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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第三章 腐った化け物と消えた嘘
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40 聖なる呪文と竜の試練!? 後編その1

 ついに99番目の試練もなんとか乗り越えた。

 まぁ、よく来たよ、飽きもせずに。


 今までノリノリだった誠司さんは、急に辛そうな表情へと変わる。


「ついにここまで来られました……。これもすべてみんなのお陰です。だけど、おそらく最後の試練はかなり手強いと思うのです」

「そ、そうですね」と、聖華さん。


「果たして僕たちだけで勝てるだろか?」

「ど、どうでしょう?」


 勝てるよ。


「くそう! こんな時に勇者アルディーンがいてくれたら……」

「聖女エルカローネがいてくれたら……」


 おるじゃん? ここに?


「無いものねだりをしても仕方ない。とりあえずラストバトルの前に15分くらい、小休憩を挟もうと思う。今のうちに装備を点検したり、コンディションを整えたりして万全な状態にしてほしい。その間に作戦もまとめておきたいから、僕はちょっと一人になろうと思う」


「はい。じゃぁ私は、休憩のうちに異空間の中に置いているアイテムで使えそうなものを探しておきます」

「よろしく頼む!」


 はいはい、変身タイムね。

 

 彼らがごにゃごにゃ話しているうちに、俺はこっそりリーズに耳打ちしてみる。


「あのさ、変身するん?」


 沈黙を……と、くると思いきや「しません!」とハッキリ返された。


「では、これより休憩タイムに入ります。各々、最終試練に向けて、しっかりと調整しておくように」

「はーい!」

 お嬢様は元気にそう言って手をあげると、異空間を呼び出し飛び込んでいった。


 リーズも気を利かせてかどうかは分からんけど、どっかに行ってくれた。


 そして誠司さんと二人きりになった。


「みんないなくなりましたね。でも急に戻ってきて正体がばれたら大変です! さぁ、我々もあの岩陰の向こうで変身を!」


 誠司さんは颯爽と岩陰まで走っていくと、「はぁああああああ……」とタメを始めた。


 あんた、怒らんとアルディーンになれんかったんよね。

 ところで今回の変身のおかずは何さ?


「はぁぁぁあああああ……恭志郎め! よくも……」


 また恭志郎を使うのか。


「はぁぁぁあああああ……ふぉぁぁぁあああああ……、きょ、恭志郎め! い、いや……、恭志郎氏は現在服役中。反省している者に対して、すでに5回もリマインドしている。これ以上、彼を辱めるのは僕のポリシーが許さない……。はぁぁぁあああああ……ふぉぁぁぁあああああ……」


 恭志郎にはちょっと前に牢屋の中で見たけど、まったく反省していなかったぞ。


「はぁぁぁあああああ……ふぉぁぁぁあああああ……。くそう! 梶田め! よくも罪のない人まで巻き込んで……。……い、いや、梶田氏は他界している。すでにあの世で罰を受けている者に対して怒りの感情を呼び起こすなんて、僕の正義が許さない……」


 もー、えーじゃん。誰でも。

 マジであんたはめんどくせねぇな。


「はぁぁぁあああああ! ふぉぁぁぁあああああ! 大板理事長と斎藤教授はさっき使ったし、あの容赦なかった組織の男も以前3回も使ったし……、奴は2回、あいつは3回……うーーん、うーーん……」


 とうとうネタが尽きたのかよ?

 じゃぁ、これで変身ごっこ終了!

 これからはシラフで行こうぜ!


「こうなったら仕方ない……」


 誠司さんは、急にタメをやめて、鞄から手帳を取り出した。



 表紙には『勇者アルディーン★完全マニュアル』と書かれてある。

 なにそれ。


「えーと、覚醒の章は……」とか呟きながら、パラパラとページをめくっていく。


「あ、そうだった! この手があった!」


 どんなおかずを思い出したんだ!?


「くそう! 僕はなんて不甲斐ないんだ! 絶対に裏切らない……そう誓い、真の勇者を目指しているというのに、みんなをピンチから救うことができないなんて!」


 今度はそうきたか。


 誠司さんの瞳にうっすらと涙が。

 お、髪の毛が輝き始めた。

 このままいけるか?


 まぁ、なんつーか、そのおかず。

 ヒーローっぽくていいと思うよ。

 『勇者アルディーン★完全マニュアル』は、なんか色々とおもしろいことが書いてありそうだ。ちょっと、それ、見たいんですけど?


「はぁぁぁあああああ!!!!」


 見事、勇者アルディーン覚醒!

 はい、いろいろと神々しいです。


「すいません。手間取りまして。そろそろ15分経ちます。みんなと合流する前に、しげるさんも早く変身を!」


 えーと。

 この布切れを巻くのね。


 つーか。


「こんなの、すぐバレるでしょ? 今までバレなかったのが異常なくらいで」

「実はその可能性も考慮して、ガチタンク専用の装備を用意したんです」


 なんですと!?


 誠司さん鞄からカップ麺を取り出して、水筒に入っているお茶をかけた。

 するとみるみるビッグサイズの服になった。


「万が一冒険中に装備が大破したら大変です。かといって、たくさんの武器や防具を持ち運ぶことは困難です。なんとか簡単に携帯できる方法はないかと思い、色々と試作をして、ようやくここまでたどり着いたのです。実際の開発を進めてくれたのは、僕ではなくて取引先ですが。秘密保持契約を結んで密かに研究を進めてもらっていたのです」


 あぁ、早間さんとこか。

 あっこは、ヴァレリア公国一みてぇだしな。

(忘れちゃった人は、閑話:天使の笑顔を見てね)


「布系の凝縮技術は、ほぼ実用レベルにまで達しました。繊維素材にこだわり、かなりの強度実験にまで耐えられるようになりました」


 やっぱ、すげーな。さすが誠司さん。

 ――と、一瞬だけ思ったけど、それは誠司さんが広げた服を見た途端、全力の溜息へと変わった。


 色は青。

 胸にね、カッコよさげのロゴで『FV』って書かれている。

 なんかね、みたことあるんだ。

 日曜日の朝とかにテレビでやってたような……。それこそ小さい頃、遊園地のアトラクション広場にこれを着たお兄さんやお姉さんが……。


「えーと、これ、色違いとかもあるんですか?」

「いいえ。凝縮された素材に染色する技術がおいついておらず、まだ、ブルーしかありません。ですが順次、レッド、ピンク、ブラック、シルバーを制作していく予定です」



 やめてよ!

 この開発費、会社の経費でしょ?

 会長の道楽で、こんなの作らんでよ!

 と思うが、たぶん誠司さんにとって、これは遊びではないのだろう。


 だから聞いてみた。


「ちなみに残りの工程である染色技術に、あとどれくらい費用が発生するのですか?」

「それは未知数です。まだまだ必要だと想定しております」


「聖華さん、異空間魔法アナザーゲイブができるから、たくさんのアイテムを持ち運べますよ?」

「今回の冒険で初めて知りました。確かに便利ですね」


「お金もかかることだし、今度から聖華さんに預けて……」


 こんな変な研究やめちまえ!


「単純にそうはいかなのです」

「どうしてですか?」


「彼女に変身スーツを預けるという行為は、即ち、僕たちの正体をバラすということです」


 いいじゃん、別に。

 バレたからって、どうもこうもならんでしょーが?


「もう、やめませんか?」

「それはできません」


「なぜですか?」

「もしこの開発が成功しなければ、この世界から愛と正義が奪われてしまいますからです」



 そ、そうですか……。

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