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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第三章 腐った化け物と消えた嘘
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43 消えたリーズ

 俺は薄っすら目を開けた。

 ぼやけた視界に先程の空間が広がる。


 それにしても凄い光だったな。

 いったいなにが起きたんだ?

 ミッションコンプリートのお知らせってやつなのかな?


 誠司さんが竜を指差し、

「無事、竜の涙の返還に成功し、偉大なる竜は眠りについたようです。これで今回の事件は解決ということですね。ありがとうございました、ヒーロー達」


 え? ヒーロー?


 そ、そうか。

 俺は今、ガチタンクじゃなくてブルータンクだった。

 誠司さんがいつも間違うから、俺までつられてしまったじゃないか!


「あ、事件が解決しましたので、こっちはこっちで勝手に撤退しますので、あなたのお仲間を探してきましょう」と、気を利かしておくしかない。


 エルカローネもハッとした顔で「あ、私も呼んできます」と言ってどこかへ消えた。どうせあっちで変身を解いてまたパタパタダッシュで何事もなかったように帰ってくるんだろ?

 それに何の意味があるってんだ?

 そんでもって今度から俺もその要員に加われなくちゃならないのか?



 もう、勘弁してくれよ、この不毛なエンドレスゲーム。

 グチグチ思っていても仕方ねぇので、俺もあっちへ行って変身を解いて戻ってやるか。


 そーいや、リーズのやつ。

 あのお祭り騒ぎの中には、なんかおらんかったな。


 なんか悪魔っ子になるの、嫌がっていたし、きっと変身ごっこには、付き合いきれなかったのだろう。



 この時の俺は、あんまり深く考えていなかった。


 



 わざとらしい再会のあと。

 聖華さんが、「あれ? リーズがいませんね」と首を傾げる。


 適当にタイミングを見計らって戻ってくると思ってのだが、リーズのやつ、どこ行っちまったんだ?

 しばらく手分けをして探してみたもののどこにも見つからなかった。


 俺は、「リーズを最後に見たのはいつでしたか?」と問うた。


 存在感がないのはいつものことだ。

 知らないうちにスッと消えるのもいつものこと。

 そうやって、彼女なりに探索しているみたいだし。


 誠司さんは、

「はっきりと記憶できているのは……。う……、うーん。すいません。最終試練のことばかり考えていて、気が配れていませんでした」


 はい、変身ごっこの段取りとかね。


 聖華さんは「もしかしてあまりにも長時間の冒険だったから、強い眠気に襲われてどこかでお昼寝しちゃっているのかしれません。心配です」


 誠司さんは、

「もしそうなら、試練以外で敵モンスターは出現しなかったですし、身の危険はないと思います。帰りながら注意深く探していきましょう」と提案してきた。


 しかしとうとう洞窟の外までやってきたというのに、リーズを探索することは出来なかった。俺も全開のサーチスキルを張り巡らしていたのだが、アンテナには引っ掛からなかった。

 どうしちゃったんだろ?

 疲れて集中力が切れているのだろうか。


 さすがの誠司さんも焦燥を隠せない様子だ。

「すいません。僕がしっかりと注意していたらこんなことには……。もう一度、奥まで探してきます。皆さんは少し休んでいてください」


 聖華さんは「いえ、私も……」と言うも、ふらふらと地面に膝から崩れ落ちた。

「え? どうしちゃったんだろ? わたし……」


 無理もない。

 オールナイトでゲームした後、スマホなり財布なり大事なものをなくしていることに気付いて、心辺りを散々さがしたけど手がかりすら見つからず……、よりもはるかにきつい。

 人命がかかっているのだから。


 聖華さんはなんとか立ち上がって、「私も行きます! 大丈夫ですから!」と気合でついて来ようとする。

 まぁ、彼女が限界まできたら、とりあえず俺のアイテムボックス(アナザーゲイブ)にでも突っ込んでおけば大丈夫か。


 俺は、

「誠司さん、探索は多い方がいいです。俺も行きます」と誠司さんの後を追った。



 しかし。



 洞窟に入った途端、俺達は言葉を失った。


 景色がまったく違うからだ。

 簡単に見渡せるくらいの空間の真ん中にちょこんと石碑があり、竜の涙が祀られているだけではないか。


 そして自称、偉大なる竜はどこにもいねぇ。


 あの長い長い試練の道のりは、竜が作り出した幻影みたいなものだったのか?

 まぁ、あんなに長い道のりだったら、あのチンピラ悪党達に到達できる訳もないか。


 とにかくこれでは探しようがない。


 誠司さんは声を張り上げた。

「偉大なる竜よ! リーズを知りませんか? 僕たちと一緒に試練を乗り越えた子です!」


 誠司さんがいくら声を張り上げても、返事はなかった。


 俺は、

「誠司さん、もう一度あの宝石を盗めば、さっきのイベントが発生するかもしれませんよ。俺がかっさらうので、そしたら」


「……竜は誠意を欲していた。しげるさんは僕の仲間ということを竜は知っています。だからもしそれをしたら今度は試練の攻略だけで僕達を信用してくれますでしょうか?」


 まぁ、そう言われたらそうなんだけどなぁ。

 でも、そんな悠長なことを言っている場合ではない。


 俺は石碑に歩み寄り、竜の涙に手を伸ばした時だった。


『……おい、勇敢なるブサイク』


 なんだ? この腹立つ声は。

 俺は振り返った。


 誠司さんは走り寄って俺に首を振った。


『この声は勇敢なるブサイクにのみ届いておる』


「なんだよ。偉大なる竜さんか。意識があるんなら話が早ぇ。だんまりしてなくて、相談にのってくださいよー」


 誠司さんは「しげるさん、誰と話しているのですか?」と目を丸くしている。


「え? 誠司さんには竜の声が聞こえないのですか?」

「私も何も聞こえませんよ」と聖華さんも不思議そうな顔をしている。


「しげるさん、もしかして疲労困憊で幻聴なるものが聞こえているのでは……。とにかく早まってはいけません。僕ももっとしっかりと竜に呼びかけますので、もうちょっと待っください。偉大なる竜よ! お願いです! 僕たちの声に耳を傾けてください!」


『勇敢なるブサイクよ』


 なんだよ、腹立つなぁ、その呼び方。


『すまぬ。汝の名を知らぬもので』


 あれ? 俺の心の声が聞こえちゃうの? やっかいだなぁ。


『汝は我と近い神的な力を宿しているようなのだ。それを通じ、言うなれば神波で話しかけておる』


 えー。なんだよ、それ、普通にみんなと話せばいいじゃん。

 さっきみたいな意識の声で。


『それは無理なのだ。我は完全に眠っておるからな』


 寝てても、こうやって意識のあるような会話できているじゃん。


『それは神の力による偉大なるものだ』


 そんな謎理由でごまかされないんだからね。


『我も詳しくは分からぬのだ。まるで天界から汝らを見下ろしているような感覚……と言えばいいのだろうか』


 知らねぇよ。天から見下すとは、マジで偉そうな竜だ。

 やっぱり経験値に……おっと……。


『すまぬ。勇敢なるブサイクよ。見下しているようなつもりはないぞ』


 ブサイク言うな!


『すまぬ。さっきも告げたが我は汝の名を知らぬのだ。だからそう呼ぶしかないのだ』


 俺は、し、げ、る!


『相分かった。勇敢なるブサイクよ』


 ざけんな! お前もか! 誠司さんはずーと俺の事をガチタンク。お前はずーと俺の事を勇敢なるブサイク。もーえーわ、それで!


『ありがとう。そうさせていただく。勇敢なるブサイクよ』


 ……。

 で、なに?

 俺に何か伝えたかったんでしょ?


『そうだった。汝の仲間は我との信頼を守る為、勇敢なるブサイクを止めておる。だが勇敢なるブサイクは、汝の友を救うために我を起こそうとしておる。なんとも友情厚き者達よ。これを見過ごす神など神ではないわ』


 そうよ。

 だからお前は神じゃねぇ。

 そして俺はブサイクじゃねぇ。


『そう言うな、勇敢なるブサイクよ。我は汝に告げに来たのだ』


 何を教えてくれるん?


『試練を同行していた汝の友は、この洞窟にはいない』


 なんだと!?

 じゃぁ、いったいどこにいるってんだ?


『偉大なる神である我にも分からぬ。ただ分かるのは、突如、この空間から消えたということだけだ』


 消えただと!?

 それはどういうことだ。

 確かに俺のなんでもアンテナにもひっかからなかったから不思議には思っていたんだ。


『可能性があるとしたら、移転魔法やその類の道具で移転したのか、外部の力により操られたのかさせられたのか』


 リーズが自分から何も言わずに移転するなんて考えにくい。

 だったら後者……?

 でも、誰がどんな理由で?


『先の試練は神が作り出した異空間。そのようなところに手をくだせる者となれば、それと同等の力の持ち主ということになる』


 ……。


「しげるさん! しげるさん! どうしちゃったのですか!? さっきから黙り込んで」


 その言葉で俺はハッとした。


 聖華さんと誠司さんが心配そうに俺をまじまじ見ている。


 誠司さんは「偉大なる竜よ! 頼む、何か知っていたら教えてください!」とまだ熱心に叫んでいる。


 どうしたものか。

 とにかくここにはリーズはいねぇんだ。

 さっきのちょくちょく言葉のとげに精神的ダメージのくらう会話を伝えるべきだろう。


『頼む、我は汝の仲間達の心に動かされ、このような行為に至った。ぜひ伝えてくれ、勇敢なるブサイクよ』


 だから、俺はし、げ、る!




 俺は大きく溜息を吐いた。


 ……まぁ、いっか。

 奴とは金輪際、二度と会うこともあるまい。


「誠司さん、聖華さん、実は……。さっきまで竜と話していました」


「え? 僕達には何も聞こえませんでしたよ」「私もです」


 神同士の念波で話しているなんて言う訳にはいかねぇから、

「今の竜は寝ているから複数の人に声を届けられないみたいなんです。竜の瞳に一番近くにいた俺の心に直接、話しかけてくれました」


 誠司さんは、「そうでしたか!」と竜の瞳に手を近づけ「ありがとうございます! 教えてください。リーズはどこにいますか?」と何度も問う。


「……何も聞こえません……」


「あ、えーと。俺に話かけるので全エネルギーを使ったみたいで、今は完全に落ちています」


『落ちてはいぬぞ、勇敢なるブサイクよ』


 おい、外野、もうあんたはえーから、黙っといて。

 そうでも言わんと、またややこしくなるんだからね。


『すまぬ、勇敢なるブサイクよ』


 ふん。


「えーと、どこまで話ましたっけ。あ、そーだ、竜はみんなの友情を想う気持ちに感動してくれたみたいでリーズのことをおしえてくれたんです」


「そうだったんですね。で、リーズはどこなんですか?」と聖華さん。


「分からないと。でも、ここにはいないのは確かのようです」


 誠司さんは、

「……なにか彼女の行方のヒントになるようなものは、なかったのでしょうか?」



 これを言うべきかどうか、一瞬躊躇したが、やはり知っておくべきだろう。

 まぁ、確証なんてねぇ。ただ可能性のひとつ。



 だけど。

 もしかして、そいつが次なる敵なのかもしれねぇ。



「ハッキリと断言された訳じゃないです。あくまでこれはそうかもしれないという話です。

そのうえでお話します」


 俺は一呼吸ついて口を開いた。


「リーズはさらわれた可能性があります。神と対等なる力をもった何か……に……」

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