先を見る目は軍の中でも抜きん出ているように俺は思う。まぁとにかく信長からの信の篤い御仁よ」
はぁー···あの人そんなにすごい人だったんだ。信長の信頼を勝ち取るなんてすげぇなー。まぁ話を聞く限り所々"ブラック臭"がするのは気のせいだろうか。
「ま、今元直は鉄砲隊や忍びを率いての奇襲が得意な奴でな···そんなに話す機会は無かったが、気が合うかはともかく戦の考え方はまさに織田の、信長のそれよ。それに松永弾正や細川与一郎殿とよくつるんでるから、俺ぁその三人の事を"織田の三奇人"って影で呼んでるぜ。もしこの三人の内二人でも一緒にいたら気を付けた方がいい···っと織田軍についてはこんなもんかねェ?」
「あぁ、ありがとう。ついでなんだけど、これから織田軍はどう動くと思う?」
「今は安芸の毛利に兵を割いているから何かしらの動きが無い限りは毛利攻めがは続くだろうねェ···」
「利益、もし甲斐の虎武田信玄が倒れたとしたら···織田はどう動く?」
凜の言葉に利益はピクリと反応する。
「そりゃあ···間違いなく武田を潰しに掛かるだろうさ。武田は信長が天下を取る上で壊さなければならない壁の一つ。典厩、道鬼斎、赤備え···甲斐の虎を支える者が減った上、その虎までも居なくなったとなれば絶好の機会。討ち滅ぼさんと大軍でもって武田を倒すだろう」
「そうか···以下に天下に轟く武田騎馬でも」
凜が喋っている途中、突然部屋の外から兵士の声が聞こえた。
「輝政様! お耳に入れたい事が」
「入れ···何事だ?」
凜の許可を得て入室してきた兵は一度頭を下げると、驚くべきことを告げた。
「武田信玄が死んだとの噂が広がっているとの情報が!」
「「何っ!?」」
俺らが驚く一方、利益は泥大根を齧りながら俺と凜に告げる。
「戦乱の世が動き始めたか···旦那ァ、総大将、こいつぁ楽しくなってきたねェ!」




