第九十八話 家の重責
タイトルとは違ってのんびりした話です。
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関山の湯から宿に戻ってきた俺達は河原の湯、黄金の湯に向かうのは明日と決め、飯を食ってゆっくりすることにした。折角の湯巡り旅行だ。のんびりと行こう。
さて、部屋に入った俺達は暫く関山の湯の話をしていたが、何時しか最近春日山城下で話されている世間話についてに移った。それは凜の一言から始まった。
「そう言えば二人共、城下で話されている"上杉七飛将"を知っているか?」
「上杉七飛将? 何それ?」
"上杉四天王"と"七手組"は有名だ。しかし"七飛将"など聞いたことない。
「私、聞き覚えがあります! 確かここ数年で頭角を現し、上杉の中枢を担うことになるであろう若き七人の将を総称した呼び名であるとか」
「ふぅ~ん···誰が入ってるの?」
「あぁ、聞いた話ではまず七手組大将も務める新発田長敦、上杉の鬼と称される猛将小島貞興、修理亮と兵庫頭を務める小国頼久、上杉四家老の家の出で本陣警護を務める千坂清胤、川中島にて典厩を討ち取った我が猶子山浦国清、召し抱えられてすぐ魚津城にて越中畿内方面を任せた河田長親」
ふむ成る程ね···確かに勇将揃いだな。それで?
「あともう一人は?」
俺の問いに凛と絶が顔を見合わせ声を上げて笑う。
「ははっ! そなただ、景亮。越中平定、古河御所攻めなどの戦功を上げ、私と絶の夫であるそなたもそれに数えられているのだ」
「へっ?」
マジで!? 大したことはしていないつもりだったんだけど···
「旦那様が越後の皆様からも認められ、妻として誇らしいです!」
何だか照れるが、認められるのはやっぱり嬉しい。
「世代交代も徐々に進み始めている。卯松や与六が成人した頃にはどう移っているだろうな···」
世代交代ね···。
「そういえば凛。お前後継ぎとかもう考えてあるの?」
史実の上杉は、謙信が後継ぎを言い残さず急死したことで、甥であり養子であった上杉景勝と、北条からの養子であり華ちゃんと婚姻することになる上杉景虎との間で内乱が起こる。幾人もの将を失うこの内乱は避けなければならない物の一つだ。
「未だ決めてはいない。もし男子が生まれれば後継ぎの最有力となるだろうが···」
そう言って凛は盃を煽る。 何やら聞き逃してはいけない言葉が飛び出た。
「生まれればって···もしかして」
「なんだ? 私と子をもうけるのは嫌か?」
「いや! そうじゃないんだけど···」
「そなたには上杉と近衛、そして松尾の後継ぎを私達の間に作って貰わねばならない。責任重大だぞ?」
意地の悪い笑みを浮かべる凛。絶も口には出さないものの期待するような視線を俺に向けてくる。
「は···はははははは······頑張ります」
「姉上様からも催促されているしな。姉上様はどうやら私と絶が生んだ子に勉学を教えるのが今のところの夢らしいぞ?」
「私も兄上様に甥子の顔を見せ、安心させたいですし」
「さ、さぁ! そろそろ寝ようかなー!!」
話を切り上げ、飯の最中に敷いておいてもらった布団のある部屋への戸を開ける。
そこには何故か二人分の布団しか敷いていなかった。しかもくっつけてある。
「あぁ、それは私がお願いしておきました」
絶が何食わぬ顔でそう告げる。キランと目が光ったような気がした。
俺は何時の間にやら色んな期待を背負っていた。改めてそう思わされた夜だった。




