第百二話 新婚旅行終了
さて、越中から越後へと戻った俺達は関東側から貝掛の湯を経由して三日使って春日山へと帰郷した。
凜の代わりに勤めていた定満さんは苦笑い。影武者を勤めていた荒川長実さんは俺達が姿を見せると安心した顔で大きなため息をついた。景綱さんが立ち上がって俺達を迎える。
「殿! 戻られたのですね!」
「景綱、政を任せてしまってすまなかった。長実も、影武者役苦労。定満も折角隠居したというのに私達の我が儘で呼び戻してすまなかったな」
「はっ! 無事の帰還、何よりでございます!」
「いえいえ、随分楽しまれてきたようで」
「周囲の動きはどうだ? 何か変わったか?」
ここを出たときは北条、伊達と揉み合っていたはずだ。武田は織田に敗北して以来動きが全く見えず、海津城主高坂昌信や信濃に先兵としてに構える真田幸隆も打ち出てきたり戦を起こす様子もない。一方の北条は相も変わらず。織田に呼応するように攻撃を仕掛けてきた伊達は北条さん達が対応しているはずだ。
「はっ···まず伊達に関しては一度落ち着きました。織田との和睦の文を送ったことが功をそうしたようです。未だに布陣させてはいますが。そして武田に関しても未だに動きはありませぬ。やはり織田との戦からの国力と兵力の回復に専念しているようです。伏嗅からは武田信玄が床に伏せてるという情報も上がっておりますし、暫くは動かないでしょう。今懸念すべきは関東の北条かと」
「そうか···では北条への警戒は継続。伊達は一部を残して戻ってこさせよ。長実は暫く休むがいい」
「はっ! 心遣いありがとうございます!」
一度頭を下げて長実さんは退出した。
「では景亮、絶。私はこのまま政務に入る。護衛をしてくれていた段蔵達に礼を言っておいてくれ」
「了解。それじゃまた後で!」
というわけで絶を連れて屋敷に帰る。
屋敷には既に段蔵達が戻って来ていた。
「おぉ、春日山より戻られましたか」
「みんなご苦労様! ずっと付いてきてくれてありがとうね」
「ありがとうございました。皆様のおかげで旦那様、凜様との旅を楽しむことが出来ました」
「弥彦を坂戸へと送り、無事到着したことを報告しております。後に三方で顔を見せに行くのがよろしいでしょうな」
「それは勿論。今回の温泉旅行は綾さんが気を回してくれたおかげだからね」
「なぁにこちらも中々に面白き旅でありましたからな~。弥彦も月夜にとってもいい刺激となりましょう。それに越中にて越前や畿内の情報もそれなりに手に入れましたし。二人共最早教えることはなさそうですな」
「そっか···」
段蔵は空を見上げ呟く。
「そろそろ拙者も···」
「どうかしたか? そろそろ何だよ?」
「いやいや何もありませぬ。さぁて、道具の整備でもやりますかなー。月夜、お前も手伝え」
「はっ! では主様、失礼致します」
段蔵ははぐらかすと、月夜を連れて自分の部屋に戻っていった。
段蔵が何を考えていたのかは気になるが、何はともあれ新婚旅行は成功に終わったのだった。




