表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第三章 腐った化け物と消えた嘘
65/78

45 情報収集2

「きっと伶亜れいあさんが訪ねて来たんですね! 会いたいです!」


 さっきまで暗かった聖華さんだったが、ぱっと花が咲いたような明るい笑顔を見せた。


 誠司さんも続く。

「久しぶりですね。それにしてもわざわざ訪ねてくるなんていったい何の用だろう? ついさっき訪ねて来たみたいだからまだ遠くには行っていないと思うけど、今はリーズの探索が優先だ……」


 まぁ、そうなのだが。

 聖華さんも会いたそうだし、ちょっとした気分転換になるかもしれねぇ。

 気分転換は発想の転換にもつながる。

 もやもやした気持ちでは気付けない世界が、視界に広がってくるかもしれない。


 だから俺は提案してみた。


「伶亜さんは主に盗賊スキルを特化させた冒険者で、事情があって一ヵ所にとどまっていないようなことを言っていたと記憶しています。だったらもしかして旅の途中で神の噂とかを聞いているかもしれません。接触しても損はないと思いますが」


 まぁ、根拠なんて泥船。

 お馴染みの営業トークでゴリ押ししただけっす。

 張り詰めているお二人の気分転換くれぇになればいーかなーってくらいの期待度。

 


「確かにそうかもしれませんが、どこへ行ったのか見当がつきません。探すのも一苦労だと思います……」


 そう言うと思っていたさ。

 だから俺は、用意していたかのように自分へ向かって親指を立てニカッと笑ってみせた。


「あ、そうか!」 


 はい、そうです。


「そうですよ! 元探偵のしげるさんがいれば、すぐ見つかりますよ」


 元探偵なんて真っ赤な嘘ですが、その設定が初めて役に立ちそうなので、使わせて頂きまーす。


 実は俺のサーチスキルには、伶亜さんが引っ掛かっていたのだ。

 だけどそうとも言えず、まぁ元探偵ってことで面倒な屁理屈はすべてショートカット。

 

 そして俺はこの日の為に隠し持っていた黒縁の虫眼鏡を取り出して「この足跡は……」とかそれっぽく言葉を繋ぎながら、彼女の気配のする方へ歩みを進めていった。



 俺は唖然とした。

 てっきりどっかのバーとかで時間でも潰しているものと思っていたのだが、とんでもなく辺鄙なところに来てしまった。

 辺りは草ボーボーで、その中に寂しげにぽつんと小汚い小屋があるだけだった。

 でも確かに彼女の反応は、この中にある。


「伶亜さんはこの建物の中ですか?」

「はい、黄金比と三角関数とフィボナッチ数列とスキル的な第六感を用いて分析しました結果、97.57%という非常に高い確率で、この中と」


 途端、聖華さんは小屋に向かってかけていった。

 その時だった。


「誰だ!」


 鋭い声と共に赤い影が飛び出してきた。

 あまりの勢いに弾みでよろけた聖華さんを、その影が掴み、彼女の転倒を防いだ。

 

「あ、なんだ。あんたらだったか。なんでこんなところに」


 一瞬びっくりして目を丸くしていた聖華さんだったが、

「伶亜さんが私達の会社に訪ねてきてくれたと聞いて、追いかけてきました!」と、にっこり返した。


「あぁ、会社の連中には言わんでもいいって言ったんだけど、なんか伝わっちまったか。まぁしゃぁないわな……。やぁ、聖華に誠司さんにしげるさん、久しぶりだな。元気だったか?」と苦笑いをして照れくさそうに後頭部をかいた。


「はい!」と聖華さんは伶亜さんの手を取って笑った。


 それにしても伶亜さんのやつ、どうしちまったんだ?

 別れ際、特記事項を克服するためのヒントを見つけたから模索してみると言っていたし、それなりにうまくやっているのかと思っていたが、わりとエグイ生活をしているのだろうか。

 

 身にまとっているレザーアーマーはかなり疲れているし、笑顔こそ見せてくれているがその顔色は決して良いとは言えない。

 そして先程見せた彼女の動物じみた反応は、まるで何かに追われている……、もしくは追い詰められているかのような感覚を覚えた。


 彼女は美人を見ると負の特記事項が発動してしまう。

 だからその呪われた力を抑えるために、視界を封じた。

 盗賊スキルを鍛えているから何とかなると言っていたが、やはりそれは強がっていただけなのだろうか。


 誠司さんは、「伶亜さん、実は僕は特記事項で苦しんでいる人達のために会社を興したんです」と、話し出した。


「あぁ、風の噂で聞いたんで、祝いのひとつでも言おうと思ってな。たまたま目的のクエストでヴァレリア公国の近くまでいくとこだったから、そのついでといっちゃぁ失礼かもしれないけど、まぁ立ち寄ってみようかなぁっと」


「そうだったんですね。わざわざありがとうございます。もしご迷惑でなければ、伶亜さんも僕達と一緒に働いてみませんか?」


 きっと誠司さんは、彼女におかれている境遇を心配しての提案なのだろう。


 だけど、「誘ってくれるのは嬉しいけど、こんなグレたのいらねぇだろ」と軽い笑いで一蹴した。


 でも誠司さんは「いえ、そう言わず、ぜひ伶亜さんの力を貸して欲しいのです。一緒に会社を盛り上げていきましょう!」と、一歩も譲らない。


「生きる為とはいえうちはこれまでに色々やってきてきたから、一緒にいたところであんた達に迷惑をかけるだけだ」


「そんなことはないです。方法はかならずあるはずです」



 なんか堂々巡りの会話を繰り返している。


 俺はちょっと首を傾げちまった。

 伶亜さんはいったいなんの用件でヴィスブリッジまでやってきたんだろう?


 本当にお祝いを言うだけために立ち寄ったのだろうか?

 会えばこうなることも想像つきそうなもの。

 気持ちを伝えたいだけなら、手紙とかにした方が煩わしくもない。

 後ろめたい気持ちがあるのなら、尚更のこと。


 だったら、もしかして……

 

「まぁ、あんたらの元気そうな顔も見れたことだし、これでうちは行くわ。急ぎのクエスト抱えているさかい」


 やっぱりそうか。

 だったら直球でいくか。


「伶亜さん、正直に教えてくれ。なんか困ったことがあるんだろ?」


「何いうてんの? 何もないって。じゃぁ、もう行くで」


 最初の違和感。

 それは休むにも、もうちょっとマシな場所がありそうなものということ。

 だけどこのような場所を選ぶくれぇだから、かなり人目を気にしているってことだ。


 そして今のそそくさと立ち去ろうした今の言動で、俺は確信に至った。


 間違いない。

 何かトラブルに巻き込まれている。

 それも自己解決できねぇくらいのでかいヤツに、だ。

 

 自分だけではどうしようもない大きな問題を抱えちまった。

 だから助けを求めるために、ヴィスブリッジにやってきた。

 だけどいざお願いする時になって迷惑を掛けたくないという気持ちが勝っちまい、何事もなかったように立ち去ったつもりだった。

 だけど俺達が追いかけてきたもんだから、適当にやり過ごそうとした。


 そうだったんだろ? 伶亜さん。


 今、リーズの問題もあるから、あんまり深入りできねぇかもしれねぇが、俺は絶対神だ。まぁ少々のことなら、余力の範疇でスパッと解決できるぜ?


 盗賊スキルメインでサバイバルしているくらいだから、超聴覚も伸ばしているに違いねぇ。だから誠司さんには聞こえないような小さな声で言ってやった。


「あんたは聖華さんの真の力、間近で見ただろ? 彼女はガチで強ぇ」


「あぁ、知っている」


「そしてだな、俺の実力はそれ以上、何故なら俺はファイティーン★ファイブのブルータンクなんだぜぇ?」


「は?」


「まぁ、ここだけの話、世界の平和はファイティーン★ファイブが守っているんだぜぇ? そして俺は蒼き閃光の重戦士、ブルータンク。おっと、誠司さんには内緒にしてくれよぉ」


 誠司さんが入ると色々ややこしいからね。


「え、えーと?」


「まぁ、俺達の商売は悪をくじき世界の平和を守るってことだ。頼むから仕事くれよー」


「ぷっ。相変わらずだな」と、噴き出して笑ってくれた。


 真面目な顔に戻ると、

「迷惑をかける訳にはいかないと何度と思ったけど、とはいって確かにうちひとりではどうやっても解決できそうにない。……ここは蒼き閃光の重戦士ブルータンクに依頼するか」と、誠司さんに内緒ルールを守ってくれてか、蚊の鳴くような声で返してくれた。


「どんとこい!」

 

 大抵、余裕。

 その辺の悪党など瞬殺。

 何故なら、俺は絶対神!

 そのおごった感情は次のひとことで叩きのめされた。


「うちが戦っている……いえ戦っているとはとてもいえない、もがいている相手は……悪の教団--絶対神教--オルドヌング・レイス」



 は?

 なんだ、その舐めくさった名前の団体さんは!?

 絶対にやべぇとこだ。

 

 そして俺は、ハッとした。

 いたじゃん、悪そうな神。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] スピア レイス ダンディ、、、面白くなってきた♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ