表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

新薬来たぁぁぁ〜、期待のノステリン薬☆

新薬が波乱の幕開けとなるか⁉︎

「ところで唯ちゃん、そのオペレーション ザ プラスティックって言い方はやめないか?」


「えっ、今流行りなんですよ。

何か良くないですか?

カッコよくて?」


「いや、全然」


「はうわっ⁉︎

私渾身のネーミングセンスが!」


そんな事を言いながらもカルテを脇についてくる唯ちゃん。

その表情は、あの頃とは全くの別人だ。

幸せを体現したような笑顔で俺に喋りかけてくる唯ちゃん。

俺の手伝いが出来るのが本当に嬉しいらしい。

俺はこの笑顔を見るために美容整形外科医になったんだ。


オペ室に入ると手術台に一人の女性が横たわっている。


「医院長、麻酔の導入、完了してます。

心拍数、脈拍数、バイタル安定してます」


助手の佐川さんが患者の俵さんの容態を伝えてくれた。


「では只今より、俵さんのハクサク手術及び皮膚移植手術を行う」


俺は術用手袋を嵌めた手を上に向け、


「メス」


「はい」


こうして俵さんの美容整形手術が始まった。

俺はスピーディーにメスで皮膚片を切り取り、火傷で傷んだ顔の皮膚を薄く剥がして皮膚片を縫合していく。


「ヒールガーゼ」


「はい」


縫い止めた部分も含めてヒールガーゼを当て、


「後、ここテーピングよろしく。

次に移る」


「はい」


「耳の皮膚切除を開始する、メス」


「はい」


こうして火傷痕に新しい皮膚片を縫合していく。


2時間程で手術は無事終了。

後は皮膚片の定着と、経過を見守る事になる。

まれにあざみたいに斑点ができたり、腫れたりすることもあるが、基本的に自分の皮膚を縫合しているため拒絶反応は少ない。


「ふぅ〜」


「医院長先生、お疲れ様です。

はい、タオル」


「おっ、唯ちゃん、ありがとう」


「いえいえ、どういたしまして。

でもこの美容整形クリニックは、本当に患者様が多いですよね。

医院長先生、手術ばっかりで大丈夫ですか?」


「ん〜、まぁね。

テレビでも取り上げられたから、その影響かな?」


「凄いですよね!

でも私みたいに火傷痕で悩む人が以外に多い事に驚きました」


「火傷の範囲が広いと以外とやってくれるクリニックが少ないんだよ。

まずリスクやトラブルを嫌うクリニックは請け負わない。

それに時間をかけて、ゆっくりと手術していく事になるから、患者の回転率を上げたいクリニックも断るね。


唯ちゃんの時も、何件も頼みに行ったけど、どこも掛け合ってくれなかったんだぜ」


唯ちゃんがパチンと両手を合わせて、


「そうだったんですか⁉︎

だから医院長先生が自ら手術して下さったんですね☆」


唯ちゃんの好感度がアップしたように思う。

まぁ、いいか。

はにかむ、唯ちゃんの顔には火傷の面影はもう残っていない。

彼女は、俺が救った女性の中でも、俺を崇拝する程慕っている。

まぁ、あの子にとっては救世主みたいなものか。

もちろん、火傷痕のある患者さんだけじゃなく、今流行りのプチ整形での来院もある。

二重にしたいとか、エラを削って欲しいとか、瞼が垂れるとか、胸が垂れるとか、脂肪吸引とか、脱毛とかいろんなケースでの来院がある。

基本的に俺は断る事をしない。

美しくなりたいという女性の欲求は尊いものだからだ。

そのせいで、徐々に来院数が増えてきている。

手術は俺一人が行ってるため、休む間も無くといった感じだ。

だがそれでも、綺麗になって喜んでくれる人が大勢いる。

笑顔でありがとうございましたと言われるのだ。

こっちもやり甲斐があるってもんだ。

このクリニックで手術を受けて社会復帰した患者さん達が、クリニックの事を広めてくれているみたいだしね。

この先、もっと来院数が増えるだろう。

望むところだ。

俺は女の子達の笑顔を取り戻す!

そのために生きてるんだ。


手術室を出て白衣を唯ちゃんに渡す。

医院長室に向かうため、廊下を歩く。

唯ちゃんも俺の後ろをついてくる。

少し歩くと、


「あ、医院長先生、新薬の紹介で熊沢薬品の野口さんがいらしてます」


受付の北条さんに呼びかけられて、振り帰る。


「んぁ〜、分かった、応接室か?」


「はい、応接室にご案内してますのでお願いします」


軽く会釈して受付業務に戻っていく北条さん。

彼女も俺が整形オペした患者の一人だ。


「そういう事らしいから唯ちゃん、俵さんについといてあげて」


「はい、分かりましたぁ☆」


了解のポーズをとってカルテを小脇に軽快に走り出す唯ちゃん。

俺はそれを見送り、応接室に向かう。


コンコン。


「失礼します。

橘美容整形外科クリニックの医院長をしてます橘です。

どうもお待たせしました」


するとソファーに座っていた野口さんが立ち上がって、


「あ、いえいえ、先生がお忙しいのは存じ上げております。

いつもお世話になっております。

熊沢薬品の野口です。

今回は新薬のご紹介でお邪魔させていただきました」


「いつも悪いね。

それで頼んでた効果は実現できた?」


「はい、何とか副作用もなく、完成に至りました。

こちらがそのノステリン薬でございます」


俺が頼んでいたのは、皮膚組織の再生を早める薬だ。

火傷の範囲が広い患者さんには特に必要な薬だ。

皮膚片を切り取ると、次に切り取れるまでの期間が長いため、患者への時間的な負担が大きい。

それに手術箇所の回復が早くなれば、退院も早められるからな。

それを何とかするために、皮膚組織の再生を早めたいと予てから相談していたのだ。

どうやら頼んでいた薬がついに完成したらしい。


「癌細胞が増殖するとかはないよね?」


「はい、臨床試験にて確認しておりますが、データをご覧になりますか?」


「いや、いいよ。

確率だけ教えてくれ」


「癌細胞の増殖確率は3%未満といったところです」


「オッケー、使えるな。

じゃあ卸せるだけ卸しといて」


「かしこまりました。

ノステリン薬の一錠当たりの単価は、保険外医薬品となりますので7,500円となります」


「まぁ、仕方ないよな。

入院費の方が高くつくし」


「先生、ありがとうございます。

今後とも熊沢薬品をよろしくお願い致します」


「あぁ、こちらこそ。

今回はいい仕事してくれて助かったよ」


「それでは失礼させていただきます」


そう言って野口さんは退室していった。


これでまた、少しでも多くの患者さんを救う事ができる。

俺の掲げるポリシーは、一度で綺麗に!美しいは素晴らしい!!なのだ。

さすがに火傷の範囲が広い患者さんは、一度では無理だが、入院期間を短縮してあげた方が復帰もしやすいだろう。

俺は新薬のノステリン錠を見つめながら、今後の美容整形の躍進に想いを馳せた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ