~生まれ変われるならもう一度同じ性別か違う性別か一度は考えたことありますよね?~
「新たな人生を歩んでもらう?」
「そうよ。あなたに…もう一度ね」
横たわる僕をやさしく見つめる女性。
額に触れたその手は温かく、どこか安心感があった。
やっぱり美人さんだ。
怖い印象があったけど、今はそう思わない。
気付かないうちに心は落ち着いていた。
冷静になってこの状況を思うと気恥しくなってきた。
「そ、それよりさ、どういうこと?生まれ変わるの?」
起き上がり、ベッドの上で胡坐をかく。
恥ずかしくて顔を見れない。
「ええ。赤ちゃんからね。けど今までのことを忘れるわけではないの。
あなたが生まれ育った世界の記憶はそのままよ。体は赤ちゃんだけど、心は違う」
「もし………このままが良い!!……って言ったらどうなるの?」
本音を交えた質問をした。
「そうね…」
女性はつぶやきつつ、両手をぽんと叩いた。
そして…笑顔をこちらに向け
「消えてもらうわ」
その言葉に唾をのんだ。
あの笑顔は可愛いとか綺麗とかじゃなくて色々通り越して怖い!
「やりますやります!喜んで生まれ変わります!前々から生まれ変わりたいと思ってましたからー!」
「だいたい僕死んじゃったんでしょ!?」
「なら、次の世界で新しい人生を楽しみます!青春を謳歌します!」
死んだのに殺される。
たまったもんじゃない。
「そういって貰えて嬉しいわ。そうだわ!新しい世界に行く前に良いものをあなたにあげる」
そう言って、再び両手をぽんと叩いた。
突然ベッドの上にあらわれた白くて小さな紙の箱。
数は3つ。
「ありがとうー!」
やさしいなー。
雰囲気は怖いけど…
けど、中身はなんだろう?
新しい世界には魔物がいるからとか言って、伝説の剣とか?
新しい世界で楽しみなさいとか言って、お金の減らない財布とか?
財布はともかく、こんな小さな箱に剣なんて入らないよね…。
「開けてみて」
そう言われ右から順に箱を開けた。
………?
箱の中には……何も入って無かった。
どの箱も全部何も入って無かった。
しかし箱蓋の裏にそれぞれ、
言葉。
神の魔力。
神による身体強化。
と書いてあった。
「なにこれ?」
「あなたへのプレゼントよ。私、直接何かをあげるのは嫌いなの。失くされたりすると悲しいし…色々と…残らないから…。ちなみに言葉の箱だけど…新しい世界の言葉すべてが詰まっていたの。新しい世界にも様々な言葉があるわ。あなたはそれを理解できるようになった。話すこともね。あとは…あちらの世界に着いたら…わかるわ」
実感が湧かない。
何も変わってない。
けどあっちの言葉がわかるっていいな。
「けど、気をつけてね。今はわからないと思うけど、いろいろと危ないから」
「どういうこと?」
「使い方を間違えなければ大丈夫よ」
意味がまったくわからないな。
「そろそろお別れね。あなたに伝える話もすべてしたし、渡すべきものも渡したわ。あなたはベッドで寝て起きたら、あちらの世界に居るわ。それまでお休みなさい」
なんか最後らへん素っ気ないなー。
お別れなのに…
「いろいろありがとう!…おやすみなさい」
ベッドに潜り目を瞑る。
大丈夫かな…
色々心配だけど………
話を聞いて気疲れしたのだろうか、眠りにつくのは早かった。
~~~~数時間後~~~~
真っ白な空間にベッドがあった。
そこに座る一人の女性。
他に誰もいない。
「ハァ…ハァ…危なかったー!もう少しで理性がぶっ飛ぶところだったわ。なんて可愛い子なの!!?
あの照れてる時の顔なんて……最っ高。触れた時、襲いかかれば良かったわ。あ、あとお礼言われた時に抱きついとけば…」
髪をかき上げながら、立ちあがった。
誰もいないベッドを見る。
「まぁプレゼントもあげれたし、最後は少し冷たくあたっちゃったけど、これで良いよね?」
そう言って、前を向いて歩き出す女性。
真っ白な空間に溶け込むようにその姿は消えていった。