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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第三章 腐った化け物と消えた嘘
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51 リーズが巫女!?

 目前には『修行の間』と書かれたでっかいふすまがある。

 おもむろに開き、いざ足を踏み込んだ。


 そこは首をぐるりと大きく回さないと見渡せないくらい広い講堂で、下は畳。壇上にはなんとも不気味な曼荼羅が飾られてある。

 その曼荼羅に向かって信者たちは正座をしたまま祈りを捧げている様子。

 なんともオーソドックスな修行光景だ。

 

 次の刹那、俺は目を丸くした。

 信者たちの中に、あいつがいたからだ。

 それと同時に聖華さんが声を発した。


「リーズ……。どうしてこんなところに!? すごく心配したんですよ!」


 ここの制服と似たようなタイプだが襟に細やかな刺繍があるちょっと立派な白い衣を身に付けているが、どう見てもリーズが信者の中に交じっているのだ。

 

 だが妙な違和感を覚える。

 いつも対して表情のないリーズだが、それよりまして無表情に思えた。

 リーズはこちらに向かってゆっくり歩いてきた。


「お待ちしておりました。あたしのホーリーネームはサリア……」


 いったい何の冗談だ!?


 こうやって近くで拝むと、まさしくリーズそのもの。

 背格好から声まですべて同じ。


「おい、リーズ。一体どうしちまったんだ? なんでこんなとこにいるんだ?」

「さっきから、リーズ、リーズとおっしゃてますが……、それは何を指しているのですか?」


 マジで何を言っているのか?


「いや、あんたの名前だけど?」

「あたしはサリア。絶対神に認められた巫女です」


 お、おい。


 ガチで言っているのか!?

 だけどリーズは嘘を付けねぇハズ……


「何かあたしの顔についていますか?」


「い、いや……なんつかーか……、そう言えばだけどさ、ボルボ司教さんから聞いたんだが、あんた俺達を待ってくれていたんだってな」

「はい、そうです」


「俺達はたまたま偶然に今日という日にここに来ただけなのに、どうしてあらかじめ分かっていたんだ?」


「あたしが巫女だからです」

「え……えーと、まぁそれはとにかく、なんで俺達の訪問をハッキリと断言できたのか聞いている」

「断言ではありません。これは予言です。またしても的中してしまいました」


 何を言っているんだ?


「……それは、特記事項の恩恵か?」

「先ほどから質問ばかりですね。これは何かの尋問ですか? 別に隠すことではありませんから話しましょう。これは生まれついて持っているあたしの能力ちからです」


 ……ちから……と、来たか……

 正直、面食らっている。

 奴が本当にリーズなのかどうかさえ、よく分からないってのが正直な感想だ。


「あんさ、巫女って嘘をつけないってちからもあるのか?」


 これにはどう出る?


「もちろん、嘘などつきません」


 何とも曖昧な返答だな。


「予言みてぇなちからってので嘘をつけないのか?」

「質問の意味と意図がまるで分からないのですが」


「質問ばかりで悪ぃけど、巫女様がわざわざ俺達を出迎えてくれるなんて、なんでまた?」

「絶対神様があなた方に興味を持たれているからです」


 安藤は神と話していた素振りだった。

 そいつが俺達に興味だと?


「言っておくが、俺は最近ちまたを騒がしている勇者とかではないぞ!」


 そこは強調しておかなければ。


「よく分かりませんが、絶対神様はこの世界に秩序と平和をもたらせてくださる真の神です。そんなに心配されなくても大丈夫ですよ。あなたも絶対神様に惹かれて、ここの門を叩かれたのでしょ?」


 マジで一体どうしちまったんだ?

 行方不明になっちまった時、頭でも打ったのか?

 いや、洗脳の類なのかもしれねぇ。

 さらったのが神クラスのものなら、なんでも出来ちまいそうだ。


 だけど俺もその一員。

 状態変化魔法の中に、記憶を戻すってのがあってな。

 まぁ、見てな。


 俺は満面のブサメンスマイルを作った。


「さすが巫女様です。よく分かりましたね。実はそうなんです。俺達、何してもうまく行かないから、ここの神さんにすがろうと思って来たんです。愛想悪く話したのも、真摯に話を聞いてくださる方かどうか、そして俺達を救ってくれる人かどうかを試そうってあらかじめ算段して演技していたんです。本当に申し訳ございません。そうですよね。お嬢様」


 俺の目配せにお嬢様は、

「はい、そうなのです。何をやってもうまくいかないという演技を……え、え、え……えんどれするーぷに入ってしまいまして。そ、そうなのです。うまくいかないエンドレスループです。あはは」


 結構つらいが、なんとか途切れることなく言い切ったぞ。

 グッジョブ、お嬢様。


「だから俺達には人に言えない悩み事が多いんです。ここは人が多いからどっか安心して相談できるような場所はないでしょうか?」


「はい。では個別面談室などいかがしょうか? 出家など人生の岐路にたつ不安な信者が上級信者と一対一でしっかりと話し合える小さな部屋です。ご安心ください。外に声も漏れませんから」


 出家の説得に使っているエグイ拷問室みてぇだな。

 まぁいいさ。

 作戦に出る前に、ちょいと探りを入れてやる。


 別に個別面談室という名の奇怪な場所に移動するまでもないのだ。

 一瞬人目をはばかれれば問題ねぇ。


 アキトにはここにいるように告げて、道場を出て戸を閉めたと同時に俺はすばやく『記憶蘇生魔法オモイダセヨ』を詠唱してみた。

 これは並みの術者の魔法ではない。

 絶対神による神の波動だ。ちったぁ、効くだろう。

 

 効果覿面こうかてきめん

 リーズはそのまま膝を崩して、頭を抱えた。


「……う、う……」


「大丈夫か!? リーズ」

「……し、しげるさん……!?」


 先程の他人行儀な淡々とした仕草が一気に溶けた。

 どうやら記憶を戻したようだな。

 やはりリーズは何者かに洗脳されて操られていた。

 同時にもうひとつ分かった。

 予言できるってのは、術者側……



「早く逃げてください。腐った化け物が……あたしを……」



 腐った化け物!?


 それとほぼ同時だった。

 何か舌打ちしたような音と共に、リーズの姿が消えたのだ。

 

 やられた……

 また、さらわれちまったようだ。

 そんでもって、このままここに長居したら、なんかやべぇことになりそうだ。


「し、しげるさん。いったい、何が起きたのですか?」

「ちょっとしくじったようだ。理由は後から話す。とにかく聖華さん、『瞬間移動魔法アナザーワープ』はもう使えるよな? そいつでヴィスブリッジまで飛べるか?」

「は、はい。でもしげるさんは?」


「俺は大丈夫だ。急いで一足先に撤収してくれ。俺はアキトを連れて後から追う。なぁに心配はいらねぇ。そもそも今回の目的はここの調査なのだから、十分収穫はあったよ。それよか、着いたら即行ヴィスブリッジのことが敵にバレたって誠司さんに伝えてくれないか」


「はい。分かりました。すぐ話します! しげるさんも気を付けてください」

「了解!」


 アキトを拾う前に、中間管理職ボルボ安藤の記憶を抜いておかんとな。

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