表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

いじめ用セルフ空間発生装置

時は少しだけ未来

魔法文明の発展した平行世界にて…


その世界でもある中学校のいじめは「学生たちへの一斉聞き取り調査」を「嘘を見破る魔法を同時利用」することによってほぼ駆逐された。

その一方で、いじめの衝動に駆られた学生は、学校の外か誰もいない場所を見つけて行うようになっていった。

嘘がつかれない中で、人目があれば即アウトだからだ。


そんな時代の流れの中で、新たな技術が開発された


それが「セルフ空間発生装置」である。


発動すると、自分を中心に半径2m圏内の人間を「外部の知覚から外す」という効果を持った技術だ。


本来は潜入用に作られた軍事技術だが、何故かいち学生が手持ちの権力と裏のルートを利用して入手していた。


こんな技術を入手すれば

周囲の迷惑考えず欲望を満たすために使おうとするのが「ガキの発想」


いじめが好きすぎて暴力癖のある巨漢学生「高末」は、教室で体型が小さい「小江田」という学生を狙い、この装置を使うことを決めた。


高末は早速、休み時間中に小江田の座る机に行くと、いきなり小江田の胸ぐらを掴んで教室の後ろ側に移動する。


この高末、先日、別の人をいじめていたために通報されて酷い目に遭ったにもかかわらず、反省するどころか「どうやってバレないようにイジメをしようか」と1ヶ月近くも考えていた。


そんな奴が誰かを堂々と殴れるという状況を与えられては

その衝動を抑えることなど出来るわけがなかった。


興奮して顔を真っ赤にした高末は、大声で威圧的に「おまえ、顔が気にくわないんだよ!殴らせろ!」と小江田を脅すが、装置の効果があるためか、周囲は効果範囲内の2人の状態を知覚できない。


装置の効果は先日、近所のうるさいネコを捕まえ、警察署の警官の目の前で殴り殺した事をとがめられなかったことで実証済みだ。


周囲がこちらに全く反応しないことを確認すると、高末は「歯ぁくいしばれや!」とチンピラまがいの脅しを言いつつ、右手で小江田の横っ面を思いっきり殴った。


不条理な暴力に吹っ飛ばされ、教室後ろにある掃除箱にぶつかる小江田。

ドバーンという音が教室中に響き渡り、周囲が一斉に振り返った


だが…


「なんだよ小江田か」

「いきなり転けるなよw」

「なにしてんだ?大丈夫か?w」


と、吹っ飛ばされて範囲外に行った小江田だけが認識され、暴力を振るった高末は知覚外にあったため、周囲は小江田が勝手に転けた物と認識した。

小江田が必死に「高末に殴られた」と訴えるも、「何言ってるんだ」と言われる始末だ。


(これはいいな、自由にイジメが出来るぜ)


翌日から高末は小江田を狙って攻撃を開始した。


殴る前に「周りに言っても無駄だからな」と念を押しては小江田の腹や足を殴り、最後に顔面を殴って吹っ飛ばす。

その行動は日に日にエスカレートし、暴力から骨折までした小江田はついに入院する事になった。


小江田の傷については誰も暴力事件と認識できず、嘘がつけない魔法を使った聞き取り調査でも全員が「誰も見ていない」「勝手にこけてる」と回答。


「教室にイジメはなく、小江田が暴れていただけ」と結論づけられた。


さらに小江田は担当した医師により「自傷の癖があるかもしれない」と診断され、精神的な病気の検査のために彼は長期の入院を余儀なくされてしまった。


この状況になっても、周囲は小江田を「突然倒れて怪我をする変な奴」という認識しかなく、その一方で小江田も、高末の暴力に対して教室全員で無視とイジメをしているのだと思い、いつしか周囲に対して心を閉ざしていった。


1ヶ月後


入院が終わり、やつれた姿で無言で教室に入ってくる小江田の姿があった。


その一方で、1ヶ月間もお預けを食らっていた高末はストレスが溜まり、ひ弱で耐久力のない小江田を教室から追い払うことで、次の生け贄を使えるようにしようと考えていた。


(あのやろう、俺に黙って入院しやがって。ぶっ殺してやる!

 今日でお前の役目は終わりだ!)


昼食が終わり、自由時間になると、

高末は「装置」を発動させて小江田の近くに来て言った。


「最後の晩餐は済んだか?」


ここ数ヶ月の暴行から、当たり前のように小江田の胸ぐらを掴む高末

ただし、今日はいつものように教室の後ろには連れて行かない。


こともあろうに高末は、教室の開いた窓の方向に小江田の身体を向け、殴りとばして窓から落とす体制に入った。


どうせ周囲は誰も知覚できないのだから、小江田が勝手に自殺したと思うだろうと思った高末は、

「この教室に二度と戻ってくるんじゃねーぞ!くたばれ!このクソチビ!」

そう言って右手の拳を振り上げた。


だが、その瞬間、小江田を掴む高末の左手首に激痛が走った。


見ると小江田がいつの間にか取り出していたカッターナイフで、高杉の左手首をリストカットしていたのだ。

そして、その体躯に似合わないドスのきいた声で「くたばれ…」と言った。


突然の反撃に驚いた高末は小江田を手放すと、巨体に似合わない悲鳴を上げながら、出血している左手を右手で必死に押さえる。


だが不幸にも、血管の流れに沿って切断された傷口からは血が流れ出し続け、押さえても止まる気配がない。


「…これだな」


しゃがんだために姿勢の低くなった高末の胸ポケットから「装置」を見つけて取り出す小江田


「おまえ、今、俺を殺そうとしたよね?」


そう言って高末を見下ろす小江田の目は、すでに狂気の色をたたえていた。

小江田を何ヶ月も暴力で蹂躙した高末は、この時初めて、自分がやったことを理解した。


「…仕方ないよね」


小江田はそう言うと、高末の首の右側をカッターナイフで切りつけた。


頸動脈まで達した傷から、大量の血が噴き出す。


数分後


絶命した高末を放置して、小江田は装置を持ったまま外に出た。

直後、教室からは複数の生徒の悲鳴が響き渡った…。


数日後


高末は「受験ノイローゼによる自殺」と断定された。


だが、何故かそれ以上の詮索はされないまま、小江田は無事に卒業していった。

さて問題です。

こんな危険な装置を手に入れているのに、高末は何故、

自殺と断定されたのでしょうか?w

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ