第九話 景虎の在り方
景虎と共に部屋に戻ってきた。
「はー、なんか疲れたよ」
俺は床に座り込む。体の疲れというよりは、精神的に疲れた。
景虎の方は自分の机の前に座る。
「で、あろうな。しかし姉上様もいい時に来てくだされた」
「そういや、あの人って景虎の姉さんなんだっけ···」
笑いかたとか雰囲気とかやっぱり似てるんだなー
「姉様の名前は綾。私の···守護代長尾家の当主である私の姉であり、上田長尾氏の当主にして私の遠縁に当たる政景義兄上に嫁ぎ、義兄上とともに後ろ楯となってくれている」
「それにしてもかなり強そうな人だったな」
「ああ、姉様には幼い頃から誰も逆らえなくてな···時に優しく、厳しく我ら兄妹を導いてくれた。父上や兄上が亡くなり長尾を継ぐことになった私を支え続けてくれた」
そうなのか···ってかさっき守護代って言ったよな?
「景虎は守護代の家出身なの?」
「元々私の生家は上杉家のもと、越後の守護代を努めていてな。父上、兄上が皆死に、以降私が役目を負っている。それに守護であった上杉定実様が亡くなり、守護を継ぐものがいなかったため、公方様より守護を仰せつかっている訳だ。大半が父である為景が、定実様より1つ前の守護であった房能様を殺害し、越後を乱したせいなのだが···」
父親が下剋上の体現者か···なんか裏切りとかが多かったってのもそのせいなのかな?
「だが私は父上のようにならん。私に付いてきてくれる諸将や兵、民のために···弱きを守り、義を貫く。私はそうあるべきなのだ!」
そう言ったあと、景虎は机を1回強く叩いた。
「···すまない。熱くなった」
俺はなにも言えなかった。景虎の背負うものの大きさが見えたような気がした。
景虎は深呼吸すると話を続ける。
「今はやらねばならないことがある。越中の平定、先も手を出してきた甲斐の武田、上野国を攻めんとする相模の北条···最上や蘆名も警戒せねば···」
景虎さーん、ちょっと待ってくれる? 話が全然追いつかないよ
「景虎、ちょっと紙と筆をもらえる?」
「何をするかは分からんが···いいぞ」
俺は景虎から貰った紙に簡単な日本地図を描く。
そこに分かる名字を記入していく。織田、徳川、北条、武田、伊達、朝倉、浅井、中国地方の毛利、四国の長宗我部、九州の島津と大友そして長尾。
「これは···もしや日の本か?」
「あぁ、俺の記憶が正しければこんなかんじだと思うけど、どう?」
驚きの顔を見せていた景虎は、徐々に笑みを浮かべていく。
「ほう···世はこう動いていく、か」
しまった! どうやら俺の覚えていた地図はこの年代と合っていなかったようだ。ってか地図もあるのかどうか···
「フフッ、またそなたとの隠し事ができてしまったな」
意地悪そうな笑みでこっちを見る。
「しかし、そなたの知識はやはり惜しい、側付きにすると言っておいて正解だったな。おもしろくなりそうだ···」
「お、お手柔らかに~」
笑みを崩さない景虎に、俺はそう言うことしか出来ないのだった。




